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2008年07月24日

旅ゆけば(後編)

死ぬのはやつらだ氏、闘うリベラル氏、私の3名が、潜伏していた某居酒屋を抜け出したのは午後8時過ぎのことであった。すでにとっぷりと暮れているが、大気中にたっぷり湿気を含んだ静岡の街を、我々は闇夜にまぎれながら泳ぐように目的地を目指す。関係ないけど、作務衣みたいな制服を着た店員のいるジャズ(有線)がBGMの居酒屋ってのは、たいがいハズレである。
さて我々の目的地はかつて連合赤軍の兵士だった植垣康博氏が営むスナック「バロン」である。シラフではおそろしくて近寄ることもできない場所だ。夕方、浅間神社へ行く途中に所在地だけは確認しておいたので、徒歩5分ほどで迷わず店の前へ到着する。さっきの作務衣居酒屋まではハイ・テンションだったやつらだ氏も、ここに来てさすがに口数が少なくなっている。

それでも勇気を振りしぼって、我々は半畳ほどの狭いエレベーターに身を寄せ合うように乗り込み、意を決したようにやつらだ氏が4階のボタンを押す。4階フロアを占有するスナック「バロン」は、エレベーターを降りてすぐ左手に入口があり、我々は吸い込まれるようにその中に入った。間口は狭いがウナギの寝床のように奥行きがある。マリンブルーを基調とした店内は、思っていたよりずいぶんと明るかった。

「いらっしゃいませー」カウンターの中で忙しく立ち働いていたショートカットの女性が振り返り、にこやかな笑顔で我々を迎えてくれた。我々はやや拍子抜けしながら、おずおずと止り木に腰をおろす。カウンターには先客が2名いたが、カンジンの植垣氏はまだ出勤していないようだ。ショートカット女史によると、今日は植垣氏が所属する地元市民団体の主催による映画『靖国 YASUKUNI』上映会が市内で行われたので、マスターは少し遅れるとのこと。それならばと焼酎(二階堂)のボトルを入れ、のんびり飲みながら待つことにする。大ぶりの鉢に盛られた、タカノツメを散らしたメカブと山芋千切りのお通しがウマい。

やがて上映会帰りの客が三々五々集まって、店内がにぎやかになってきたところで「やーやー、どーもどーも」とスキンヘッドの植垣氏登場。全身から不思議なオーラを放つ、実にエネルギッシュな方である。常連やナジミの客を差し置いて、いきなり押し掛けたヨソモノが繰り出すブシツケな質問にも、身振り手振りを交えてニコニコと答えてくれる植垣氏に我々は感激し、心の底から「来て良かった」と思うのであった。詳細は死ぬのはやつらだ氏の記事をご覧ください。やつらだ氏同様、私も細かい内容までは書かないが、植垣氏が披露してくれた当時のエピソードをひとつだけ紹介する。

山岳ベースで処刑したある同志を埋葬するため、戸板にのせた遺体を数人がかりで担いで運んでいる最中、足場が悪い上に殺伐とした空気の重圧に耐えかねた植垣氏が「これなら上の方が楽だよな」というジョークを放ったところ、誰も笑わなかったそうだ。一連の事件を肯定するわけではないが、その話を聴いて私はいくらか救われた思いがした。やはり「笑い」という要素は人間には不可欠で、いくら不謹慎でも「笑い」を忘れてしまったらダメなのだ。私は連合赤軍事件のほんの一部の資料や関係著作を読んだに過ぎない。それでも何となく植垣氏はメンバーの中でも群を抜いてユーモア感覚に富んだ人ではないかと想像していたのだが、その私の読みは当っていた。

それにしてもこのエピソードについて改めて考えてみると、硬直した空気に支配され「怒り」ばかりが突出しているいまの時代に通じるような気がする。笑う努力を忘れてはいけない。不謹慎だろうが何だろうが、すべてを笑いのめせ。この姿勢が肝心なのではないだろうか。さて深夜1時を過ぎて最後の客が帰ったのを見計らい、そろそろ我々も引き上げることにする。私は持参した植垣氏の著書にサインを頂戴し、最後にガッチリと握手をして別れた。マスターの両手は、とにかく分厚くて、そして温かだった。



(追記)山本直樹のマンガ『レッド』の2巻を本日購入した。ページを開いてヒトコマ目に登場する「岩木泰広」のモデルは、もちろん植垣康博さんである。
Posted by やきとり at 23:30│Comments(6)TrackBack(0)雑談

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http://ch10670.kitaguni.tv/t594680
この記事へのコメント
>作務衣みたいな制服を着た店員のいるジャズ(有線)がBGMの居酒屋ってのは、たいがいハズレである。

これには、大声で、異議なしっ!!!
そもそも、居酒屋にBGMなんぞいらないのである。
もしあるとすれば、乾電池のラジオから流れる国営第1であってほしい。
そういえば、バロンの店内にもBGMはなかったよなぁ? 違ったっけ?

>笑う努力を忘れてはいけない。不謹慎だろうが何だろうが、すべてを笑いのめせ。この姿勢が肝心なのではないだろうか。

あの騒動も、笑いはなかったなぁ。不愉快な嘲笑だけが延々と続いている。
Posted by 死ぬのはやつらだ at 2008年07月25日 08:35
バロンは有線かかってましたよ(笑)。ただ、演歌、60年代ポップス、イージーリスニングがコロコロ入れ替わる、
CDプレイヤーで言うと「ランダム設定」みたいな選曲でした。植垣さんの好きなはずのベートーヴェンが掛っていなかったのは、
「スナックのマスター」としてのプロ意識の現れなのかなあと、ベロンベロンになる前にチラッと思いました(笑)。

あと、どんな局面でも「笑い」が亡くなったらオシマイですな。でも、あいだみつをとか笑点みたいな「笑い」はムカつきますが(笑)。
Posted by やきとりやきとり at 2008年07月25日 22:38
>あの騒動
実は影でクスクス笑っておりました。当人が聞いたら怒り狂うかも知れませんが、私のような弱虫から見ると、死ぬのはやつらださんとjabberwockさんて物凄く似てるんですよね。どちらも「戦う騎士」タイプ。ああ、似た者どうしがいがみ合って一歩も引かない、そう思うと、何だか笑ってしまうんです。私自身は既に騒動から離れた身なので、「気が済むまでやれば良いんじゃないの」と無責任この上なく笑えます。

まあ実際にはどうだか分かりませんけどね。直接に二人を知ってる人っているのかなあ。やきとり同志はやつらださんと飲んだことがあり、私はjabberさんと飲んだことがある。そして、私とやきとりさんは「同志」である。この不条理は、やっぱり笑えます。あいにく私とjabberさんは疎遠になってしまったけど、一緒に飲んだ一晩は本当に楽しかったし、また一緒に飲みたいものだと今でも本当に思う。ちなみに、私とjabberさんが「機会があれば是非DoXさんとも一緒に飲みたいものだ」と意気投合したというのは嘘のような本当の話。
Posted by 非国民非国民 at 2008年07月25日 23:44
>死ぬのはやつらださんとjabberwockさんて物凄く似てるんですよね。

うぎゃー!

そうなのか???

音楽の趣味は似ているな。


俺は、いつでもジャバ夫と飲む気はあるよw

ただ、向こうがタンポポブログで「億千万分の一もありえない」って言ってたなぁw

俺はゼンゼンOKでんねん。
Posted by 死ぬのはやつらだ at 2008年07月26日 08:15
>同志
第三者を巻き込んだ代理戦争から発展し、全員が何のためにヤリ合っているのかすら分らなくなっているという感じですかね。
「互いの言葉の揚げ足取り合戦」であり、それじゃお互いムダに疲弊するだけだし、しかも永久機関に突入して終りナシと。
私の見解としては「ケンカは当人同士でやってくれ」の一語に尽きるのですが、そんな言葉は無意味なくらい遠い所に来て
しまったようだし、うーん、誰も得してないのになあ。それとも「揉めごと」そのものを楽しんでるヤツがいるのかなあ . . .?
それはそうと、我々も「京葉北国共闘」もしくは「毒物北国共闘」でも結成しますか!?(笑)

>やつらだ兄
まあまあ兄さん、クールダウンしてくださいな〜(笑)。
Posted by やきとりやきとり at 2008年07月26日 20:35
ここで提案。

非国民さんと、やきとりさんと、俺とで飲み会ってどうよ?

まじめなお誘いです。

よろしくご検討ください。
Posted by 死ぬのはやつらだ at 2008年07月27日 00:00