社説ウオッチング

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

社説ウオッチング:福田首相退陣表明 「解散」論で主張二分

 ◇直ちに有権者の審判を--毎日など

 ◇総選挙より「給油」延長--読売・産経

 「国会中学」の生徒会長の日記から--。

 「2学期の始業式の後、みんなに思い切って言っちゃった。『もう生徒会長を辞める』って。もう、何もかもいやになったんだ。

 M組の市朗君なんて、ボクの言うことに何でも反対して、やりたいことをやらせてくれないんだもの。最初は『仲良くやろうぜ』なんて言ってたくせに。ボクらは、かわいそうなくらい頑張ったんだよ。絶対、許せない。

 それから、9年前に近所に引っ越してきたK組の明広君。ずっとボクの後をちょこちょこくっついて来てたのに、最近は自分勝手なことばっかり言うんだ。きっと『辞めろ』っていうのが本音なんだ。

 ボクのJ組だって、陰口を言うヤツが多くて、ばらばら。

 一番つらかったのは、学校のみんなの視線だった。廊下ですれ違っても顔を伏せたり、目をそらしたりするんだから。

 無責任だとか、投げ出しだとか言う人もいたけど、我慢できなかった。ボクにはわかるんだ。このまま続けてもダメだって。だから、言ってやったんだ。『ボクはあなたと違うんだ』って」--。

 1日の福田康夫首相の辞任表明。突然の政権投げ出し劇を、首相自身が掲げた「国民目線」で見ればこんなところか。

 さて、この首相退陣劇とその後の動きを、各紙社説はどう論じたのだろうか。

 福田首相の辞任表明を受けて、自民党は総裁選(10日告示、22日投開票)に突入する。各紙社説は、早期の衆院解散・総選挙を求める毎日、朝日、日経と、早期解散反対の姿勢をにじませた読売、産経に大別される。後者が早期解散に反対なのは、インド洋で給油活動を継続するための新テロ対策特措法改正案成立を主張していることと関連しているとみられる。

 毎日は、辞任表明を「無責任政治はここに極まった」と批判し、2代続けての政権投げ出しに、「今の自民党に政権担当能力があるのだろうか」と疑問を投げかけた。

 福田首相の政権投げ出しは、「ねじれ国会」で政権運営が思い通りにいかず、連立を組む公明党が総選挙をにらんで福田政権と距離を置き始めたことが原因だった。毎日はこれらに加え、「首相就任後、衆院選で有権者の審判を受けずにきたことが、自信を持って政権運営できなかった大きな要因だった」と分析した。

 同時に、衆院で3分の2以上を占める与党勢力は小泉政権下の郵政選挙でもたらされたものだが、「この『遺産』といえる勢力で国会運営を進めるのは、とっくに限界だった」と強調。新内閣は選挙管理内閣と見なすべきで、「直ちに衆院を解散し、総選挙を行って有権者の判断を仰ぐ」よう求めた。

 ◇東京は政権交代要求

 朝日は、「衆院での圧倒的多数が国会運営での柔軟さを失わせ、衆院解散で政局の行き詰まりを打開する道を封じることになった」と分析した。そして「新首相の使命は、できるだけ早く衆院を解散し、国民の審判を受けることだ。それなしに、まともで力強い政権運営をすることはできない」と述べた。日経は「首相の政権運営が行き詰まったのは、最後まで衆院の解散戦略を描けなかったため」と断じ、「だれが首相になっても、早期に衆院を解散して有権者の審判を受けなければならない」と主張した。

 これに対し、読売は「新内閣は、一連の政策課題を迅速かつ機動的に遂行できるよう、強力な布陣を敷くことが何より肝要である」と強調し、重要政策として新テロ特措法改正案と経済対策を挙げた。産経は、早期解散より「日本が抱える内外の諸懸案の重みを考え、国民の利益や国益を実現することを最優先しなくてはならない」と主張した。産経も給油活動継続を強く求めている。

 総選挙を実施すれば、現在の与党が過半数を占めたとしても再可決に必要な3分の2の確保までは届かないと見られている。それでは新テロ特措法改正案の成立は見込めない。成立を求めている両紙としては、与党が3分の2を失う衆院解散は避けたいというのが本音なのだろう。日経も給油活動継続には賛成の立場だが、今回は衆院解散を優先し、違いを見せた。

 一方、東京は3日の社説で、「後継総裁が首相の座に就けば、総選挙を経ない三代連続の政権誕生である。本来なら潔く下野して野党に政権を委ねるのが筋である」と、政権交代を要求した。

 ◇各紙、政策論争求める

 総裁選告示日を目前に控え、候補者の顔ぶれがそろいつつある。かつてなく多数の候補者による選挙戦になりそうだ。各紙とも週末の社説で、経済政策で対立軸が鮮明になりつつあることを歓迎し、活発な論戦への期待を表明した。

 毎日は、総裁選がマスコミへの登場だけで国民の関心を引きつける「演出」に陥ったり、候補者の単なる「人気」を基準に選挙戦が進められることにクギを刺し、「経済・外交でまじめに論戦を」(6日)と求めた。【論説委員・岸本正人】

毎日新聞 2008年9月7日 東京朝刊

社説ウオッチング アーカイブ

 

特集企画

おすすめ情報