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【町猫浪々】人の輪が自然に生まれた丸の内 (2/2ページ)
彼らとともに猫を見守っていたホームレスの男性Nさんとその友人も忘れられない。
薄幸な猫たちの力になりたいという思いは、いつしか人の輪になっていた。いつ立ち寄っても猫たちと、いずれかの人に会える日々が続いた。
ところが02年に旧丸ビルが高層ビルに生まれ変わり、「丸の内再構築」に伴う周辺の開発が加速してくると、あたかもそれに呼応するかのように交通事故死や行方不明、また病死する猫が増えていった。猫が住める場所は失われ、今はもう人々が集うこともない。
03年に駅舎内から撮ったこの写真を見ていると、数々の思い出が、フラッシュバックして駆け巡る。追想はかくも懐かしく、かくも切ない。(写真家 太田威重/SANKEI EXPRESS)
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■おおた・たけしげ 写真家。1944(昭和19)年、東京生まれ。桑沢デザイン研究所卒。70年代後半から写真を撮り始め、80年代後半、バブル期の都市の荒廃を目にして以来、東京と猫をテーマに写真を撮り続けている。写真集に「東京−猫もよう」(平凡社)など。隔月刊誌「猫生活」(緑書房)に「東京町猫録」を連載中。