まだ五輪の熱気が冷め切らない北京で、障害者スポーツの祭典「北京パラリンピック」が六日、開幕する。十七日までの十二日間、再び夢と感動のドラマが繰り広げられる。
今回の大会には、百四十以上の国・地域から四千人を超える選手が参加する。今回から新たにボートが加わり、全部で二十競技が実施される。国家体育場(愛称・鳥の巣)や国家水泳センター(水立方)など五輪と同じ会場が使われる。
パラリンピックは、第二次世界大戦で戦傷を負った人々のリハビリの一環として、英国の病院で行われたアーチェリーの競技会が始まりとされる。今ではリハビリの延長といった域は完全に超え、障害のある人々の最高峰のスポーツ大会へと発展した。体力と技術の極限に挑む選手たちの姿が、今回も見る者を感動させてくれるだろう。
陸上や水泳などのほか、目標にボールをどれだけ近づけられるかを競う「ボッチャ」など、パラリンピック独自の競技もある。車いすのバスケットボールやラグビーには独自のルールが設けられている。
日本は今回、十七の競技に百六十人余りの選手が出場する予定だ。ボッチャ、ボートなど初参加となる競技もある。前回アテネ大会でリレーを含め七個の金メダルを獲得した競泳の成田真由美選手をはじめ、前回のメダリストも多数出場する。
アテネ大会で、日本選手団は金十七個を含め五十二個ものメダルを獲得し、過去最多を記録した。しかし、今大会は楽観視できない。陸上や水泳などでは障害の程度によってクラス分けされているが、今回は大会のスリム化を目的にクラス統合や種目を減らすといった措置がとられたからだ。
北京では金十一個を含む三十九個のメダル獲得を目標に掲げる。戦いは甘くはなかろうが、対応策も講じられているようだ。成田選手は今回、出場種目をメダルが狙えそうな個人メドレーなど四種目に限定するという。各選手が持てる力を出し切れば、結果はついてこよう。
郷土岡山からも車いす卓球の岡紀彦選手、車いすテニスの木村禎宏選手、車いす陸上の松永仁志選手が出場する。大舞台での活躍を期待したい。
北京大会を前に、政府は金メダルに百万円などパラリンピックメダリストに対する報奨金制度導入を決めた。出場する選手にも後に続く人にも励みになろう。大会を機に国内障害者スポーツの一層のすそ野拡大を図っていく視点も大切だ。
沖縄返還にかかわる密約の公文書公開を作家らが外務省と財務省に請求した。政府はかたくなに隠し続けている。
請求したのは一九七一年六月十二日付の秘密合意書簡など三文書だ。同年、日米間で沖縄返還協定が調印され、軍用地原状回復補償費四百万ドルは米側負担と定められたが、日本側が肩代わりするという密約があったことは、現在では広く知られるようになった。米国で二〇〇〇―〇二年に密約を裏付ける公文書が明らかになったからである。
日本でも、交渉の当事者だった当時の外務省アメリカ局長が密約の存在を認める証言をした。それでも政府は一貫して密約を否定する姿勢を変えようとはしていない。
密約をめぐっては、元毎日新聞記者西山太吉さんが一九七二年に外務省の女性職員から極秘電文を入手したとして国家公務員法違反罪で起訴され、有罪が確定した。当時、社会党がこの電文を基に国会で密約を追及し、大きな社会問題になった。
西山さんは、密約を裏付ける米公文書が見つかったことなどから「違憲、違法な密約の存在は明らかで、起訴は不当」などと国に謝罪と賠償を求めて提訴した。しかし、最高裁は先ごろ、西山さんの上告を退ける決定を下した。「不法行為から二十年で賠償請求権が消滅する」との除斥期間を適用した一、二審判決が確定し、密約の存否を判断しないままに終わった。
政府は、密約の疑惑が膨らむばかりなのに、ないと言い張っているのは国民に対してあまりにも不誠実である。都合の悪いことを隠そうとしていると疑われても仕方なかろう。政府の外交文書は三十年経過後に開示するのが原則だ。沖縄返還協定調印後三十五年以上たつ。速やかに公開に踏み切るべきだ。
(2008年9月6日掲載)