IIT稲葉です。
前回、前々回のメールで、斉藤正章さんとのシストレ談義について書いてきました。そのシストレ談義の際に出てきた個別株式のシステムトレードで、実際に使えそうなアイデアについては、既に取りあげました。
つまり、
(1)空売りのシステムで、十数年間ワークし続けたテクニカル指標を見つけることは難しい
(2)逆張りの場合、大量にシグナルが発生したときには、非常に効果が高い
という2つのアイデアです。
斉藤さんからこの話を聞いて、後日、私自身も、手元にある検証用ソフトとエクセルを使って、この2つを確認してみました。
その結果、確かにその傾向はありました。
人から聞いたアイデアを、自分でも検証できるというのがシステムトレードの良いところです。これは、裁量トレードでは、なかなかできないことです。場合によっては、検証不可能なトレード手法もあります。
もしかしたら、あなたは、
「斉藤さんが既に検証済みのアイデアなのに、何でそれを自分でもわざわざ検証してるの?」と思われたかもしれません。
しかし、私は検証作業をしています。
これは、斉藤さんを信じていないとか、私が疑い深い性格である、という意味ではありません。「どんなシステムでも、自分に合っているかどうかを探ることが、大切である」と考えているからです。
システムトレードでよく言われている、「売買ルールさえ与えられたら、あとは誰がやっても同じ結果になる!」というのは、正しい部分も間違っている部分もあります。
システムトレードにおいて、「誰がやっても同じ結果になる!」というのは、簡単なことのようで難しいことです。
なぜならば、人によって、資金量・性格・リスク許容度が異なるからです。
その中でも、一番分かりやすいのが「資金量」です。
資金量に制約があると、トレードできる銘柄とトレード出来ない銘柄が出てきます。また、許容できる損失額も当然異なります。
そんなわけで、「売買ルールに合致した銘柄を、『全て』買い付けることが出来たときの、バックテスト結果は良好だった。」という話は、今一つ信用ができません。
現実的には、資金量に制約があるからです。
あなたにとって本当に大切なのは、「自分の資金量を考慮したバックテスト結果が良好だった。」ということです。
本来であれば、それが確認できない限り、そのルールに従ったトレードは、行うべきではありません。売買ルールよりも資金管理が大切なのは、こうした理由があります。
また、「性格」や「リスク許容度」の問題も無視できません。
どんなにバックテスト結果が有効であったとしても、あなたが心理的に耐えられない売買ルールであれば、それは、使い物にならない売買ルールだからです。
売買ルールや資金管理よりもメンタルコントロールが大切なのは、こうした理由があります。
優れたシステムトレード関連の本で、資金管理とメンタルコントロールについての記述が抜けているものを、私は知りません。
優れたシステムトレーダーは、その2つの要素が成功するために必要不可欠なものであるということを知っているからです。
多くのトレーダーにとって必要なのは、売買ルール・資金管理・メンタルコントロールが一体となっているノウハウです。
どれか1つでも欠けていれば、ワークしないと思います。そして、売買ルールについては、自分で検証できる環境が与えられていることです。
自分で検証して初めて、自分に合ったルールであるかどうかが分かるからです。
それがあって、はじめて良いシステムトレードの実践書になるのではないかと、私は考えています。
株システムトレード実践マニュアルはそれを踏まえた内容になっているが故に、各方面から高い評価を受けているとも言えます。
また当マニュアルはシステムトレードの良い面も厳しい面も踏まえて、斉藤さんの監修も受けて作られた、他では見られない、個別株式のシステムトレードの実践書です。
今回のメールでは、システムトレードの厳しい面ばかり指摘しましたが、それでも、裁量トレードよりは実践しやすいと私は思います。
過去のデータに裏付けられた有効性を基にトレードが出来るというのは非常に心強いです。
だからこそ、あなたも、私みたく、特段のトレードセンスがないと自覚しているのであれば、システムトレードを導入すべきなのだと私は思います。
(稲葉)