刑期を終えたものの、生活苦から再び刑務所暮らしを選ぶ。政府が受刑者の総合支援策をまとめた背景には、こうした傾向を食い止めるには刑事司法の厳罰化だけでは困難で、福祉的な施策を強化する必要があるという認識がある。
昨年の犯罪白書によると、件数でみた場合、犯罪の約57%は再犯者が起こしており、障害者や高齢者も少なくない。仮釈放後の保護観察期間中の再犯率をみると、有職者は約8%だが、無職者は約40%にも及ぶ。知的障害の疑いがある受刑者の約70%が再犯者だという調査もある。社会で行き場のない人たちが刑務所に流入する現状がうかがえる。
今回の支援策は、自立可能な受刑者には就労機会を提供し、障害者などは迅速に福祉サービスに橋渡しする枠組みを打ち出した。近年、欧州を中心に犯罪者などを排除せず、政策的に参加の機会を与えて社会に内包していこうという理念が浸透しつつあるが、この流れとも重なる。
支援策が効果をあげるには、居場所となる就労先や福祉施設をいかに確保・育成するかが重要になる。元受刑者の受け入れは経済的コストや地域との摩擦を生みやすい。国営の「自立更生促進センター」ですら、各地で強い反対運動がある。国は財政面も含め、最終的に受け入れる現場への手厚い補助も怠ってはならない。【坂本高志】
毎日新聞 2008年8月28日 15時00分