ホーム > きょうの社説


2008年9月9日

◎資源活性化ファンド 産業化有望なら重点支援も

 石川県が今年度創設した総額二百億円の「いしかわ産業化資源活用推進ファンド」で、 当初予定枠の三十八件を大幅に上回る八十四件が採択されたのは、県内で高まってきた事業意欲を無駄にせず、多くの芽を育てたいとする県の姿勢がうかがえる。

 広く支援していくことに異論はないが、地域資源の活用は全国的に競争が激しく、ブラ ンド化やヒット商品への道のりは容易でないのも現実である。産業化が有望で、石川の魅力アップにつながるアイデアであれば、販路や情報発信も含め、その分野に重点支援するメリハリも求められるだろう。

 都道府県単位で同様の活性化ファンドが設立される中、石川の総額二百億円は全国最大 規模であり、年間運用益約二億円が活用される。地域資源を事業化するプログラムは経済産業省などでも幅広く用意されているが、国の制度で漏れるアイデアや事業の中にも宝が埋まっている可能性がある。それをすくい上げ、成功に導くのが活性化ファンドの狙いである。今回の応募が百三十三件と多数に上ったのは、意欲ある中小企業や事業者が多い表われでもあろう。

 活性化ファンドで大事なのは基金総額の多さより、運用益をいかに有望なアイデアに投 資していくかである。あまりにも手を広げすぎ、総花的な取り組みに終わっては支援の意味が薄れる。今回の応募案件の中には、すでに軌道に乗っているような事業もみられたが、県に求められるのは玉石混交のアイデアの中から、磨けば光るような原石を見いだす目利きの役割でもあろう。

 徳島県で先行する「葉っぱビジネス」を能登の里山で自生する榊や椿で展開する事業や 、温泉旅館で医師の往診プランを提供する試みなど、採択案件は斬新な発想もあれば、消費者にどこまで受け入れられるか未知数の事業もある。その中から、活性化ファンドの成功事例、ビジネスモデルをぜひ誕生させてほしい。

 地域ブランドを増やす取り組みはまさに官民一体のアイデア合戦の様相を呈している。 北陸新幹線の開業効果を最大限に引き出すためにも、県にはとりわけメリハリの効いた戦略が求められている。

◎北の湖理事長辞任 今度こそ本気で改革を

 大麻疑惑だけでなく、大相撲で相次いだ一連の不祥事での対応のまずさを考えれば、北 の湖理事長の辞任は遅きに失したといえる。度重なる不祥事で後手後手に回り、個人や部屋の問題として処理してきた無責任さには、あきれるばかりだ。日本相撲協会は、理事長交代を機に外部からの理事を招くなどして、ぬるま湯体質を一掃する組織改革を断行してほしい。

 石川県では金沢学院東が高校相撲金沢大会で優勝し、鳴和中も全国制覇するなど、「相 撲王国」としての活気が高まっている。今秋には県屋内相撲場も完成する。アマチュア側が競技力の向上やすそ野拡大に懸命に努力しても、肝心の大相撲が足を引っ張っていては、相撲人気が高まるはずがない。

 相撲協会は興行団体としての性格も強いが、財団法人として税制面での優遇を受けてい る。相撲という日本の伝統文化を継承し、普及していく重い責任を負っている。それにもかかわらず文科省から外部役員の登用を促されながら、議決権のない監事にとどめるなど、改革は遅々として進んでいない。大麻汚染をはじめとする一連の不祥事は、長らく「国技」の歴史にあぐらをかき、惰眠をむさぼってきたツケといえ、組織の在りようが、時代の変化に合わなくなっていることの表れでもある。

 現在、七百人以上いる力士のなかで、外国人力士は六十人を超えるまでになった。体格 に勝る外国人力士の活躍は、大相撲に新たな活気をもたらしたが、古き良き伝統やしきりたりがルーズになっているように思える。外国人力士の多くは、まじめにけいこに取り組んでいるのだろうが、「外国人だから」と大目に見てもらえた時代ではない。力士の指導や管理方法が旧態依然のままでは、ほころびが出てきて当然だ。

 身内だけで固めた組織の限界は既に明らかである。相撲界の閉鎖的で、無責任な体質を 根本から見直し、緩みきったタガを締め直さねばならない。思い切って外部から理事長を招くほどの大胆さで、組織改革に大なたを振るってもらいたい。


ホームへ