【北京・三木陽介】4000年の歴史があるという「闘蟋(ドーシー)」は、コオロギを戦わせる中国の遊びだ。北京市で100年以上営業しているコオロギ店をのぞいてみた。
市西部のペット専門市場・官園市場にある「蘭明軒」の店主、蘭陰棟さん(51)はこの道22年。名刺の肩書は「鳴蟲世家第四代傳人」。老舗の4代目という意味だ。先祖は清朝(1616~1912年)時代に皇帝に仕え、コオロギ飼育の名人として名をはせたという。狭い店内では、発泡スチロールの箱に雑居するペット用の安いコオロギと、1匹ずつブリキの缶に入れられた闘蟋用のコオロギが売られていた。
闘蟋用は、歯や頭の大きさ、体の色つやなどによって1匹10元(約150円)~60元(約900円)。買った客はキュウリ、ニンジン、エビなどをすりつぶして乾燥させたものを与え、大切に育てる。「コオロギは人間と同じ。強さは素質が7割、残り3割は育て方」と蘭さん。
五輪が終わるころ、闘蟋はシーズンを迎える。路地などに楕円(だえん)形のプラスチックの枠を置き、持ち寄ったコオロギを入れる。逃げた方が負けだ。蘭さんは「何分間かの勝負のために何カ月も大事に育てる、その過程が面白いんだよ」と話す。
違法だが、賭博市場もある。ホテルの一室などで開帳され、双方が1000元(約1万5000円)ずつ、客は1000元未満の範囲で賭ける。
ここ数年のコオロギ市場は低調で、闘蟋を知らない若者も増えた。「この文化はディスコ、カラオケと違って歴史がある。永遠になくならない」。蘭さんは自信満々だった。
毎日新聞 2008年8月22日 11時54分(最終更新 8月22日 12時57分)