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富竹ジロウは二度死ぬ(とみたけじろうはにどしぬ)



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チェルヲ
遠野江河
フジノン
惑居狼
夕輝秋葉
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[学校の校庭 9月22日 午後3:10]

「あ、富竹さんだ。こんにちは!もう皆集まってますよ」
「富竹遅いのです。みんなカンカンなのです」
 レナと梨花が手を振って富竹に合図を送る。
「ゴメンみんな!待たせてしまったようだね」
 富竹が謝りながら、部活メンバーの元へ走ってくる。どうやらかなり急いできたらしく、涼しい日だというのに汗だくだ。
 富竹は鷹野と面会した後、部活メンバーへ連絡して集まってもらったのである。
「ほんとですわ。まったく、レディーの扱いがなっていませんことよ?」
「まったくだぜ・・・って、それだと俺が入ってないぞ!俺も待たされたんだからな!」
「あーら、ついさっき遅刻して来た方が何を仰いますの?そういう事は時間どおりに行動できる男になってから言ってくださいませ!」
「はん!そんなルールに縛られているような堅物になって何が面白いんだか。失敗したあとのフォローをユニークに決められるのが、本当の男ってもんだぜ!」
「へえ。そこまで言うのなら見せていただきますわよ!あら圭一さん、五分の遅刻でしてよ、どう申し開きをするつもりですの!」
「申し訳ありませんお嬢様、準備に時間がかかってしまいました。さぁどうぞお乗りください、かぼちゃの馬車でございます」
「かぼちゃは駄目でしてよー!!うわーん、ち、近寄らないでくださいませー!!」
「ははっ。かぼちゃ嫌いを克服しないと、沙都子はいつまでたっても白雪姫にはなれないねぇ!」
「お姉、それを言うならシンデレラですよ?まったく、お姉の方こそメルヘンが足りないんじゃないですか?それだと愛しの彼も射止められませんよ?」
「あぅあぅ!魅音の王子様は鈍感なのですから、魅音の方がしっかりしないとだめなのですよ?」
「なななななっ!なにさ二人ともー!ちょっと間違えただけじゃん!うぅぅ〜!」
「ははっ。みんな相変わらずだね!見ているこっちが元気になるよ。僕の思ったとおり、君たちになら相談できるかな」  富竹が安堵したような表情を見せる。どうやら先ほどまでは少し緊張していたようだ。
「どうかしたんですか?」
 話が先に進むよう、レナが尋ねる。
「ああ、実は君たちに相談したいことがあるんだ。ミヨ・・・鷹野さんの事で」
 鷹野という名前を聞いた途端、皆しゃべるのを止め、場が凍った様に沈黙してしまった。
「鷹野・・・さん、ですか?」
 レナが困惑した様に富竹に聞き返す。他の部活メンバーも口には出さないものの、その困惑が表情に見てとれる。それはあの六月の一件を考えると仕方のない事だった。まだ鷹野を素直に許せるという程月日は経っていなかったし、完全に許すという事は容易ではないはずである。
 しかし富竹はそんな空気を感じ取りつつも、努めて明るく振る舞おうとする。
「ああ!実は鷹野さんの処遇について、こんな提案が出ていてね・・・」
 富竹は現在鷹野三四が置かれている状況と鷹野の診療所への復帰について、彼女がそれにどう感じているを踏まえつつ説明した。
 皆どうやら鷹野が診療所に居ることは薄々感じていたようだったが(主に富竹が診療所に定期的に訪れていた事に起因するのだが)、やはり職場復帰については一同が驚きの声をあげた。
「へぇ・・・鷹野が職場復帰ねぇ・・・私はてっきり遠くへお引っ越しでもなさるのではないかと思っていたのですけど」
「ああ、俺もそんな感じに思ってた。まさか雛見沢に残るなんていう選択肢があったとはな」
 詩音と圭一がやや冷たく反応する。
「そう責めないであげてほしい。あの一件では・・・彼女も被害者だったんだ」
「それで、肝心の相談とはなんなのですか、富竹?」
 羽入があまり冷たくならないよう、柔らかく問いかける。
 その物腰から、どうやら彼女は反対しているわけではないらしい。
「ああ、それで皆に・・・鷹野さんが気持よく診療所に戻れるよう、協力してほしいんだ」


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