さいたま地裁熊谷支部で5日あった深谷市・生活保護費不正受給事件の初公判。検察側は生活保護法違反の罪に問われた韓国籍で稲川会系暴力団元組員、崔鳳海(チェボンヘ)被告(60)に懲役2年、妻の育代被告(44)に懲役1年6月をそれぞれ求刑した。一方で市の責任は司法の場で正面から問われることなく、判決は17日に言い渡される。
鳳海被告はシャツにジーンズ姿で車いすに乗せられ入廷。後から到着した育代被告に「少しやせたか?」と話しかけていた。
検察側は、両被告が就労困難として市から生活保護費を受け取っていた期間に、鳳海被告がヤミ金を取り立てたり、受け取った金を所属する組のディナーショーのチケット購入代金に充てていたと指摘した。証人として出廷した実妹が鳳海被告に「体に気をつけて罪を償って下さい」と話しかけると、天を仰いで涙をぬぐった。
鳳海被告は弁護側の被告人質問で「市職員は、公務員として公平に法を運用すべきでなかったか」と問われると、「私にはそれを言う資格はない。市職員にお世話になったのに、恩をあだで返した」と謝罪した。
一方、検察側は「(深谷市の)福祉事務所の対応はともかく、行政暴力ともとれる言動への行政の対応には一定の限界があり、予防の必要性も高い」と、求刑で被告に厳しい姿勢を示した。
市はこの事件を受けて第三者調査委員会を設置し、協議を重ねている。9月中に調査結果を報告するという。【浅野翔太郎】
毎日新聞 2008年9月6日 地方版