ネットオークションの大手ヤフーオークション(ヤフオク)をめぐり、会員の利用者が身に覚えがない利用手数料を請求されるトラブルが相次ぎ、先月からNPO法人などに多数の被害情報が寄せられている。IDやパスワードをソフトで解読し、海外から接続したとみられるケースが目立つという。ヤフー(東京)は注意を呼びかけている。
埼玉県本庄市の主婦(48)は8月23日、自分のIDで、時計118点が出品されたことに気付いた。ヤフーから手数料約5万円を請求されたが、ID流出に心当たりが無くメールで同社に請求をやめるよう求めた。
ヤフオクでは、商品の掲載写真を大きくしたり、商品が落札されたりした場合に手数料が発生する。何者かが主婦になりすまし、出品の際にかかる手数料が自分に請求されないことを狙い、落札代金だけ振り込みなどで受け取った疑いがあるという。
弁護士らでつくるNPO法人「消費者支援機構関西」には、同様のトラブル情報が8月下旬から約2週間で数十件寄せられた。ネットで被害を調べた消費生活コンサルタントの植田昌宏さんによれば8月から推計1500件の情報が集まったという。
ヤフーが複数の被害例を分析した結果、中国からIDやパスワードを当てずっぽうに打ち込まれ、解読されたとみられる手口が目立つという。ソフトで自動的に文字列をつくり、片っ端から試しているらしい。IDがパスワードと同じケースなどが被害にあいやすいという。
また、何者かがヤフーなど実在サイトそっくりの偽物のサイトをつくり、利用者からID情報を盗み取るフィッシングの可能性もあるという。
同社によれば1〜2年前までは、ネットオークション悪用をねらう人間は自分で複数のIDを取得、架空出品を繰り返して購入希望者から代金をだまし取ろうとする手口が目立った。本人確認作業を強化し、複数のIDをとりにくくしたところ、他人のIDを盗んで悪用するケースが出始めたという。
ヤフーは明らかな不正とわかれば返金するのを基本方針にしている。被害者の中には「『規約上、支払い義務がある』とだけ言われ、説明を聞いてもらえない」との訴えもあり、同社は「被害にあわれた方とのコミュニケーションを見直したい」としている。(小堀龍之)