ニュース: 国際 RSS feed
【主張】国連軍縮会議 核不拡散に新たな協調を
世界の核不拡散・軍縮の歩みが深刻なジレンマに直面する中で、国連アジア太平洋平和軍縮センターなど主催の国連軍縮会議がさいたま市で開かれ、16カ国・7国際機関から約90人が参加して活発に意見交換した。
会議は冷戦終結を機に1989年から毎年日本で開催され、通算20回を迎えた。しかし、世界の現状は厳しい。北朝鮮、イランの核問題に加えて、中東などへの拡散やテロ組織への核流出のリスクはいぜん高まっているからだ。
今回は地球温暖化で原子力発電が見直され、各国が競って原発を求める「原子力ルネサンス」の流れが注目された。現在約30カ国で480基近い原発が稼働中か建設中で、2030年には23カ国が新たに原発保有国になるという。
「各国が勝手にウラン濃縮やプルトニウム再処理に走れば、拡散・流出のリスクは計り知れない」と報告され、核物質や核燃料サイクルの国際管理構想を真剣に検討すべきだとの意見が多く出た。
北朝鮮には6カ国協議での核完全廃棄の約束を誠実に守らせるべきだとの意見で一致し、北が求める「核保有国」の扱いを容認する声が皆無だったのは心強い。また核拡散防止条約(NPT)の懸案となっている「脱退の権利」問題や、抜き打ち査察を可能にする追加議定書を全加盟国に普及させる工夫についても話し合われた。
不拡散問題で意見が分かれたのは米印原子力協力協定問題だ。米国はNPT非加盟国のインドと原発協力を進めるために、日本など45カ国で構成する「原子力供給国グループ」(NSG)の承認は得たが、対応が問われていた。
国際原子力機関(IAEA)は「核査察が可能になる」と前向きだが、「安易な承認は北朝鮮などに誤ったメッセージになる」との反論が多く、明確な方向は出なかった。NPTや包括的核実験禁止条約(CTBT)への加盟を条件にせよとの注文もあった。
次回のNPT再検討会議は2010年に開かれる。決裂した前回(05年)の失敗を繰り返さないためにも一層の努力が必要だ。参加者からも核保有国、非保有国双方に合意形成への指導力と協調を求める意見が大勢を占めた。
会議の内容は地味だが、市民や子供たちに軍縮・不拡散教育を広げるよい機会でもある。地域の市民団体などとも連携して、今後も活動の意義を深めてほしい。