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高卒認定試験出願始まる 不登校、中退者の再挑戦支える /福岡

 高校の不登校生徒や中退者のための「もう一つの選択肢」とされる「高卒認定試験」の出願が始まった。大学入学資格検定(04年度廃止)に代わり、進学だけでなく就職のための資格として05年度から年2回実施されている。受験は少年院などでも可能となり、受験生は少しずつだが増えてきている。【高橋咲子】

 ◇周知が課題

 福岡市の女性(19)は高校2年の半ばで学校をやめた。在学中は不登校気味で、授業に出ても机で寝ていた。やめるかどうか迷っていた時、服装も派手な自分を「ほとんどの先生が見捨てた」という。だが、女性のスクールカウンセラーは悩みに耳を傾けてくれた。今は水商売の仕事を続け、資金をためている。あこがれのスクールカウンセラーになるためだ。一時は進学をあきらめかけたが「やっぱり大学で心理学の勉強をしたい」と思うようになり、11月の高認受験を考えている。

 以前の大検では定時制や通信制の生徒以外は中退者でないと受験できなかったが、高認では、全日制高校に通う16歳以上の生徒なら在学中でも受験できるようになった。文部科学省は制度変更の目的の一つに、年間約12万人いる不登校・中退者への対応があると説明する。高認制度では学校をやめるという大きな決断をせずとも、高校卒業資格が得られるメリットがある。

 高認は少しずつ普及し始めている。大検の出願者は01年度の3万5629人をピークに、04年度は2万4960人に落ち込んでいた。高認が始まった05年度は2万6631人、07年度は3万1796人に増えている。07年度からは少年院や刑務所でも職員の監督の下で試験が受けられるようになり、同年度は388人、今年度は既に306人が出願した。

 一方、不登校や中退者の進路支援に取り組むNPO「高認情報センター」(東京都)の大熊浩二主幹は「12万人の不登校・中退者がいることを考えると、受験者は決して多いとはいえない」と指摘する。高認制度の普及を目指し、今年から福岡市など全国10カ所以上で説明会を開いている。

 認知度の向上が必要なのは、受け皿となる企業や自治体でも同様だ。文科省が06年、採用試験での扱いを調査したところ、高認合格者を高卒として認めていなかったり、扱いを決めかねている企業が5割弱、自治体で3割弱もあった。

 高認受験のための予備校「第一高等学院博多校」(福岡市博多区)の渋谷美咲子(みさこ)校長は「学校になじめずに不登校となったり退学した生徒も、目的を持って高認にチャレンジしている。生徒本人の更なる努力も必要だが、高認資格を取ったという頑張りが評価される社会になってほしい」と話している。

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 ■ことば

 ◇高卒認定試験

 毎年8月と11月、全国47会場で2日間にわたり試験を実施。8~9科目をマークシート方式で受験する。高校で修得した単位に応じて試験を免除される。今年度の第2回は11月15、16日にある。

〔福岡都市圏版〕

毎日新聞 2008年9月6日 地方版

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