住民票が置けると話題になっている、蕨駅前にあるサイバーカフェ
に先日行ってきました。
外から見るとどこにでもあるネットカフェで、中も特に変わっているわけではありません。
軽く身分証明書を提示して会員証を作り、3時間くらいネットしてました。
で、店員に住民票のことをヒアリング。
住民票を置けるのは、30日以上滞在する「Long80」というプランのみで、オプションで3000円を払えば、住民票を置けたり、郵便物を受け取ったりしてくれるというサービス内容でした。
このプランでは一日が1,920円になるわけですが、30日で57600円になる分を「家賃」と思っていただければと店員は言っていました。
住民票の移動は店がやるわけではなく、当人が役所に行って手続きするようです。
メディアの報道を見ると、利用者にはひとつでも上のステップに上がってもらえればとか、社会貢献したいとか、概ね好意的に報道されることが多いようです。
実際、店に上がる階段には取り上げられたTV番組名が誇らしげに並べてありました。
一方で、自分は野宿者の住民票に関してこんなことを思い出します。
2004年に大阪の野宿者支援運動で、メンバーの居室に野宿者の住民票を置いていたことをもってして「電磁的公正証書原本不実記録同供用幇助」という容疑で弾圧がかけられました。運動体のメンバーが住民票を置いている人が居住実態がないにもかかわらず住民票を置いたことを助けたっていう罪。どうして自分の部屋に住民票を置いてもいいよということになったかっていえば、そもそも住民票がなければ年金も受け取れず、就職活動も不利になるという社会的な差別が原因なわけです。そういった住民票がないことによる不利益を解決するのは本来であれば行政の仕事であることは明らかです。行政がそういったことに取り組まず放置した結果として、住民票がないことで不利益を被ってしまう。それをフォローしようとしたことで罪に問われ警察に拘束された。
不条理そのものですね。
さて、サイバーカフェがやっていることと大阪の事案とはどう違うのでしょうか?
決定的に違うのはサイバーカフェが、1日で1,920円つまり、30日で57600円もの利用料をとり、さらに住民票を置けるということで追加で3000円を取っていることです。当然大阪の運動体はお金なんて取っていません。
ネットカフェに実際に寝泊まりできることで料金を取るのはわかるとしても、薄いべニアの壁にフラットタイプのシートとPCがあるだけの場所に、いくらなんでも57600円は取りすぎではないでしょうか?
それに住民票を置けるという名目の3000円っていったいなんの代金??
通常の部屋なら住民票を置くのは当たり前で誰しも不思議に思わないし、そのことでお金を取ったりもしません。ネットカフェに住民票を置けるというのが新奇なわけで、そのことをわざわざ告知することで「本当なら置けない場所に置かせてあげるんだから、そのありがたいと思える分を負担しろ」ってことなんでしょうか?
住民票の移動も当人がやるわけで、手間料もかからない。あえていうなら、郵便物を受け取っている手間がかかるのでその分の「管理費」みたいなものなんでしょうか?それなら郵便物受取代行料で住民票とは関係がないですね。
どういった使途なのか、お金を取る意味がよくわかりません。
しかもどうして30日のプランだけなのか?30日以上住めば居住したことになるのでしょうか?2週間ではだめなのでしょうか?
さらにいえば、いったんここに住民票を置いた人がそこから移すのも当人がやることになるわけで、店側は関知しないわけです。なんで、居住実態がないにも関わらず気がつけばいつのまにか住民票だけ残されていたってこともありえます。
こんな問題ありすぎる企業を貧困ビジネスのよい例でネットカフェ難民を救っていると取り上げるメディアもどうなんでしょうか?
エムクルーと同じ轍を踏むことになりかねないのではないでしょうか?
貧困ビジネス自体が営利目的で営業している以上、持たざる者から多かれ少なかれ搾取収奪が行われているわけで、その多寡を判断してもあまり意味がないように思うのですが、いかがでしょうか?
搾取が少ないからいい企業だといえるのかといえば、そうではないでしょう。
企業が本当に何を狙っているのか、それを見抜く必要があると考えます。
文責sino