三笠フーズがカビ毒アフラトキシンや殺虫剤メタミドホスに汚染された事故米を食用に転売していた問題で、食品研究者や農林水産省は「加工の過程で毒性は薄まっており、健康への影響は考えにくい」との見解を示している。
◇ ◇
鹿児島、熊本両県の焼酎メーカーに転売されたベトナム産米から検出されたアフラトキシンは、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関の発がん性物質リストにも取り上げられている猛毒。農水省は「業者はコメのカビを取り除き、表面を削って出荷したため、問題はない」とする。
ただ、農水省が三笠フーズの出荷方法を確認したわけではない。カビ米が焼酎製造に使われた恐れは捨てきれない。鹿児島県工業技術センター食品工業部の瀬戸口真治研究専門員は「(使われたとしても)焼酎は長い時間と多くの工程をかけ製造されるため、有害物質の濃度は相当薄まっている」との見方を示す。
◇ ◇
瀬戸口研究員によると、人気の芋焼酎は洗って蒸したコメに麹(こうじ)を加えて米麹を造り、発酵させながら芋を投入。できたもろみを蒸留、熟成して製造する。「コメは最初の麹造りでしか使わず、さらに気化した成分を冷却して液体に戻す蒸留の工程で、菌や有害物質はほとんど揮発するのではないか」
仕入れたコメはその年に使い切るのが一般的。三笠フーズが2004年度に販売したカビ米は、焼酎に使われていても既に消費されてしまっている可能性が高いという。
鹿児島県の焼酎メーカーのほとんどは、米麹用に、タイ米か生育が不十分だった国産未熟米を使用している。しかしタイ米の値上がりから、ベトナム産など他の産地に目を向ける動きも出ているといい、瀬戸口研究員は「焼酎メーカーに流れたカビ米が、発表通り約3トンだとしたら、中堅の工場が3日で使い切る量。試験用だったかもしれない」とみている。
熊本県で多く生産されている米焼酎も、仕込みや蒸留の基本工程は芋焼酎と同じで、健康被害は考えにくいという。
◇ ◇
一方、米菓原料用に転売された可能性がある中国産もち精米約300トンを含む計約800トンからは、残留基準(0.01ppm)の5倍のメタミドホスが検出された。農水省は「この程度なら体重50キロの大人が1日600グラムを食べ続けても健康に影響はない」と、メタミドホス3000ppm超が検出された中国製ギョーザ中毒事件との違いを強調した。
さらに「メタミドホスは蒸発しやすいので分解しやすい」として、米菓の製造工程で毒性が薄まるとの見方を示している。
=2008/09/07付 西日本新聞朝刊=