第65回ヴェネチア国際映画祭のコンペ作品として海を越えた『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』。プレス試写会、記者会見、レッド・カーペット、公式上映と一連の行事を終えた翌日、ビーチ沿いのホテル・エクセルシオールにて、分刻みで海外プレスのインタビューに応じる押井守監督は、今年のヴェネチアに何を見たのか。
『スカイ・クロラ』の記者会見では、押井の戦争観、社会観への質問が相次いだ(関連記事)が、海外プレスとの個別インタビューでは、その傾向がさらに顕著に出たようだ。
「80パーセント以上は、戦争の話。スイトが言うように『戦争は永遠になくならない』という僕の世界観に対して、社会学的な質問がくる。キルドレって大人にならない子どもたちのことよりも、全体の世界観への質問が多い」
海外プレスの反応は、日本ではなかなか触れられることのない、押井の奥深い哲学をくすぐったようだ。
「日本のインタビューでは、50パーセントが『見所は?』と、あと声優についての質問。海外では、自分たちが映画を観た上で、意味を解釈して、個人の視点で聞いてくる。インタビュアーの資質が問われるよ」
もちろん、プレスの中には“押井オタク”も多くいるわけで、ディテールに踏み込む質問が出るであろうことも予想できる。
「他に聞かれるのは飛行機のこと。あれは本当に飛ぶのかとか、デザインに関して。あとは日本アニメのこと。 それと、ヨーロッパではまだカミュ(「異邦人」)がポピュラーなんだとわかった。日本では、今の学生たちはカミュなんて読まないよね」
ヴェネチアには当然、ヨーロッパの記者が多い。今年は、アメリカからも“Hurt Locker”など戦争をテーマとした映画が出品されているが、『スカイ・クロラ』は米国で、どのように受け入れられるのだろう。
「こっちとあまり変わらないんじゃないかな。ただ、(アメリカには)子どもに関して独特のモラルがあるから、子どもが酒飲んだり、タバコ吸ったりっていう、キルドレに対する反応はあるかもしれない」
海外プレスの反応は、日本ではなかなか触れられることのない、押井の奥深い哲学をくすぐったようだ。
「日本のインタビューでは、50パーセントが『見所は?』と、あと声優についての質問。海外では、自分たちが映画を観た上で、意味を解釈して、個人の視点で聞いてくる。インタビュアーの資質が問われるよ」
もちろん、プレスの中には“押井オタク”も多くいるわけで、ディテールに踏み込む質問が出るであろうことも予想できる。
「他に聞かれるのは飛行機のこと。あれは本当に飛ぶのかとか、デザインに関して。あとは日本アニメのこと。 それと、ヨーロッパではまだカミュ(「異邦人」)がポピュラーなんだとわかった。日本では、今の学生たちはカミュなんて読まないよね」
ヴェネチアには当然、ヨーロッパの記者が多い。今年は、アメリカからも“Hurt Locker”など戦争をテーマとした映画が出品されているが、『スカイ・クロラ』は米国で、どのように受け入れられるのだろう。
「こっちとあまり変わらないんじゃないかな。ただ、(アメリカには)子どもに関して独特のモラルがあるから、子どもが酒飲んだり、タバコ吸ったりっていう、キルドレに対する反応はあるかもしれない」
“日本映画”はもう存在しない
ヴェネチア参加は今回が2回目。その他、カンヌやベルリンなどと海外の映画祭に参加してきた結果、独自の醍醐味を見いだしている押井監督。
「映画は異文化だから。視点の違いから生まれる誤解とか孤独とか、それが面白い。映画祭の意味って、僕はそういうところに見ている。今回、“日本映画”っていうくくりは存在しないとわかった。これからは“個々の監督の映画”としてとらえられていく時代。カテゴリーが存在するのは、ハリウッドの専売特許だね。今回も海外プレスにとって、『コンペに日本映画が3本』とか、『その他の日本映画と比較して』という発想はゼロ。映画祭はオリンピックではないから、その国が勝った、負けたっていうのじゃない」
監督だけでなく、俳優やプロデューサー、ヘアメイク、CGアーティストなど、多くの日本人フィルムメーカーが海外進出を目指す時代。真の国際人のあり方が、押井監督のヴェネチア体験を通して浮かび上がる。
「その昔、ヴェネチアで黒澤明監督が賞をとって、日本国民が誇らしがったっていうのは、ノーベル賞みたいなもので。今はもう、そういう時代じゃない。個人の資質を示して、結果として日本の存在が光るってことで、その逆ではない」
「映画は異文化だから。視点の違いから生まれる誤解とか孤独とか、それが面白い。映画祭の意味って、僕はそういうところに見ている。今回、“日本映画”っていうくくりは存在しないとわかった。これからは“個々の監督の映画”としてとらえられていく時代。カテゴリーが存在するのは、ハリウッドの専売特許だね。今回も海外プレスにとって、『コンペに日本映画が3本』とか、『その他の日本映画と比較して』という発想はゼロ。映画祭はオリンピックではないから、その国が勝った、負けたっていうのじゃない」
監督だけでなく、俳優やプロデューサー、ヘアメイク、CGアーティストなど、多くの日本人フィルムメーカーが海外進出を目指す時代。真の国際人のあり方が、押井監督のヴェネチア体験を通して浮かび上がる。
「その昔、ヴェネチアで黒澤明監督が賞をとって、日本国民が誇らしがったっていうのは、ノーベル賞みたいなもので。今はもう、そういう時代じゃない。個人の資質を示して、結果として日本の存在が光るってことで、その逆ではない」