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2008年9月8日

◎雇用機構「解体」 県が職業訓練の受け皿に

 政府の行政減量・効率化有識者会議が独立行政法人「雇用・能力開発機構」を解体、廃 止することで一致した。機構を所管する厚生労働省は存続を前提にした改革案を検討し、今後の存廃論議に不透明感も漂っているが、少なくとも中核業務として担ってきた職業訓練については都道府県に移管する方向で議論を進めるのが望ましいのではないか。

 雇用の流動化に伴い、失業者や転職者に対する職業訓練の重要性は高まっている。それ は地方の人材育成策や産業政策と密接につながっており、地域の実情に即した形で実施する必要がある。石川、富山県でも職業訓練や能力開発の事業を幅広く展開し、ノウハウは蓄積している。人材や財源の手当てが伴えば地方でも担うことが十分可能である。機構を解体するなら、地方の受け皿整備を同時に議論してもらいたい。

 雇用・能力開発機構は職員三千八百五十人の巨大な独立行政法人であり、解体は独法改 革を加速させる可能性がある。巨額赤字が問題化した職業体験施設「私のしごと館」(京都府)については廃止し、職業訓練を行う全国六十一カ所の「職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)」は都道府県へ移す方針が示されたが、センター移管は地方分権の趣旨に沿えば妥当な考え方である。

 職業訓練については、国が雇用の安全網として離転職者の早期就職を図ることを主眼と し、都道府県は地域の人材ニーズに即して実施するとの役割分担がある。だが、地方分権改革推進委の論議では、そうした棲み分けにどこまでこだわる必要があるのか疑問の声が挙がっている。

 北陸でも、ものづくり企業を中心に人材難が深刻化し、即戦力の育成は大きな課題であ る。そうした現実を考えれば、地場産業育成に責任をもつ県が主体となって職業訓練を担い、国がそれを支援する形が望ましいだろう。

 雇用労働行政は都道府県単位で地方労働局が発足し、国に一元化される動きが強まった 半面、自治体の関与も増え、両者が調整し合う場面が少なくない。国と地方の役割を見直す時期にきていることは間違いないだろう。

◎外国人サポート 隣人意識を持ち合いたい

 金沢国際交流財団が、在住外国人と地域住民の橋渡し役となる「地域コーディネーター 」の養成に乗り出すという。在住外国人の中には、地域のイベントなどに参加したいと思いながら、きっかけをつかめずにちゅうちょしている人が多い。そうした場合のサポート役となる人材を育てようという試みであり、望まれる「多文化共生社会」づくりの一助になろう。

 地域住民と在住外国人が文化や生活習慣などの違いを認め合いながら共生していくには 、互いに地域コミュニティーの一員として、良き隣人関係を築くことが大事である。町会の活動などを共に行うことは隣人意識をはぐくむのに最適であり、在住外国人の参加を積極的に促したい。

 石川県が昨年、県内在住の外国人約三百人を対象に行ったアンケート調査によると、地 域活動に「よく参加する」と答えた人はわずか9%に過ぎず、「あまり参加しない」「まったく参加しない」という人が合わせて62%に上った。その一方、地域社会との交流を望む人は70%近くに達しており、金沢国際交流財団が育成をめざすコーディネーター役がうまく機能すれば、地域活動に参加する在住外国人が大幅に増えるであろうことを示している。

 在住外国人と地域の関係をめぐっては、意思疎通の不十分さや生活文化の違いから、ゴ ミ出しなどに関するトラブルが見受けられるが、地域づくりを担う良き隣人でパートナーという意識を互いに高める努力をすれば、そうしたトラブルもおのずと解消されよう。

 言葉の壁がある在住外国人は、いわば情報弱者であり、災害時には災害弱者となる可能 性が大きい。実際、県の調査では、避難場所を知っている人は約30%にとどまり、母国語による防災マップの配付や災害時の避難誘導体制の確保などを望む人が多い。こうした点では行政の支援がまず求められるところであるが、「共助」の観点から隣人関係を緊密にしておくことが大変重要であり、そうした面からもコーディネーター育成の意義があるといえる。


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