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鈴木義幸の「風通しのいい職場作り」

「誕生日を祝う」とは、出会えた奇跡に感謝すること

社員すべてが“主役”でいられる職場を作る

 「風通しのいい職場作り」の連載を始めてから、コラムを読んでくださった顧客企業の方に、改めて聞かれることがあります。

 「風通しのいい職場を作るコーチングをしているわけですから、コーチAさんはもちろん風通しがいいんですよね?」

 先方はおそらく「紺屋の白袴」的な答えを期待しているのでしょう。その期待に反して私がにこにこしながら「ええ、いいと思います」と答えると、少しがっかりしたような顔をされます。

 現在、派遣社員の方も含めて90名がオフィスで働いています。会社が大きくなるにつれて、いろいろな課題が生まれてきますから、さすがに毎日すっきり風通しがいいわけではありません。

 それでも、会社はいつも賑やかですし、明るいですし、たくさんのコミュニケーションがそこかしこで行き交っています。

 実際、私どもの会社を訪ねてくださるお客様はオフィスを見て(ガラス張りになっていて、外から中の様子が見えるようになっています)、「すごく活気がありますね!」と言ってくださり、多くの方が「どうすればこういう雰囲気が作り出せるんですか?」という質問をしてくださいます。

 私が次のように答えると、予想外なのでしょう、お客様の顔に一瞬「?」が浮かびます。

 「誕生日会をやっているからではないでしょうか」

会社は“主人公”の集まり

 これまでの連載で取り上げた「挨拶」、「飲み会」、「メールの効果的な活用」、これらすべてが風通しのいい職場の実現のためには大事だと思います。

 そして、これらの行為を根底で支えている哲学は、「1人1人がその人の人生の中では間違いなく主役である」という考え方です。

 脇役などというのはこの世の中には1人もいません。全員が主役なのです。この考えがベースにあってこそ、挨拶は相手をリスペクトしたものになるだろうし、飲み会では相手の背景や物語を聞こうとするのだと思います。メールがぶっきらぼうになることもありません。

 ただ、ややもすると、人は「全員が主役」ということを忘れてしまいがちです。

 上司は、時として、部下を脇役ととらえ、いかにチームの目標の実現のために駒として活かすかと考えます。人は、どうしようもなく忙しくなれば、「自分だけが悲劇の主人公で、周りは自分ほどには心を痛めないちょい役だ」ぐらいに思ってしまうこともあります。

 だから時には、「全員が主人公で、主人公が集まって仕事をしているんだ」ということを思い出す必要があります。

 スタッフ1人1人の誕生日をお祝いするということを創業以来続けているのはそのためです。

“プロデューサー”が最高の日を企画

 プレゼントをただ用意し、バースデーソングを歌うといったシンプルなものではありません。どうしたらその人に心から喜んでもらえる誕生日となるか、それをその人の担当となった“バースデープロデューサー”が企画し、実行するための仲間を募り、と一生懸命に考えます。

 例えばこれまでにどんなバースデープロジェクトが実行に移されたかというと……。

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このコラムについて

鈴木義幸の「風通しのいい職場作り」

 空気が淀み、風が通らなくなった職場の中に実際に身を置いていると、一体どうすれば、そこに新鮮な風が通るのか、皆目見当もつかないかもしれません。

 けれども、人の心理が集団の中でどのように動き、どのように変化するのかを知識として備えていれば、そして、少しの勇気と行動力があれば、絡まって団子になってしまった糸も少しずつほぐしていくことができると思います。

 当連載では、組織心理学、行動科学の専門家として、様々な企業の現場をコーチングしてきた私自身の経験を活かし、風通しのよい職場の作り方の一端を、みなさんにご紹介できたらと思っています。このコラムを読んでいただくことで、少しでも、みなさんの職場に新鮮な風が通ることを願ってやみません。

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著者プロフィール

鈴木 義幸(すずき・よしゆき)

鈴木 義幸 株式会社コーチ・エィ 取締役社長
慶應義塾大学文学部卒。(株)マッキャンエリクソン博報堂にメディアプランナーとして勤務後、渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了。帰国後、コーチ・トゥエンティワンの設立に参画。延べ200社以上の企業において管理職を対象とするコーチング研修を行う。また200人を超える経営者、管理職のマンツーマンコーチングを実施。企業におけるコーチング・カルチャーの構築を手がける。著書に『コーチングが人を活かす』(ディスカヴァー)、『ほめる技術』(実業出版)、『プレゼンスマネジメント』(日経BP)、『決断の法則』(講談社)、『セルフトーク・マネジメントのすすめ』(日本実業出版社)など。

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