稲葉:先ほどの話で、順張りか逆張りか、基本的にはどっちかにつくという話になるので、順張りと逆張りについて幾つかお尋ねしたいと思います。逆張りのシステムは、勝率は高いけど1回当たりの利益が小さい、逆に順張りのシステムは、勝率は低いけど、うまくいったときの1回当たりの利益が大きいと一般的に言われています。
これらの特徴を踏まえて自分に合ったトレード手法を見つけるのが大事だと思うんですけど、斉藤さんはこの辺はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
斉藤:単純に言えば両方使えばいいんじゃないかと思うんですけどね。ただ、人に合う合わないでいえば、両方使う以外に、もう一つの方法として、勝率というのは調整できるんです。1回当たりの利益を大きくとろうとすると、勝率はどうしても低くなるじゃないですか。利益を最大化するんだったら、勝率は低いほうが本当にもうかるシステムになるんですね。
ただ、精神面を考慮した場合に、勝率が低過ぎると、勝率4割以下ぐらいのシステムだと精神的に厳しいと思うんですね。そういう意味では、勝ったときの利益は少なくなってしまうけども、勝率を5割ぐらいに調整したシステムを一つ別につくってみるのも一つの方法かなとは思います。
稲葉:なるほど。わかりました。『システムトレード実践マニュアル』では、逆張りのシステムを紹介していることになっているんですが、逆張りのシステムを構築する場合、損切りが大事でして、マニュアルでは1日で決済するという形で、1日の値幅というのが最大限のロスという形でそれに対応しているんですね。
逆張りというのは、下がったらまたシグナルが出て、下がったらまだシグナルが出るという形なので、どうしてもそこでロスカットの話が必要になってくるとは思うんですけど、斉藤さんは逆張りのシステムを運用する際には損切りはどう考えていますか。
斉藤:一トレードごとに勝った負けたというのはあまり重視していないので、トータルで勝てばいいという考え方で、要は統計的に有利なほうで損切りするだけなんですけども、逆張りの場合というのは、値幅で例えば5%、10%下がったら損切りというやり方だと、底値をとらえるわけではないので、損切りがどうしても多くなり過ぎるんです。
また買い直したりする方法もあるんですけども、どちらかといえば期間を定めて、例えば1日決済型もそうですし、1カ月なり2カ月なりという期間を定めて損切りする方法のほうが向いていると思っています。
稲葉:それは、過去の検証結果からそういうデータが得られたというところですか。
斉藤:そうですね。
稲葉:いま課題になっている部分でして、実は順張りのシステムも構築したいと考えていて研究中なんですけど、私が知っているあるシステムトレーダーが、順張りのシステムを構築するには、トレンドを認識するロジックを取り入れないといけないとおっしゃっていたんですね。
私自身が、トレンドを認識するロジックで思い当たるアイデアがこれといってないというのがあるんですけど、斉藤さんは何かこういうアイデアはお持ちですか。
斉藤:それに関しては、個別の株の場合なんかは特にそうなんですけども、トレンドを認識するロジックというと、例えば移動平均線の角度だったり、チャートそのものの角度だったりということも考えられると思うんですけども、株の場合は短期的には結局、指数に連動して動くだけじゃないですか。
長期で見たら確かに株価は銘柄ごとにばらばらに動くかもしれないですけど、短期、中期で見るとほとんど日経平均とかTOPIXに連動しているだけなんですよね。
そう考えたときに、単に個別のチャートを見てトレンドを認識するというロジックは、それほど有効性があるかどうかというのはちょっと疑問で、トレンドを認識するロジックを取り入れることよりも、現在の相場の状態に合わせてポジションを組む方法のほうが効果は高いと思うんです。
例えば、下げ相場のときは売りポジションのほうをふやして、上げ相場のときは買いのポジションをふやすといった方法ですかね。
稲葉:上げ相場と下げ相場を別途認識するロジックみたいなのはあるんですか。
斉藤:基本的には極端に言ってしまうと何でもいいんです。例えば40日の高値を更新している銘柄と40日間の安値を更新している銘柄の比率でもいいですし、それは極端に言えば何でもいいと思います。
稲葉:なるほど。そこは独自にロジックを取り組んで検証するべきだということですね。私もそうだと思います。ここは研究の参考にさせていただきます。
(続く)斉藤正章インタビュー 第二部 目次