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富竹ジロウは二度死ぬ(とみたけじろうはにどしぬ)



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aksk
匙々々山
島田圭司
DADA SEIDEN
チェルヲ
遠野江河
フジノン
惑居狼
夕輝秋葉
藤本和明

[神社の境内 9月25日 午後2:40]

「わざわざ集まってもらってごめんなさいなのです。実は、みんなに相談したい事があるのです」
「あぅ?なんでしょうか、梨花?そんなにあらたまって、どうしたのですか?」
「そうだよ、まったく水臭いなあ。そんなに丁寧にしてくれなくても、おじさんたちは何時でも相談にのっちゃうよ〜?」
「そうですよ。細かい事は気にせずに、私達にどんと任せてください!」
「みー。みんな、ありがとうなのです。実は、鷹野の事なのです」
「鷹野さん・・・か?」
「はいなのです。鷹野のために、富竹を殺そうと思っていますのです」
「あぅあぅあぅ!?ど、どういうことなのですか!?」
「みー、鷹野が富竹を好きな事は、みんな気づいていると思うのですが」
「くす。ええ、あれで隠しているつもりなんですから、可愛らしい限りですよね」
「え、そ、そうなの?おじさんは気付かなかったけど・・・みんなの気のせいじゃないよね?」
「お姉はまだそういう経験値が足りていないだけですよ。傍から見れば、一目瞭然です」
「ああ。鷹野さんああ見えてそういった事に奥手そうだからなあ・・・仕方ないと思うぜ」
「だから、今回を機会に、ぼんやりしていたら手遅れになってしまうという事を知ってもらいたいと思ったのです」
「はは〜ん。所謂真実の愛ってやつを知ってもらう、ってことだね!」
「ずばりなのです。・・・羽入、ごめんなさいなのです。鷹野のためだけに、こんな事に巻き込んでしまって」
「・・・あぅあぅ!大丈夫なのですよ!ノープロブレムなのです!鷹野のために、ボク達が一肌脱いであげましょうなのです!」
「ああ、勿論だぜ!」
「うーん、でもおじさんとしては、レナに迷惑がかからないか心配だね」
「それなら大丈夫なのです。ボクに考えがあるのです」
「ふーん。まあ、梨花ちゃんがそう言うなら、梨花ちゃんを信じておくとしよう!」
「ふふふ。鷹野の驚く姿が目に浮かぶようですね」
「みんな、ありがとうなのです。では、作戦を説明するのです。入江によると、どうやら東京に不穏な噂があるとかで、それを利用させていただくのです」



[入江診療所 9月30日 午前10:34]

 梨花と沙都子、そして羽入の三人が私の元を訪れてから一週間が経とうとしていた。
 実際の所、あれから他の子達とも会い、そして部活なるものも行った。
しかし、あれが本当に彼らのやりたかった事なのだろうか?部活というものがどんなものかは知らなかったが、時折酷い格好の前原圭一を見ていたので、その悲惨さだけは何となく知っていた。
 私は今はまだ診療所から外には出られないので屋内でやるゲームなのだろうと思っていたのだが、まさかあんな頭脳をフルに使うものだとは・・・。酷い目にあった。久々に頭を使ったので、知恵熱が出そうな位だった。
 しかし、それと私の今の状況とがどうにも結びつかない。一体何が目的なのだろう?実際私は戸惑うばかりで、何か心情の変化があったわけでもないし、それは彼らも分かっているだろう。そもそも何故今になって私と接触しようと思ったのか。
 まあ、正直それについては大体見当がついている。恐らくあのお節介な男が何か吹き込んだのだろう。まったく・・・昔から気が利かない割に、時折意外な鋭さを見せる人だった。どうせ彼が一枚噛んでいるのは明白なのだ。今度会ったら問い詰めてやろうと思っていた。
 さて、今日も確か彼らは来るはずだった。私が寝泊まりしている部屋は大人数で遊んだりするには少し手狭なので、他の地下区画の一室を借りる事になっている。私は彼らが来る前に先にその部屋に行って待っている事にして、自分の部屋を後にした。
 そういえば最近ジロウさんを見ていない。診療所の視察も兼ねてこちらに来ているためもう既に向こうに帰ったという事はないはずだが、それなら今は何をしているのだろう?入江にでも聞いてみようか・・・などと思っていたらどこかから話し声が聞こえてきた。誰だろう。まだみんなが来るには時間があるはずだけれど。
 声のする方向に行ってみると、そこには入江の姿があった。もう一人は・・・物陰に隠れてよく見えないが、あの髪は・・・園崎の妹?何を話しているのだろう。ひょっとすると自分の話かもしれないと思い、身を潜めて聞き耳を立てる。
「・・・・・・ですか!?富竹が・・・富竹が死んだといのは!」
「い、いえ、まだ確認は取れていないらしいのですが・・・残念ながら、その可能性は高いようです・・・」

<続く>

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