耳(みみ)通信
Vol.4/音の表現用語
「それはどんな音か?」
と訊かれて答えに窮するあなた。音を表現する言葉はわりと沢山ある。ことオーディオの世界に至っては尚のこと。音に対する印象を元に作られた言葉は時としてわかりづらく、一度わかってしまえば当然の如く使えるものも多々ある。今回はそんな音の表現ことばを集めてみた。オーディオ機器などの感想で音を表現するときの参考にしていただければ幸いである。まずは最も印象的な部分から。
硬い・柔らかい・冷たい・暖かい音の4つである。<音が硬い>とは金属的な高音域が目立っている場合で<音が柔らかい>とは逆にそれが控え目であることをいう。<音が冷たい>とは冷水に浸かったような瑞々しい感覚であり<音が暖かい>とは陽の下にいるような若干、膨らみのある感覚をいう。硬くて冷たい、柔らかくて暖かい、硬くて暖かい、柔らかくて冷たい、などと組み合わせることで表現の幅が広がる。
透明感・S/N感・歪感・雑味:音の透明感は高いほど澄んだクリアな音ということになる。S/N感はシグナル(Signal)とノイズ(Noise)と割合で分母のノイズ(N)が低いほど全体として数値が高くなるからS/N感は高いほど一般的に音質は良好とされる。歪感は音の歪み具合でこれは低いほど元の音に近い正確な音(原音忠実)ということになる。歪みが負に目立つ場合は<雑味がある>などともいう。透明感とは違うが、様々な音像がハッキリとクリアにきこえる音の場合は<音離れが良い>などともいう。
量感・力感:どちらも音の全体、もしくは低音域に使われることが多い。量感が高いほど音の情報量が多い。つまりより解像度の高い<繊細な音>が表現できる。また低音域の場合は密度が高く音が潰れない。力感は文字通り音の力具合を表し、音圧や音量に始まり音の芯や筋などがどれくらい力強いかを表現する。これが高いほど<図太い音>になる。この二つの関係は乖離しているが相補的でもある。しかし相殺するものではなく、また量感と力感のどちらが欠けてもよい音とはいえないだろう。
レンジ・スケール感・音場:レンジとは幅のことで、この場合は音の幅。再生周波数範囲が広い場合に使う。レンジが広い(ワイドレンジ)、レンジが狭い(ナローレンジ)などという。ダイナミックレンジはシグナル(S)の最小値と最大値の比率でありdB(デシベル)という単位で表す。S/N比にも依存する。ダイナミックレンジの値が大きいほどノイズが減り必然的に音質は向上する。スケール感は音の空間的な広がりを表し、レンジが広いことで最小音と最大音の再生能力の幅が広い<スケール感がある>音となる。左右または<奥行きのある>立体的な音の表現力によりまるでそこにあるような<音場>が現れる。
コモリ感(暗騒音化)・抜けの良さ:コモリ感とは独得の頭内定位で音が頭内で響いているような感覚。密閉型ヘッドホンなどのマイナス面として語られる場合が多い。抜けの良さは、開放型ヘッドホンの特徴で、音がこもらずに抜けてゆく感覚をいう。抜けが良い反面、音圧が下がる場合もあるから抜けが良いから一概に音質が良いとはいえない。コモリ感も弾力のある低音を表現する場合もある。
ドンシャリ型・カマボコ型・フラット:ドンシャリ型はハイとローが上がっている、またはハイとローにブーストがかかっている場合に云われる蔑称。カマボコ型はその名の通り、逆にハイとローが落ちている場合に云われる。全ての周波数帯域でバランスのとれている音はフラットという。
音の輪郭(視覚的イメージ):音の全体的なシルエット。様々な形があり。マイルドな輪郭、シャープな輪郭、ぼやけた輪郭、ハッキリした輪郭、歪んだ輪郭、と使い分けることで、音の全体的な傾向を表現できる。このように音像はときとして映像の表現に置きかえて語られる。音により喚起された視覚的イメージはその形、色、動きにまで及び、若干、印象的な曖昧さを持ちながらも、豊かな表現を与えてくれる。
色づけ・味づけ。ソフト(原音)にはない音の特徴を機器側で付加されていること。まったく色づけや味付けがない場合は<原音忠実>や<ニュートラル>などという。色づけや味付けは好意的に取られる場合とそうでない場合が人によって異なる。原音への色づけ・味つけを意図的に行うことを<再生芸術>ともいう。この場合、原音を超える可能性もある。偽物は本物を超える場合があるのと同じである。
低音域:
+:伸びのある・タイト(引き締まった)・パンチのある・シャープな・量感のある・力感のある
−:ふやけた・ぼやけた・こもった中音域:
+:ハッキリとした・抜けの良い・立ち上がりの良い・躍動感のある
−:ぼやけた・筋の通らない・沈んだ高音域
+伸びのある・スピード感のある・クリスタルな・澄んだ・硬質な
−:刺激音・シャリついた・硬い以上、調べた限りではこんなところであろうか。言葉の解釈が足りなかったり間違っていたり、まだこんな重要な表現用語があるよといった場合は、こっそり教えていただければ幸いである。こっそり直すから。