慈恵病院(熊本市)が昨年5月に赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)を設置したのを機に、市が開設した24時間妊娠相談電話の相談件数が減っている。赤ちゃんポストで注目を浴びた相談ニーズに、今後、どう応えていくか。市は模索を続けている。【結城かほる】
昨年度寄せられた相談は約11カ月間で732件。今年度は8月末までの5カ月間で206件だった。期間を区切って集計した月平均相談件数は89件(昨年5~8月)▽58件(同9~12月)▽49件(1~3月)と下降線をたどり、今年4~6月は月39件に減った。
だが、市地域保健福祉課の今坂智恵子課長は「ニーズが減っているわけではない。本当に必要な人に相談電話が知られていないのでは」と話す。市報などに電話番号を載せると、一時的に相談が増えるためだ。
「生活が苦しく育てられないのに妊娠してしまった」「中絶できる病院を教えてほしい」「出産費用が払えない」--。さまざまな相談が寄せられるが、約6割は保健師らが丁寧に話を聞くことで、生活や育児の不安などの悩みを、本人が自分なりに解決できた。
一方で、他の機関や市の担当課に対応を引き継ぐケースも1割以上ある。相談電話を担当する市福祉総合相談室の辻健吾室長は、これらのケースを通して「市の施策の充実に生かしていくこと」を2年目の課題に挙げる。
そのためにも、より多くの相談を受け付け、正確なニーズをつかむ必要がある。相談室は、1年間の利用実態から相談電話の周知の方法を変えることにした。大勢に訴えるポスターをやめ、必要な人が必要な時にすぐ電話できて目立たない名刺サイズのカードによるPRに特化した。
相談者の年代は20代が46%と圧倒的で、次いで30代の23%。市が多いと見込んだ10代は21%だった。このためカードの設置場所を、ドラッグストアやコンビニ以外に、スーパーや美容室など、20~30代の女性の立ち寄りが多い場所を加えた。
今坂課長は「相談を一つ一つ積み重ね、集約できた問題点から施策に生かしていきたい」と話す。
相談電話の番号は、096・353・7830。県の相談電話は096・381・4340、慈恵病院0120・783・449。【結城かほる】
毎日新聞 2008年9月5日 地方版