業務上過失致死傷容疑で書類送検され、記者会見するJR西日本の山崎正夫社長=8日午後、大阪市北区、日吉健吾撮影
乗客106人が死亡し、562人が負傷した05年4月のJR宝塚線(福知山線)の脱線事故で、兵庫県警は8日、JR西日本の山崎正夫社長(65)ら歴代幹部9人と事故で死亡した高見隆二郎運転士(当時23)の計10人を業務上過失致死傷容疑で神戸地検に書類送検した。列車の運行や安全管理を担う幹部が過失責任を問われるのは異例。地検は年内をめどに起訴の可否を判断する。
神戸地検は被害者対策の一環として、近く事故の遺族と負傷者全員に、どんな処罰を求めるか、検察官との面談を求めるかなどを尋ねる手紙を郵送するほか、問い合わせに対応する専用の電話回線を設置する。検察当局が本格捜査の前に、多数の被害者から捜査や処分に関する要望を集約するのは例がない。
尼崎東署捜査本部の調べでは、高見運転士は05年4月25日午前9時20分ごろ、兵庫県尼崎市のJR宝塚線塚口―尼崎駅間で快速電車(7両編成)を運転し、カーブの制限速度(時速70キロ)を超過した時速116キロで進入。1〜5両目を脱線させ、先頭車両が線路脇のマンションに突っ込むなどし、乗客668人を死傷させたとされる。
歴代幹部9人のうち山崎社長ら7人について、一部の遺族が告訴。山崎社長や梅原利之・JR四国相談役(69)ら5人は、96年12月に現場カーブを半径600メートルから同304メートルの急カーブに付け替えた際に自動列車停止装置(ATS)の設置を怠り、事故を発生させた疑いがもたれた。当時、山崎社長は梅原相談役の後任としてATSの設置を判断できる鉄道本部長だった。
県警はこの5人について、事故が起きる危険性を予測できたとみなし、起訴を求める「厳重処分」に次いで重い「相当処分」の意見を付けて書類送検した。
一方、JR西が宝塚線に新型ATSの整備を決めた03年9月当時と事故時の鉄道本部長や運輸部長ら4人については、起訴を求めない「しかるべき処分」の意見にとどめた。4人は事故までに新型ATSを設置しなかったり、運転士への懲罰的な「日勤教育」や余裕のないダイヤ編成を続けたりして事故を招いたとされたが、県警は「事故との因果関係は立証できない」と判断。刑事訴訟法の規定に従い、告訴事案の捜査結果をまとめた書類を地検に送付した。