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富竹ジロウは二度死ぬ(とみたけじろうはにどしぬ)



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遠野江河
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[学校の校庭 9月22日 午後4:55]

「しっかしまいったねぇ〜・・・どうするみんなー?」
 魅音がため息をつきながら皆に聞いた。
 富竹は用事があるとかで、用件だけ言うとしまうとすぐに去ってしまっていた。
「どうするもなにも、何か手を考えるしかないのではございませんこと?」
「でも、いいんですか?相手は敵の大将だったお人ですよ?梨花ちゃまだけじゃなくて、私たちだって殺されかけてんですから」
 一同が静まりかえる。しかし、
「あぅ、ボクは賛成なのですよ」
 羽入がそう切り出した。皆の視線が羽入に集まる。
「羽入?どうしてそう思うのですか?」
 梨花が皆を代表して聞いた。
 羽入は優しい微笑みを浮かべ、一同を見渡す。
「確かに、鷹野は色々ボク達に酷いことをしたのです。ですが、ボクはもうあれは終わったことだと思っているのです。皆と闘って、鷹野は負けました。そしてそのお咎めも既に受けて、鷹野は十分反省しているはずなのです。これ以上昔のことを蒸し返して皆の仲間に入れてあげないというのは、ただの弱い者いじめなのですよ。あぅあぅ、みんなはそんな人じゃないって、ボクは信じているのですよ、あぅ!」
 言い終えた羽入は、皆を試すような言い方をしておきながらそんなつもりはさらさらないようだった。百パーセント信頼しているという笑顔を皆に見せる。
「へへ・・・確かにな。敗戦兵をいじめるなんざ、男のやる事じゃねぇぜ!」
「そうですわ!それに、わたくしはあの人がそれ程嫌いではございませんでしてよ?診療所に行くといつも優しくしてくれましたもの!」
「みー。鷹野がいないと、沙都子は診療所で入江と二人きりになってしまうのです。あぶないあぶないなのです」
「うん、レナも賛成かな、かな!それに、診療所も入江先生一人じゃ大変だもんね!」
「ふぅ・・・皆さんは簡単に割り切れるようで、羨ましい限りです。どうします、お姉?あと反対しているのは、どうやらお姉だけですよ?」
「ちょ、ちょっと!私がいつ反対したってのさ!反対していたのは詩音の方でしょー!?私だって賛成だよ賛成!」
 そうして場の空気が一気に和やかなものとなった。今はみんな笑い合いながら、どうしたら鷹野が気持よく現場復帰出来るかを考えている。
「う〜ん、でも難しいよねえ。いくら私たちが納得しても、鷹野さんの気持ちが変わらないことにはどうしようもないよ」
「そうですねぇ・・・。私たちと和解したとしても、本人に雛見沢で働く気がなければ、どうしようもないですからね」
「いや、だけど俺でもその気持ちは分かるぜ。一度滅ぼそうとまでした場所なんだ。罪の重さに耐えられなくても当然だろ」
「うん・・・でも、だからこそこの土地で働くべきなんじゃないかなって、レナは思うな。働いて雛見沢に貢献して、それで初めて本人も許してもらえた気になれるんだと思う」
「わたくしもそう思いますわ。むしろそこから逃げてしまう方が、本人にとっては辛いんじゃないですこと?」 「みー、きちんと雛見沢にご奉仕するのです。それでオヤシロ様の御許しを得なければならないのですよ。多分シュークリーム三個位でオヤシロ様のお怒りは鎮められるのです☆」
「あぅあぅあぅあぅ!オヤシロ様はそんな安っぽい神様じゃないのです!第一、オヤシロ様は怒ってなんかいないのです!十分反省をしたらきちんと許してくれる、寛大な神様なのです!」
「そうだぜ!俺だってこの前親戚からお菓子の包みが届いたんだけど、あんまり美味いもんだから独り占めしちまったしな!それもちゃんと許してくれているはずだぜ!」
「圭ちゃん・・・おじさんはそれはさすがに許してもらえないと思うな」
「許さないのです」
「圭一なんか祟りにあえばいいのです」
「ろくでなしですね。圭ちゃん」
「酷いよ・・・圭一君。死ねばいいのに」
「しまったっ、藪蛇だったかっ!ってお菓子一つでここまで言われなきゃならないかぁ!?」
「ちなみに、どんなお菓子だったんですの?」
「えっと確か・・・かぼちゃのモンブランだったな」
「神はすべてを許してくださいますわ」
「沙都子・・・いい加減、かぼちゃくらい食べられる様になりましょうね。でないと、悟史君に会わせる顔がありませんよ?」
「うぅぅぅ・・・け、圭一さんがいけないんですわよ!何でかぼちゃなんですの!モンブランなら他にもあるんじゃございませんこと!?栗でもレモンでも、かぼちゃ以外と入れ替えてくださいませー!」
「入れ替わってもモンブランはモンブランだと思うけどなあ、俺は。かぼちゃのモンブランなんてほとんどかぼちゃの味はしないぜ」
「そういう問題ではないんですのよー!」
 そうして話が脱線しかかった、その時である。
 レナがはっと何か思いついた表情をして、そして叫んだ。
「・・・あ!!わかった、わかったよ!鷹野さんに気持ちよく戻ってきてもらう、良い方法が!」


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