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【暮らし】

救急車の使い方 タクシー代わりやめて

2008年9月7日

 全国の救急出動は年間約五百万件。最近十年で五割増になった。救急車をタクシー代わりに使う人もいて、総務省消防庁は「本当に必要な人のことを考えて」と呼び掛けている。救急の日(九月九日)に合わせ、救急車の使い方を考えてみよう。 (山本哲正)

 「具合が悪い」と通報してきた六十代の男性。救急隊員が到着すると、横たわりながら「のど渇いちゃった。ビールを買ってきて」と隊員に“注文”した。

 「既に飲んでいた。『酒が入ると医師もきちんと診察できない』と諭すと、病院にも行かないことになった」と、横浜市安全管理局の吉田茂男救急指導係長は振り返る。

 決まっていた入院日にタクシー代わりに呼ばれた例は何度もある。「昨年度まで十年以上救急車に乗ったが、おかしな事例がここ三年で増えた」と吉田係長。救急車は一度出動すると、約一時間は別の通報に対応できない。「こうした出動の間、心筋梗塞(こうそく)で一刻を争う人のために、遠くにいる別隊が駆けつけた」

 一一九番にかけて救急車を待つ時間がこの十年間で三十秒増え、全国平均約六分三十五秒になった。深刻な事態に、横浜市は十月から、虚偽通報に罰則をもうけた条例を施行する。

 東京消防庁は昨年六月に、緊急性の低い傷病者に搬送を辞退してもらう「救急搬送トリアージ(選別)」の試験運用を始めた。今年五月までの一年で約六十八万件出動したうち、自分で通院するよう求めたのは約0・1%の約五百八十件と少ないが、そのうち六割しか同意を得られなかった。頭を抱える実情は変わらないようだ。

 また、名古屋市消防局は年間約十万件出動のうち「一割以上が不適正」(同局関係者)という。緊急性がないと判断した場合は出動を拒否する仕組みを、本年度内にもスタートさせる。

 救急車を頼る機会自体が少ない人には、どういう場合が「不適正」なのか、とっさの判断は難しい。横浜市は救急通報の参考にと「119番ガイド」を市民に配布している。名古屋市も医師会の協力で通報基準を定めている。

 横浜市はタクシー代わり以外にも、耳に虫が入った▽隣家がうるさい▽ペットの具合が悪い−などといった「悪い通報例」を挙げている。

 一方、意識がない▽呼吸困難▽胸が痛い▽激しい頭痛−は通報して。交通事故に遭った場合は、見た目に異常がなくても急変することがあるため「迷わず通報を」−は各消防本部とも共通している。

 体調不良などで、通院が困難な場合には、民間の救急サービスも利用できる。エレベーターのない高層に住み、移動が困難な場合でも病院まで運んでもらえる。どこの病院に行けばよいか分からない場合は、自治体別の医療情報センターを活用できる。

 東京消防庁は「本当に一一九番が必要な人にためらってほしくない」と昨年六月、悩んだ時に医師の助言も受けられる「救急相談センター」=電#7119=を全国に先駆けて発足させた。

 民間の相談サービスもある。ネット上の医療健康サイト「赤ちゃん子供のここカラダ」では、子どもの症状を打ち込んで、病院に行く緊急度をチェックできる。

 このほか、紹介した地域の医療情報センターの連絡先は次の通り。

 横浜市=電045・201・1199▽名古屋市=電052・263・1133

 

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