今日の我国は終戦直後にも比肩しうる程の制度、体制の大変革が行われ、法律分野も正にその渦中にあります。
これは諸外国からの国際化の要請や先端技術革新による経済、生活様式の変化によるものであり、その結果従来の特定分野に限っての
法律研究では賄えなくなっています。慶應義塾大学法科大学院は「国際性、学際性、先端性」を理念とし、受身としてではなく、
更なる「正しい発展」の為に十分寄与できる法曹の養成を目指しています。そして、現在に止まらず将来どう動こうとしているかを
正確に認識できるよう法の最前線で活躍している実務家教員を多数登用するとともに、実務家教員と研究者教員の共同作業により、
その法的問題点を洗い出し、理論構成の道筋を示そうとしています。将来法曹になる人は、この激変する社会において現在では想定しえない
紛争の法的解決を荷わなければなりません。その為には、社会がどう変化しようとしているか、またこれに対応し、
法内容がどう変化するかという法の可変性に対する正しい認識と、反面社会に流されず、脈々と受継がれている正しさの追究、
人間価値尊重という法の普遍性、不変性を確固として守り抜いたときに初めて「正しい発展」に寄与できるものと考えます。
このような法の可変性と不変性を正しく自己の内に確立しようとする法曹を養成するのです。
諸君が我校に入学され塾員となったとき、塾員同士の強い絆が、その後の法曹としての人格形成に必ずや有益なものとなり、
司法試験合格後の法曹人生に必ずや大切な財産になるものと確信します。開祖福澤先生の「独立自尊」の言葉は、
各自が限りなく自己も他人も尊重することと併せて時勢に流されない不変の価値に基いて毅然とした行動が取れる人間であれとの意味と考えます。
これこそ法曹に求められている人間像で、慶應義塾法科大学院が目指す法曹像なのです。我々はそのような高い志を有する諸君の入学を希望しています。
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1968年慶應義塾大学法学部卒業
1970年弁護士登録
現在、河村法律事務所所属兼慶應義塾大学法科大学院教授。司法試験考査委員(商法、2002年) |
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