福岡県筑前町で06年10月にいじめを苦に自殺した森啓祐君(当時13歳)の母親の美加さんが8月22日、光市の大和総合運動公園スポーツセンターで講演した。声を詰まらせながら「SOSを受け止められる人に成長して」と訴えた美加さん。参加した市内の中学2年生約600人はじっと聴き入り、感想文をつづった。【安部拓輝】
森さんは啓祐君の通夜の時、祭壇の前で「助けてやれなくてごめんね」と泣きじゃくる同級生に問いかけたという。「啓君はなぜ、学校で『死にたい』と言っていたと思う? みんなに止めてほしかった。自分を必要としてほしかったんじゃないかな」
講演会の資料には、啓祐君が小6の時に書いた卒業文集が添えられた。2年生の時に6年生に優しくしてもらった思い出から「6年生はリーダー。リーダーはいじめちゃいけない。ぼくも下の人たちに(やさしく)してあげたい」とつづっていた。「みなさんはいろんな優しさを持っている。それを下級生に受け継いでほしい」。森さんはそう結んだ。
話を聞く中学生の中には目をつむり、ハンカチを目に当てる生徒もいた。「そばでいじめられている人をかばえなかった」。中2の男子生徒は感想文で振り返った。「私もひどいことを言ったことがある」と気付いた女子生徒もいた。「優しい心は弱いのではなく、強いんだと知った」という生徒も多くいた。
生徒たちの感想は、近く森さんの元へ届けられる。いじめに苦しむ子から手紙が届くこともあるという森さんは「苦しみを打ち明けられること、それを『よく頑張ったね』と分かってあげられることを大切にしてほしい」と話している。
身近に相談しづらい場合、県警のヤングテレホンやまぐち(0120・49・5150)では平日の午前8時半~午後5時15分、臨床心理士らが待機している。休日や時間外は県警本部の当直の警察官が対応している。
〔山口東版〕
毎日新聞 2008年9月4日 地方版