文部科学省が今春実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。昨年に続く2回目のテストで、傾向はさほど変わっていない。基礎的な知識はまずまずだが、応用力を問う問題となると不振が目立つ、という成績だ。
2年分のデータがそろったことで、子どもたちの学力の現状と問題点が見えてきたのはたしかだ。それと同時に、テストの生かし方や実施方法などで見直すべき点も浮かび上がっている。文科省も地方教育委員会も改善を怠ってはならない。
まず大きな課題は、心配される応用力を授業でどう養うかである。国語の場合は文章から必要な情報を取り出したり書き換えたりする技能、算数や数学では複数の資料を基に違いを説明したり数学的に解釈したりする能力が劣っているという。
こうした傾向は、じつは1960年代の学力テストでも指摘されている。今度こそテスト結果の分析を基に対策を確立すべきだ。新しい学習指導要領では授業時間が約1割増えるが、それがたんに知識の詰め込みにつながるのでは意味がない。
テスト結果をどこまで開示するかも議論の余地がある。文科省は市町村や学校別の成績開示には慎重な対応をするよう求めている。これに対し鳥取県教委が一度は開示に動きながら見送り、大阪府では橋下徹知事が市町村別の結果を公表するよう促している。
たしかに、やり方によっては地域でのランキングが独り歩きする恐れもある。しかし隣接市町村がそれぞれ成績比較もできないようではテスト結果が十分に活用できない。少なくとも市町村別の結果までなら公表をためらう必要はあるまい。文科省も画一的な指導を見直すべきだ。
テストは来年で3回目を迎え、文科省はそれ以降も小学6年生と中学3年生全員を対象にした調査を毎年続ける予定だ。しかし学力の実態がかなり把握できつつあるのを考えれば、こうした巨大調査もそろそろ見直しの時期に入るだろう。
「全員対象で毎年」にこだわらず抽出調査に切り替え、全員対象は数年おきにする手もある。いったん決めたからといって、同じような手法をただ繰り返すことはない。