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2008.09.07 23:59 |  診療  |  こどもの精神科  |  発達障害  |  NINA  | 推薦数 : 0

危機感の理由。

昨日挙げたケースのこと,もう少し考えてみます。

WPPSI(あるいはWISC-III)で境界知能と評価され,しかも検査項目によって結果に大きなバラツキがあることが小学校低学年の時点で(そしてそれ以降にも改めて)確認されていたのに,そのこどもに対する支援が何も行われていなかった,というこのケース。

とりあえず,お母さんご自身はそれほど強い危機感は持っていらっしゃらないようではあるのですが,こどもさんを専門機関へ受診させて,実際に検査を受けるところまで何度か辿り着いているわけですから,お母さんの果たすべき役割はやっていただけているかな,と思います。

そして,学校の先生。
検査の結果を知っておられて何の支援も始まっていないというのはちょっと悲しいこと。それから念のため,「診断名はついているのかどうか」わからないということなのだと思いますが,別に診断がなくても支援って始められますよね? 検査の結果も伝わっているわけだし。
こどもさんの支援をするかしないかということに「お母さんにも発達の問題がありそう」ということがどのくらい関与してくるのかもよくわからないのですが,学校の先生としてはきっと,お母さんが学校に危機感を訴えてこないのであまり動けなかった,とおっしゃりたいのかもしれません。
この部分には最もツッコミを入れたいところではありますが,でも現状としては,保護者からいろいろな要請やリクエストがない限り学校としては「勝手に」支援しにくいというところもあるのだろうな,と推察します。でも,「お母さんにも発達の問題が?」とまで思ってくださっているなら,こどもさんの現状が結構大変そうですよってことがお母さんにももう少しわかりやすいように伝わるようにしてくださるとありがたいんだけどな,と思ってみたり。もしかしたら先生としてはお母さんに対してものすごーく強調してみたけれど,やっぱり伝わらなかった,ということもあるかもしれませんが。

それに,学校の先生の問題は今の担任だけに関わることではないですよね。小学校の先生からの申し送りだったり,一学年前の担任からの申し送りだったり,少なくとも学力的な部分に関してはせめて何らかの情報が伝わっていてほしいな,と思ってしまいます。…いや,これもちゃんと毎年伝わっていたのかもしれないけれど。

最後に,これまでこのこどもさんに関わってきた専門機関の先生方。
こどもさんに対応する先生方ですから,お母さんの発達の問題までは気にしていらっしゃらなかったのかもしれないけれど,学校の先生ですら気に掛けてくださっているほどなので,お母さんの認知特性も考慮した上で検査結果や今後の見通しを(大変さが伝わるように)伝えていただけたらありがたかったなぁ,と思います。もちろん,先生としては思いっきりお母さんの特性を意識したうえでこどもさんの状態を説明してくださったにも関らず,それでもお母さんにはあまり伝わらなかった,という可能性もありますが…でも,それって結果的にはお母さんにちゃんと伝わってない,ってことですよね。
そして可能であれば,先生方から直接(もちろんお母さんの許可を取って)学校の先生にこどもさん本人の検査結果を伝えて,特別な支援が必要であることを強調していただきたかったなぁ,とも思います。いや,でもこれもやってくださっているのかもしれないけれど,やっぱり学校としてはそれでも動きづらかったということですもんね。

結局,今ようやくこのケースに関わるようになった私としては,これまで保護者,学校,専門機関のそれぞれの方たちが具体的にはどのように動いてくださったのか知る由もありません。
でも,現時点ではこどもさんにとってメリットがあるように機能できていないことだけは確かなこと。
そして,時間だけが確実に過ぎてきています。

私自身にも一体どれだけこのケースに対してはたらきかけることができるのかわからない状態ではあるのですが,少なくとも診療場面でこどもさんとお母さんのフォローが継続できるように,そしてまずは学校で特別な支援が受けられる状況になるように,できるだけ細やかに動いてみようと思います。

こういう複合的な難しさがあるケースでは,やっぱり誰かがきちんと主導権をとらないといけないと思うから。

誰かを責めていても,何も始まらない。
とりあえず未来に目を向けて頑張っていこうと思います!

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