2008-09-04
■ 追悼 くりぃむナントカ
- 作者: くりぃむしちゅー/銀杏BOYZ/峯田和伸, 藤井直樹/林龍太郎
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2007/08/11
- メディア: 単行本
昨日最終回を迎えたくりぃむナントカ。はじまったのが、2004年10月だというから、だいたい4年ほどやっていたことになる。だが、ゴールデンに移行してからたったの5ヶ月で終わってしまった。
わたしは2004年の初回から見ていた。初回の内容も覚えている。利きセンスというコーナーで、有田と大木アナが適当な司会ぶりを見せ、回答者らを憤慨させていた。このことからも、この番組の基礎がすでに初回の時点で出来あがっていたことが分かる。すなわち、一方の側の、適当でその場しのぎのやりとり、理不尽な要求、そんな他愛もないいい加減さを、他方の側が、群れで野次り倒すという構図が先にあって、その上で、いろいろな企画があったのだと思う。
毎回欠かさず見るというほどのファンではなかったが、少なくとも2回に1回は見ていた。QJの特集も買った。但し、そんなに大笑いをしたという記憶はない。長渕剛ファン王決定戦のときだけ息ができなくなるほど笑ったが、あとはニヤニヤ見ていたという程度の視聴態度だった。しかし、なぜか、面白かった。
内Pなんかも確かに面白かったのだが、妙に殺伐としていたと思う。笑いは力づくで獲得するものであるという思想が重苦しくもあった。それに対して、くりぃむナントカでは、笑いは見つけにいくものという思想があったと思う。狩猟と採集。「冷静に考えたらおかしいだろう」「なんでそうなるんだ」「なにをやっているんだ」そうした発見が面白かったという印象がある。例えば、京都でのビンカン選手権で、矢作がわざとギャグっぽい誤答をしたときに、「ウケ狙いだ」とみんなに罵倒されていた。「ウケ狙い」を批判されるというのは、芸人のアイデンティティにとって致命的なことではないだろうか。しかし、ギャグを笑うのではなく、ウケを狙いに行った行為を笑うというところに、この番組の特異さがあったと思う。
だからこそ、大木アナの存在感があった。特になにか面白いことをやっているわけでもない。本人なりに決められたことをやっているだけなのだが、ちょっとした隙につけ込まれて笑われてしまう。IN DOORSでは上田の失敗に過剰な相槌をうって笑われ、ライバルは自分選手権では感動で涙を流しているところを笑われる。カロリーメイツでは料理づくりの実況中継がいい加減だと笑われ、反省会ではテープチェンジの間にワインを呑んでいたとして笑われる。いわゆる「天然」というのとは少し違う。進行役という役柄が規定する行為の中で、あまりに進行に徹すれば笑われ、あまりに企画参加者に近づき過ぎるとこれも笑われる。一挙手一投足にわたってその行為の逸脱を笑いに変えるべく監視されているのである。無論、大木アナの場合、進行役と参加者役との両者の間の振れ幅が尋常ではなかったともいえるが、同時に、このマークのされっぷりは他に例を見ないほどだったともいえる。これも、採集型お笑いの帰結だったのかもしれない。
とまれ、くりぃむしちゅーと大木アナの組み合わせをまたどこかで見てみたいと心から願う。
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