◎胡指導部、政権安定に自信＝改革開放を促進へ−五輪終わり不満噴出も・中国〔五輪〕

　【北京２４日時事】中国の胡錦濤指導部は２４日閉幕の北京五輪を「偉大な成功」と位置づけ、政権の求心力が高まったと評価している。さまざまな批判や障害を乗り越えて開いた五輪だったが、中国選手の大活躍で国民の一体感が強まった。この成果を１２月の改革開放３０周年につなげ、政権安定を固めたい考えだ。ただ五輪閉幕は、これまで先送りしてきた幾多の課題にじかに向き合わねばならなくなったことも意味する。

　胡錦濤国家主席は２２日、閉会式出席のため北京を訪れていた各国首脳と会談した際、五輪開催は「中国に対する世界の信任、世界に対する中国の貢献」を表すと指摘。温家宝首相も「五輪は終わってもオリンピック精神は永遠に残る」と述べ、北京五輪の歴史的意義を強調した。中国共産党の中央党校機関紙・学習時報は「五輪開催は（改革開放路線の始まった）１９７８年以前はあり得なかった」とし、改革開放３０年が五輪を可能にしたと解説。五輪後には開放をさらに進めるべきだと主張した。

　北京五輪は中国の存在感が著しく高まっていることを実証した。それを目の当たりにした中国国民が国家や民族を誇る気分を強め、「世界に対する自信を深めた」（新華社）のは間違いない。しかし、それが政権への信頼回復につながるかは、即断できない。

　五輪開催に当たり、中国政府は都合の悪い部分を徹底的に隠した。地方からの直訴者や人権活動家らを排除し、デモ申請は１件も認めず、チベット示威運動参加者は有無を言わせず連行。出稼ぎ労働者は事実上、北京を退去させられた。

　五輪用の演出を「表面を飾っただけ。実態は何も変わっていない」と冷ややかに見ていた市民が多いのも事実だ。胡政権が腐敗と格差などの社会矛盾に直ちに取り組まねば、押さえつけられてたまった不満が噴出する恐れもある。五輪後の政権を取り巻く環境は、それほど楽観できるものでないかもしれない。（了）