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神隠し編(かみかくしへん)



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aksk
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島田圭司
DADA SEIDEN
チェルヲ
遠野江河
フジノン
惑居狼
夕輝秋葉
藤本和明

「わかりました。村の人々に気付かれないように、何とか富竹さんを捕まえて下さい。ただし、決して手荒な真似だけはしないようにお願いします」
「へっへっへ。奴さんが抵抗すればどうなるかは判りませんぜ。しかし、荒事になって村の連中に気付かれては、後々の行動に支障を来たしかねませんからね。なんとかやってみましょう」
「くれぐれもお願いします。後、捕まえたら真っ先に私に一報下さい。いいですね」
 入江は念を押すように小此木に言う。入江の言葉に合点がいかなかった小此木は入江に疑問をぶつけた。
「もちろん。捕獲に成功すれば所長にもご報告しますが…。その後どうするんですかい」
「富竹さんを、説得します」
「説得? まぁ、所長の好きなようにしていただければいいんですが。今の奴に説得が通じるような状態だとは思えませんがねぇ」
「転落事故の詳細を、私が直接話します。そうすれば、彼もきっと判ってくれるはずです」
 ぐっと拳を握り締め、入江は力強く宣言する。その姿を見ながら、小此木は諦めた風に首を振り小さなため息をついた。
「わかりました。富竹を確保次第、診療所の地下ブロックに監禁します。後は煮るなり焼くなり、所長にお任せしますよ」
 小此木の言葉に、入江は強く頷いた。

山狗の必死の捜索にも関わらず、富竹を発見できたのは富竹との再会から一週間後の綿流しの夜だった。
 綿流しも無事終わり、本部テントに詰めていた入江あてに小此木から電話が入った。
「所長、申し訳ありません。診療所が……、診療所が富竹に襲撃を受けました」
 小此木の第一声に、入江は一瞬だが地面が無くなってしまうような落下感を覚えた。崩れ落ちそうになる体を必死で支えながら、受話器越しに悲鳴にも似た声を上げる。
「何ですって!? それで富竹さんは今どうしているのですか? 」
「それが……、北条悟史を人質にして現在逃走中です。ちっくしょう、警備が手薄になっている隙をつかれた!! 」
 悔しさをかみ殺すような小此木の声。受話器の向こうから騒音が聞こえてくる。おそらく襲撃されてからそれほど時間が経ってないのだろう。診療所の混乱は、受話器越しにも漏れ聞こえてくる。
「わかりました。今すぐそちらに向かいます!! 」
 小此木が何かを言う声が聞こえたが、それに構わず乱暴に受話器を置くと入江は社務所を出て、そのまま神社の階段に向かって走り出した。

<続く>

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