事件発生から1年たって公表…ソニーPC回収の不手際
2008/9/5 17:00問題が発生したのは「VAIO TZ」シリーズの計280機種で、昨年5月以降に製造されたもの。国内では19機種、約6万7000台が対象になる。
これらの機種では、電源の差し込み口周辺や液晶画面の枠部分が異常発熱し、変形する事例が発生。液晶画面を開閉するうちに本体との間をつなぐ配線が切れてショートしたり、液晶画面の枠部分の回路基盤に不具合があることが、発熱の原因という。
ソニーは昨年8月、顧客からの指摘で問題を把握していたが、経済産業省への報告は今年8月になってからだった。ソニーは「不具合の原因究明と再発防止策の準備に時間がかかった。公表が遅れて申し訳ない」と非を認めている。
政府は、パロマ工業製湯沸かし器で一酸化炭素中毒事故が相次いで発生したことを機に、消費生活用製品安全法を改正し、昨年5月から製品事故の報告・公表制度を新設。死亡事故や重傷事故、火災などが起きた場合に、国に報告するよう義務づけた。
今回のバイオのケースでは、火災や重傷事故は発生しておらず、同法に基づく報告義務は発生しない。しかし、本体が変形するほどの異常発熱事故が相次いで発生し、複数の利用者がやけどを負ったにもかかわらず、他の利用者への注意喚起を行わなかった点は企業モラルが疑われる対応といえる。
ソニーでは「結果的に対応が不十分だった。そうこうするうちにやけどを負う人が増えた」(広報センター)と、対応の不備を認めている。
ソニーでは2006年にも、同社製リチウムイオン電池を使ったパソコンで過熱・発火の恐れがあることが明らかになり、510億円の費用を使って同電池約960万個の無償回収に踏み切っている。この際も、05年時点で事故が起きていたことが分かり、原因究明や対応の遅れが大きな問題になった。
ソニーは06年9月に製品の安全性・品質管理を担当する専任役員を置くなどして対応を進めていたが、それが結果的に生かされなかったことになる。
消費者軽視と受け取られかねない対応は、消費者のソニー離れにつながるおそれがあり、薄型テレビやDVDの歳末商戦などに影響する可能性もある。
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