「最近の報道は面白さばかり追及している」―。会うたびにマスコミ批判を聞かせてくれる飲み友達の言葉が、いつも以上に辛らつに思えた。
自民党総裁選で五人の立候補が固まり、もう二人が意欲を表明し、関連ニュースがテレビにあふれた日の夜。総裁選の話から始まって新聞報道への注文まで、一回り以上年長の友人は貴重な意見を聞かせてくれた。
福田首相が政権を投げ出したのを受けた自民党の総裁選は“劇場型”の様相を呈してきた。首相は迫る総選挙を前に身を引いて、総裁選を盛り上げ党を浮上させようと周到に準備していたようだ。テレビを活用し高い支持率を維持し続けた小泉政権の成功例(政権与党にとって)にならおうとの思惑が見てとれる。
分かりやすくドラマチックだった「小泉劇場」。主な舞台はテレビで、ワイドショーと報道番組がセットになり、面白おかしい“政治ショー”が繰り広げられた。テレビは視聴率、政権は支持率を稼いだ。与党が圧勝した総選挙は最たるものだった。新聞も少なからず「劇場型報道」に巻き込まれた面は否めない。
テレビを意識し発信される国政がらみの情報は基本的には東京発の中央目線。テレビ映像は訴える力が強く、影響力も大きい。だが、テレビ報道は分かりやすくするため、切り捨てられる情報も多いと聞く。
中央と地方の格差、農業、過疎や高齢化…。面白ければいい、では解決できない難問に政治はどう立ち向かうか。国民の見識も問われる。「冷静で客観的な新聞報道、特に地方紙の役割は重要」という友人の叱咤(しった)激励が身に染みた。
(津山支社・井谷進)