稲葉:検証作業の話ですけど、検証作業で採用するテクニカル指標とかファンダメンタルズの指標について聞きたいと思うことが3点ほどあります。『システムトレード実践マニュアル』で書かれてあるルールというのは、購入された方は見ているからわかっていると思うんですけど、実は非常にシンプルなんですね。
いろいろ半年間ほど、テクニカルの指標をあれこれいじくってみたりした経験を踏まえた個人的な感想ですけど、テクニカル指標自体はシンプルなほうがいいんじゃないかと思っていて、あんまり凝り過ぎたテクニカル指標をいろいろ組み合わせて、こうすればうまくいくんじゃないか、ここと、ここと、ここを組み合わせればうまくいくんじゃないかとかというのをやってもしようがないのかなと思うんです。
斉藤さんは私なんかよりも検証作業を長くやられていると思うんですけど、この辺はどう感じますか。
斉藤:テクニカル指標というのは結局は、過去の株価を加工しただけのものにすぎないわけですね。だから、それをどう組み合わせてみたところで、有効な方向というのはなかなか出てこないわけで、簡単に言うと、テクニカル手法には、さや取りとか特殊なものを除けば、順張りと逆張りの2種類しかないじゃないですか。
だから基本は、トレンドにつくか、過剰に反応した株価の逆につくかの2種類しかないんですね。それをあれこれ組み合わせて難しくしたところで何にもならないという意味では確かに、指標をすごく難しく組み合わせても意味はないと思います。
もしも凝るんだったら、単体の手法そのものに凝るよりも、シンプルな複数の手法の相関性の低いものを組み合わせたり、もしくは資金管理の方法を工夫したほうがずっと効果は高いと思いますね。
稲葉:凝り過ぎて過去のデータにがちっとはめても、それが将来うまくいくという保証は全くないですからね。それよりも、幾つかシンプルなものを持っていたほうがいいのかなという、そんな感じですね。
斉藤:そうですね。
稲葉:実際のところ、斉藤さんはどのくらいのテクニカル指標を検証したんですか。システムトレードを始める前にという話ですけど。
斉藤:システムトレードを始める前にということですか。
稲葉:始めてからの検証作業の研究でも構わないですけど。
斉藤:複数の組み合わせというと、組み合わせでいうとほとんど無限大になってしまうので、全部やったかというとそうではないんですけども、単体の指標はほとんど試したし、ぱっと思いつく組み合わせは基本的に大体試したつもりです。
ただ、先ほど言った話と重なるんですけども、結局、手法というのは、現在発生しているトレンドの流れにつくことか、過剰に反応している株価の逆、例えば下げ過ぎたら買いとか、そういう方法以外は有効性は特に見出せなかったですね。
稲葉:そうすると、本にいっぱい出ているテクニカル〔事典?〕みたいなところを、プログラムで組める範囲内で組んでみたけど、結局、落ちつくところは、トレンドに乗るか、急落した銘柄を買うかというそこに尽きるから、あんまりいじくっていたりしてもしようがないのかなというところですか。
斉藤:そうですね。パラメーターを数字を変えてあれこれいじっても、結局あまり意味がないんですね。確かに銘柄によって癖が違うので、銘柄ごとに多少調整するのは正しい方法とは思うんですけども、過剰にその銘柄にぴたりと合うようにパラメーターをいじくっても、それが将来も同じように動くかどうかはちょっと疑問なところです。
稲葉:わかりました。幾つか聞いてほしいみたいな話が来ていたので聞いてみるんですけど、ファンダメンタルズの指標は、ミクロの指標だと例えばPERとかPBR、マクロの指標だとGDPとか工業生産指数とか、そういったものがあるかと思うんですけど、ファンダメンタルズの指標はシステムの構築の際に考慮はしていますか。
斉藤:システムの中には全くファンダメンタルは考慮されていないですね。システムで扱っているのは4本値(四本値)と出来高だけです。実際にトレードに参加するときという意味では、例えば大幅な下方修正を発表したばかりの銘柄を避けたりとか、参考程度に見るくらいということですね。
稲葉:じゃあ、ベーシックにあるのはテクニカルの指標で、あとはプラスアルファとして補足という意味で見るときもあるというぐらいですね。
斉藤:はい、そうです。
(続く)斉藤正章インタビュー 第二部 目次