沙希
06/28(土) 11:57 IP:218.220.58.80 削除依頼 あなたが大好きです。
* レモンティーとわたしの絵
NO.1 沙希
06/28(土) 11:59 IP:218.220.58.80 削除依頼 - はじめまして。沙希と申します。
短編小説は初めて書かせていただきます。
目標は書き終える事!
更新は遅いですががんばります。
それでは、お楽しみくださいませ。
*レモンティーとわたしの絵
NO.2 沙希
06/28(土) 12:01 IP:218.220.58.80 削除依頼 - *キャスト
*森見 蓮 Ren Morimi
*相川 奏汰 Souta Aikawa
NO.3 沙希
06/28(土) 12:06 IP:218.220.58.80 削除依頼
中肉中背、成績も中ぐらい。
性格も特に明るくなく、友達だって1人も居ない。
唯一の特技だって誰一人として知らない。
わたし、森見蓮は
とにかく暗い。
NO.4 沙希
06/28(土) 12:12 IP:218.220.58.80 削除依頼
だけど、根は明るい。
ただ、クラスの中に合う人がいないだけなのだ。
* キーンコーン...
朝のHRの時間を告げるチャイムが鳴った。
「きりーつ」 「れーい」 「ちゃくせーき」
どこか間延びしただるそうな声。
「おはよう」
担任の村上先生が言った。
NO.5 沙希
06/28(土) 12:16 IP:218.220.58.80 削除依頼 村上先生は、生徒に人気がある先生だ。
怒ると怖いが、冗談が通じる先生だった。
「今日は席替えするぞー」
そのことばを聴いた瞬間、歓声があがった。
席なんて、どこでも同じ。
そう思っているのはわたしだけだと初めて知った。
わたしはくじを引いた。
NO.6 沙希
06/28(土) 12:37 IP:218.220.58.80 削除依頼
紙には17と書いていた。
前の黒板で、場所を確認する。
「えーっと17は...」
あった。
教室の1番すみっこ。
落書きとかし易そうだよなー、なんて
「はい、じゃあ移動してー」
先生の声が聞こえた。
とたんに、周りが一斉に立ち上がった。
わたしもその1人だ。
NO.7 沙希
06/28(土) 12:48 IP:218.220.58.80 削除依頼
席の場所に移動した。
案外、快適かもしれない。窓際だし。
まだ、全員移動していなかったので空を見ていた。
空を見るのは好きだ。
今度、絵でも描いてみようか。
そんなことを考えていたときだった。
突然、肩をたたかれた。
NO.8 沙希
06/28(土) 13:06 IP:218.220.58.80 削除依頼
「えっ?」
思わず声を出してしまった。
このクラスの中には、わたしに声をかけてくる人なんて
居ない、と思っていたからだ。
恐る恐る振り向いた。
その先に立っていたのは、相川奏汰。
クラスの中心グループに属しているはずだ。
そんな人がどうしてわたしなんかに?
疑問はすぐに解けた。
「俺、森見さんの隣なんだ。 よろしく」
そう言って、にこっと笑った。綺麗だな...
「あ、よろしく…」
久しぶりに、この教室の中で話した気がした。
キーンコーン...
「じゃあ、一時間目の用意しておけよー」
先生の声が、遠くで聞こえた気がした。
NO.9 沙希
06/28(土) 22:02 IP:218.220.58.80 削除依頼
席替えしてから、一週間がたった。
相川君はいつも話しかけてくれる。
まぁ、授業中にも話しかけてくるわけだけども。
だけど、とても楽しかった。
「ねぇ、森見さん」
それは昼食の時間。
いつもどうり、笑顔で相川君は話しかけてきた。
「俺らと一緒に飯食わねぇ?」
「…えっ?」
すこし、迷った。
相川君は、いつもクラスの中心の人と食べている。
わたしには馬が合いそうにないような気がしたからだ。
NO.10 沙希
06/28(土) 22:08 IP:218.220.58.80 削除依頼
「うーん…」
迷っていたときだった。
「森見さーん」
聞きなれない声が、少し離れたところから聞こえた。
声をかけてきたのは、相川君と仲がいい人たちだった。
「一緒にたべようよー! ご飯は皆で食べるほうがおいしいって言うしさー」
よくみると、仲には女の子も数人いた。
みんな、笑顔だ。
「どう? 一緒に食べる気になった?」
相川君は笑顔で言う。
「あいつら、いいやつだよ」
わたしは、その言葉を信じた。
「じゃあ、一緒に食べようかな」
NO.11 沙希
06/28(土) 22:09 IP:218.220.58.80 削除依頼 - 10
× 仲には ○ なかには
です。すいません(´・ω・`)
NO.12 沙希
06/28(土) 22:15 IP:218.220.58.80 削除依頼
わたしは、恐る恐る輪の中に入った。
「わーい! 来てくれたー」
「よっしゃー!!」
みんな、本当に嬉しそうに言ってくれた。
いい人ばっかりなのかも、そう思った。
「わたしねー、1回でいいから森見さんと話してみたかったの」
梓と名乗った女の子はそう言った。
「どうして?」
「だってねー、優しそうだし、
なんとなく性格合うような気がしてたから!」
少し、嬉しかった。
NO.13 沙希
06/28(土) 22:21 IP:218.220.58.80 削除依頼
それからは、毎日一緒に昼食をとった。
みんな良い人で、優しくて、面白かった。
相川君とは、もっと仲良くなった。
わたしは、この時初めて
恋をしたのかもしれない、と思っていた。
昼食が終わって、みんなはグラウンドに行った。
わたしは行かなかった。
どうしても、絵が描きたかったのだ。
ふと、何気なくグラウンドを覗いた。
相川君が、すぐさま目にはいって、
すごく、すごく綺麗だと思った。
いつか、相川君を描いてみたい。
そんな事を思いながら、空の絵を描いた。
NO.14 沙希
06/28(土) 22:26 IP:218.220.58.80 削除依頼
グラウンドから戻ってきた相川君が、
わたしの描いた絵を覗いて言った。
絵を見られるのは恥ずかしかったし、
今まで、見せた事がなかった。
「うわ! すごい! 綺麗!!」
まるで、宝物を見つけたときの子供のように、
相川君は、目を輝かせていた。
「森見さんって、絵うまかったんだね」
わたしは少し、頬をそめた。
ほめられたのは久しぶりだ。
「ありがとう」
「あっ! そうだ」
何かを思いついたように、相川君は言った。
NO.15 沙希
06/28(土) 22:37 IP:218.220.58.80 削除依頼
「こんどさ、テストあるじゃん。
一週間後ぐらいに」
「うん」
「もし、そのテストで俺のほうが点数よかったらさ、
俺のために絵描いてくれる?」
びっくりした。
相川君は、それほどまでにわたしの絵を気に入ってくれたのだろうか。
思わず、笑みがもれた。
「うん、いいよ。
じゃあさ、もしわたしの方が点数よかったら
ひとつ、お願いきいてくれる?」
相川君は、満面の笑みで言った。
「もちろん!」
「じゃあ、約束ね」
わたしたちは、小指を絡めて指きりげんまんした。
NO.16 沙希
06/28(土) 22:52 IP:218.220.58.80 削除依頼
その日から相川君は授業中、話しかけてこなくなった。
それは少し寂しかったのだけれども、授業は真面目に聞くべきだ。
なにより、相川君が必死に勉強している。
テストが近いせいだろうか。
それとも、約束のせいだろうか。
どちらにしろ、必死に勉強している相川君が
なんだか、新鮮だった。
昼休み。
昼食もとり終え、ひと休みしていた時だった。
「森見さん、ちょっといい?」
「いいけど相川君、どうしたの?
みんなグラウンド行ったよ?」
いつもなら、相川君が一番嬉しそうにグラウンドに行っていたのに、
何だか変だ。
「あーうん。
でもさ、どうしてもここ、分かんなくて。
教えてもらってもいい?」
言いながら、相川君が取り出したのは
数学の教科書だった。
NO.17 沙希
06/28(土) 22:57 IP:218.220.58.80 削除依頼
「いいけど、わたしもあんまり分からなかったりするよ?」
なんて言ったって、相川君とわたしは、
成績はさほど変わらない。
「いいよ。全然」
そう言って、相川君は教科書をぱらぱらめくった。
それから、予鈴がなるまで
わたしと相川君はずっと勉強していた。
チャイムの音が聞こえたとき、相川君は
「ありがとう。
すっげー助かった!」
そう言って、自分の席に戻った。
とは言っても、隣なのだけれども。
NO.18 沙希
06/28(土) 23:03 IP:218.220.58.80 削除依頼
次の日、相川君から
メールアドレスと電話番号の書かれた紙をもらった。
「いつでもメールしてね」
と言ってくれたが、わたしは自分からメールを送るのは滅多にない。
いつも一緒に昼食をとっていた梓ちゃんをはじめ、
みんなにもメールアドレスを貰ったのだけれども
未だに自分からメールは送らない。
わたしは、その人と直接会って話すのが好きだからだ。
そりゃあ、メールだっていい所はある。
だけど、やっぱり声を聞いて話したい。
そうは思いつつも、相川君からもらった紙を
大事に大事にしまった。
少し、いや、かなり嬉しかったのかもしれない。
NO.19 沙希
06/28(土) 23:10 IP:218.220.58.80 削除依頼
テスト三日前になった。
教室の中は、どことなく緊張感が漂っている気がする。
唯一グラウンドに出れる昼休みも
教室の中で勉強している人が増えた。
わたしたちのグループもそうだった。
わたしは、もう立派なグループの一員で、
みんなに話したい事もいっぱいあった。
たぶん、みんなもそうだったと思う。
だけど、まわりの雰囲気につられて、みんな必死に勉強していた。
最近になっては、誰からもメールは来なかったけど、相川君は例外だった。
逆に、メールの来る量が増えた。
だけど、内容はそろって勉強についてだった。
そこまで迷惑だとは思わなかった。
質問に答える事で、自分に確認できて、勉強になった。
NO.20 沙希
06/28(土) 23:18 IP:218.220.58.80 削除依頼
テスト前日の夜。
わたしは、テスト前の夜は勉強しない事に決めていた。
ゆっくり休める事も大事だと考えているからだ。
そのとき、メールの着信音がなった。
あけてみると予想通り、相川君からだった。
『明日、がんばろうな』
それだけだったけど、凄く嬉しかった。
『うん。がんばろうね。 おやすみ』
それだけ送って、少しはやかったが
もう、寝る事にした。
NO.21 沙希
06/28(土) 23:30 IP:218.220.58.80 削除依頼
いざテストが始まると、携帯がぴたりと鳴らなくなった。
学校でも、殆ど口を利かなかった。
そんな余裕がなかったのかもしれない。
だけど、やっぱり少し寂しかった。
テスト最終日。
三時間目にあった国語を、無事に終えた。
ふと辺りを見回すと、みんな伸びをしたり
少し近くの人と喋ったり、前までの緊張感が嘘のようだった。
相川君はというと、欠伸をしていた。
それを見て、わたしは少し笑った。
相川君は、わたしの笑い声に気づいたようで
わたしの方に向き直って言った。
「はは、見られたか」
やっぱり、相川君の笑顔は綺麗だ、と改めて思った。
「どう? わたしに勝てそう?」
冗談交じりに聞いてみた。
すると相川君は、
「うーん…。 すっげぇ微妙なとこ、かな」
と、やっぱり笑いながら言うのだった。
NO.22 沙希
06/28(土) 23:51 IP:218.220.58.80 削除依頼
次の日、テストが終わったから相川君からメールも来るか、と思っていたが
こなかった。
ほかの子...、特に梓ちゃんからはよくメールが来た。
話が合うので、とても楽しかった。
気づくと相川君の事を忘れて、メールを楽しんでいた。
梓ちゃんとのメールを終えた後、すこし気になった。
わたしは相川君のことをどう思っているのだろう。
少し前、好きかもしれないと思ったが
なにか違う気がする。
どれだけ考えても、答えは出なかった。
だけどまぁ、そのうち気づくだろうと思ったので
今日は寝る事にした。
明日は、テストの結果が返ってくる。
NO.23 沙希
06/29(日) 00:05 IP:218.220.58.80 削除依頼
そんなに大きな約束をしたわけでもなく
本当に些細な約束をしていただけなのに、わたしはすごく緊張していた。
朝。学校には一人で行っている。
教室の、少し思いドアをあけた。
「おはよう」
相川君が言ってくれた。
「おはよう。とうとう今日だね」
わたしはそう言って、席に着いた。
一時間目は学級活動のじかんだ。
この時間に、テスト結果の紙が渡される。
それは点数が書いてあるだけで、解答用紙は格時間に返す事になっている。
「あー、どきどきする」
相川君が、そう言った。
「だよね」
わたしは答えた。
キーンコーン...
チャイムが鳴った。
NO.24 沙希
06/29(日) 14:57 IP:218.220.58.80 削除依頼 - 23
× 思い ○ 重い
× 格時間 ○ 各時間
です。すいません(´・ω・`)
NO.25 沙希
06/29(日) 15:04 IP:218.220.58.80 削除依頼
ガラッ
村上先生が入ってきた。
「きりーつ」 「れーい」 「ちゃくせーき」
やっぱりどこか間延びした声で朝が始まる。
「よーし、テスト結果返すぞー」
教室の中がざわめきだした。
相川君は、静かに前をむいている。
テスト結果が、全員に行き渡った。
わたしは500満点中、386点だった。
相川君は…どうなんだろう。
だけど、今は聞けない。授業中だからだ。
横を見てみると、やっぱり静かに前をむいていた。
チャイムが鳴るまでが、とても長く感じた。
NO.26 ミズリ
06/29(日) 15:05 IP:58.87.149.128 削除依頼 - ネク(^ω^)
NO.27 沙希
06/29(日) 15:10 IP:218.220.58.80 削除依頼
キーンコーン...
待ちくたびれたチャイムの音。
わたしはすぐさま相川君に向き直った。
「相川君、どうだった?」
相川君は、わたしの声に気づくと
「予想どうり、すっげぇ微妙」
と、笑いながら言った。
「ところでさ、森見さんの言う
お願いって、何?」
と、好奇心むき出しの笑顔で問いかけてきた。
「えっとね…」
言うのは少し、恥ずかしい気がした。
だけど、声を絞り出して、言った。
「わたしね、相川君の絵が描きたいの。
だから、その許可が欲しかったの」
相川君は、照れくさそうに笑った。
NO.28 沙希
06/29(日) 15:12 IP:218.220.58.80 削除依頼 *ミズリさま
ネクありがとうございます^^ 励みになります!
NO.29 沙希
06/29(日) 15:17 IP:218.220.58.80 削除依頼
「じゃあ、せーので見せようか」
相川君の提案に、わたしは迷わず乗った。
「「せーのっ」」
掛け声にあわせて、紙を見せた。
相川君は…380点。
「あー! ちょっと負けた!!」
相川君は、ほんとうに悔しそうに言った。
「あんなに勉強がんばってたのにね」
「ほんとだよなー、まったく」
「じゃあ、許可もらってもいい?」
相川君は、笑顔で
「わかった、いつでも描いてくれ!」
と、おどけた調子で言った。
嬉しかった。
NO.30 沙希
06/29(日) 15:25 IP:218.220.58.80 削除依頼
「れーんーー!」
少し離れたところから、梓ちゃんの声が聞こえた。
気づくとわたし達は、とても仲良くなっていた。
「点数どうだった?」
と、興味津々で聞いてきた。
「386点だったよー」
と言うと、梓ちゃんは満面の笑みで
「やったー! 勝った!!」
と言った。
「何点だったの?」
「えへへー 438点!!」
聞いた瞬間、とても驚いた。
「すっごーい! 梓ちゃん、頭いい!」
聞いた梓ちゃんは、笑顔でどこかに行ってしまった。
「すげーな、アイツ」
と、横で会話を聞いていたらしい相川君が言った。
わたしは頷いた。
NO.31 沙希
06/29(日) 15:32 IP:218.220.58.80 削除依頼
お昼休み、相川君もみんなと一緒にグラウンドへ行った。
わたしは相変わらず、教室で絵を描いていた。
だけど、今日は少し違う。
わたしの視線の先には、相川君がいた。
許可をもらった、と思えばすぐに描きたくなったのだ。
うまく描けるか、すごく心配だった。
モデルになってもらったからには、出来上がった作品は
見せないといけない。
キーンコーン...
「え、もう?」
思わず呟いてしまった。
それほどに、描くのが楽しかったのだろうか。
今日はこれまで。
そう思うと、寂しくなった。
「もっと描きたいなぁー…」
また、声に出してしまっていた。
NO.32 沙希
06/29(日) 15:39 IP:218.220.58.80 削除依頼
わたしは、毎日昼休みに、絵を描きすすめていた。
一度、相川君に
「下絵でいいから、見せてよ」
と、笑顔で迫られたのだけど、今回ばかりは断った。
「完成してから、見せたいの」
と、笑顔で返すと
「そっか。楽しみにしてる!」
そう言っただけだった。
とうとう、着色に入っていた。
着色は、一番好きだ。 とにかく楽しい!
グラウンドでは、みんなでバスケットボールをしていた。
気づくと、色を塗る手が止まっていた。
やっぱり、綺麗だ。
今まで相川君ばかり見ていたが、みんな綺麗だった。
自分が、あのグループにいるのが嘘のようだった。
と、とたんに嬉しくて、笑みがこぼれた。
やっぱり、一人で居るのも楽しいな。
NO.33 沙希
06/29(日) 16:14 IP:218.220.58.80 削除依頼
だけどやっぱり、みんなでいる方がいい。
そう思った。
「相川君っ」
朝一番、教室に入った途端に声をかけた。
「おー、おはよう」
笑顔で相川君は言った。
「おお、おはよう!
あのね、絵が出来たの!!」
わたしはすっかり舞い上がっていた。
昨日、家に帰ってから
梓ちゃんの遊ぼう、という誘いを断ってまで色を塗っていた。
とても楽しくって、気づくと
いつも寝る時間を一時間程オーバーしていた。
「おお! すげぇはやい! もう!?
見せて見せて」
相川君の声を聞きつけて、何事かとみんなが集まってきた。
「なになにー? 蓮ちゃん、絵描いたの?」
グループの一人の、中澤君が言った。
NO.34 沙希
06/29(日) 16:21 IP:218.220.58.80 削除依頼
「そうだよ! 俺がモデル!!」
と、相川君が誇らしげに答えた。
「じゃあ、見せるね」
みんなに見せるのは、少し恥ずかしかった。
「あんまり上手くないけど…」
そう言いつつ、スケッチブックを開けた。
「「おおー!!」」
みんなが声をそろえて言った。
バスケットボールをしている相川君が、シュートした瞬間の絵。
けっこう、上手く出来たと思ってはいる。
「…すっげぇ」
相川君は、声にならないような声で言ってくれた。
「ありがとう」
恥ずかしかったけど、すごく嬉しかった。
「ねぇ森見さん。
いや、蓮って呼んでいいかな」
すこしびっくりしたが
「あ、うん。いいよ」
と答えた。
NO.35 沙希
06/29(日) 21:05 IP:218.220.58.80 削除依頼
「じゃあ、蓮」
「なに?」
「この絵、ちょうだい」
これには、すごくびっくりした。
だけど、動揺を隠して答えた。
「…いいよっ。 相川君が欲しいんなら。
あげる」
わたしは笑顔で言った。
相川君の表情は、みるみる変わっていった。
少し、面白いと思ったのはここだけの話。
「まじで!? ありがとう!」
相川君は、それは嬉しそうだった。
「よかったなー、奏汰!」
「よかったねー」
と、中澤君や梓ちゃんが言った。
「ほんとありがとな、蓮」
満面の笑みでそう言われたので、
「どういたしまして」
わたしも、満面の笑みで返した。
NO.36 沙希
06/29(日) 22:06 IP:218.220.58.80 削除依頼
放課後。
教室には、わたし達しか居なかった。
みんなで他愛もない事を話しているとき、一つ引っ掛かる事があった。
勇気を振り絞って聞いてみた。
こういうとき、普通に聞ける人が羨ましく思う。
「ねぇ相川君?」
相川君は、中澤君と話している最中だったのだけれど、
わたしの話を聞こうとしたためか、向き直ってくれた。
「なに? 蓮」
「どうして、わたしに話しかけてくれたの?」
言い終わってから気づいたが、みんなわたしの言葉に
耳を傾けていた。
「えっ?」
ああ、さっきのわたし言葉足らずだったかも、とか
いきなり聞かれたってビックリするよな、とか
そういう事が頭に浮かんだ。
だけど、やっぱり気になるので、相川君の事をじっと見た。
NO.37 沙希
06/29(日) 22:17 IP:218.220.58.80 削除依頼
「聞きたい?」
「聞きたい」
相川君は笑って言ったが、わたしはこの時、真顔だったと思う。
「わかった」
みんなはもう、話に聞き入っていた。
相川君の声が教室に響く。
わたしは、ずっと相川君のことを見ていた。
「俺らね、蓮のこと本当は明るい奴なんじゃないかって話してた」
彼はまるで、うまく言えないというような顔をした。
「で、チャンスがあったら話しかけようって言っててさ」
少し間をおいて、また話し出した。
「で、今回の席替えでチャンスが来たってわけ」
最後は笑って言った。
「…りがとう」
「えっ? 何て?」
わたしは勇気を出した。
「ありがとう!!!」
たぶん、顔が赤かったと思う。
だけど、誰もそんな事を気にした様子もなく
あったかい、笑顔だった。
NO.38 沙希
06/29(日) 22:25 IP:218.220.58.80 削除依頼
「ところでさ、あたしたち…」
と、梓ちゃんが言った。
梓ちゃんは、中澤君のほうを見ている。
どうかしたのだろうか。
梓ちゃんと中澤君は、目を見合わせてうなずいた。
「あたし達ね、付き合いだしたの」
いつもの活発でサバサバしている梓ちゃんみたいじゃなく、
この時はすごく女の子らしかった。
みんなが、わっと盛り上がる。
「おめでとう」
そんな声が飛び交っていた。
梓ちゃんと中澤君は、すごく嬉しそうな笑顔だった。
「いいなぁー」
そう呟いたのは、誰かに聞こえていたのだろうか。
NO.39 沙希
06/29(日) 22:39 IP:218.220.58.80 削除依頼
その日の夜。
梓ちゃんからメールが来た。
『蓮はさぁ、好きな人とか居ないの?^^』
開けた途端、びっくりして閉じてしまった。
落ち着いてからまた開けて、返事を打った。
『えー。いないよ、全然|ω・`)
どうして?』
いつもは使わない顔文字も、動揺していたのか
気づくと使っていた。
梓ちゃんからの返事は早かった。
『今日話してた事思い出してね。気になって^^
いきなりこんな事聞いてごめんね。
じゃあ、おやすみ』
わたしは、『好きな人』と聞かれて
『相川君』が頭に出なかった事を今、気づいた。
NO.40 沙希
06/30(月) 14:58 IP:218.220.58.80 削除依頼
てことは、友達としか思ってないってことか。
わたしは、一人で納得した。
朝。
いつもどうり、一人で登校中、
「おっ、蓮じゃん!」
相川君と会った。
「おはよー」
「おはよ。 お前、いつも一人で来てんの?」
「うん。そうだよ。
でも、相川君も一人じゃんかー」
わたしは笑いながら言った。
「いや、今日は徹、休みだから」
徹って確か…、中澤君だ。
「中澤君、どうしたの?」
相川君は、少し溜めてから
「気になる?」
からかう様な笑顔でそう言った。
「気になるよ、友達だもん」
わたしがそう言うと、
「そっか、そうだよな、うん」
と、ひとりで頷いていた。
NO.41 沙希
06/30(月) 16:08 IP:218.220.58.80 削除依頼
「アイツね、熱あるんだって。しかも高熱」
わたしには、いつも元気な中澤君が
熱が出た、なんて信じられなかった。
「へぇー。大変じゃん。高熱って、何度くらいなの?」
「40度近いとか言ってた」
驚いて、足をとめてしまった。
前日に、中澤君が言っていた。
『俺の両親、今海外行ってるんだぜー。 この俺を残して! しかも、帰ってくるの3日後なんだってさ』
ちょっとやばいのでは、と思い聞いてみた。
「お…親御さん、看病してるんだよね?」
相川君は、笑って
「んなわけねぇじゃん。海外行ってるって話、聞いてなかったっけ?」
そう言った。
「あ、相川君…」
「ん? どした?」
「それって、すごくやばいんじゃない?」
「…ははっ。やっぱり?」
相川君は、苦笑いで答えた。
NO.42 沙希
06/30(月) 16:17 IP:218.220.58.80 削除依頼
「うーん」
とは言ってもどうしたものか。
わたし達はこれから学校だ。
「俺、今日サボって徹の家に行く事にする」
相川君が切り出した。
出来る事なら、わたしもそうしたかった。
だけど、サボる勇気なんてわたしには無い。
ごめんね中澤君、相川君。
「…あたしは、学校帰りに中澤君の家による。事にする」
「そっか。じゃあ、ここでお別れだ」
相川君は、表情を変えずに言った。
「うん、ばいばい」
わたしは、梓ちゃんにメールを送る事にした。
自分から送るメールは、これが初めてだった。
『中澤君、今日休みなんだって。 高熱あるらしいよ』
簡潔な文章。
梓ちゃんからは、すぐに返事が来た。
『さっき、徹からメール着たけど そうらしいね>< わざわざありがとう☆』
返事を打とうかと思ったが、やめにした。
NO.43 沙希
07/01(火) 13:43 IP:218.220.58.80 削除依頼 書く時間がないので、自あげさせてもらいます(´・ω・`)
NO.44 沙希
07/01(火) 15:26 IP:218.220.58.80 削除依頼 少しですが、書かせていただきます。
***
教室に入ると、梓が出迎えてくれた。
「蓮からメール来たの、はじめて」
そう言うと、子供っぽい笑顔を向けて、どこかへ行ってしまった。
あー…。授業って退屈。
今日は、相川君も中澤君も居ないし……。
絵でも、描いてみようか。
今までだったら毎日のように描いていた絵は、
最近、スイッチが切れたように描かなくなった。
わたしは、落書き程度の絵を描くときにつかうノートを取り出した。
だけど、何を描く?
それは、わたしにとって大きな問題だった。
五分程、考えただろうか。
わたしは、いつもとは少し違う絵を描きたかった。
今までは、ほとんどが風景画ばっかりを描いていた。
だけど、違う。
今わたしは、自分で考えた何かを描きたい。
NO.45 沙希
07/01(火) 15:35 IP:218.220.58.80 削除依頼
自分でも、これはいい傾向だと気づいていた。
“何か”を考えるのは、いいことだと思う。
さらに考え、わたしは今日はやめる事にした。
そのかわり、いつもとは違う道を行く中澤君の家に行くとき
写真をいっぱい撮ろう。
そのためには、一度家に帰らなくてはならなかった。
あとで、相川君にメールをしよう。
キーンコーン
色々と考え込んでいるうちに、一時間がたったようだ。
「きりーつ」 「れーい」
聞くたびに力が抜ける。
わたしは、相川君にメールを送った。
『ごめん。1回家に帰ってから中澤君の家に行くね』
返事はすぐだった。
『どうして?』
そっけない。そう思った。
だけど、今はとにかく返事をしよう。
『家に、カメラを取りに行きたいの』
『カメラ? どうして?』
『中澤君の家に行くまでに、いい景色見つけたら 悔しいじゃん。』
『わかった。 けど、なるべく早くな』
今日は、やっぱりそっけない。
NO.46 沙希
07/01(火) 15:45 IP:218.220.58.80 削除依頼
ぼーっとしていると、あっけなく授業が終わり
気づくと放課後だった。
梓ちゃんに、一緒にお見舞い行こう、と誘われたが、
その申し出を断った。
写真を撮るときは、自分と、撮られる何かだけがいい。
わたしは、今までずっとそう考えてきた。
いや、今でもそう考えている。
駅まで大急ぎで走っていくと、いつもより
一本早い電車に乗れた。
周りからしたら、わたしは可笑しな子なんだろうな、と
走っていたときの事を考えながら思った。
家に着くと、大急ぎで着替え、大急ぎでカメラやその他を準備し、
わたしは家を飛び出た。
親には、あとでメールを入れておこう。
駅までは走ったが、電車を降りてからは歩いた。
中澤君の家に一番近い駅は、わたしが降りた事のない駅だった。
中澤君の家まで行く途中に、
花、空、鳥、…かなり沢山シャッターをきった。
やっとのことで、中澤君の家に着いた。
NO.47 きろ
07/01(火) 17:55 IP:218.46.181.113 削除依頼 - おもしろいですね*
最後まで、頑張って下さい:)
NO.48 沙希
07/04(金) 16:25 IP:218.220.59.236 削除依頼 *きろ様
ありがとうございます! 嬉しいです、がんばります^^
NO.49 凛
07/04(金) 18:30 IP:220.55.238.71 削除依頼 - ねく(´・ω・`)
NO.50 沙希
07/05(土) 19:06 IP:218.220.59.236 削除依頼
*凛さま
ねくありがとうですヽ(^o^)丿 がんばります。
***
最近、用事がいっぱい重なっていて
なかなか更新できないと思われます(´・ω・`)
ですが!
合間を縫って更新するよう努力します。
ご理解いただけたら、と思います。
沙希
NO.51 沙希
07/05(土) 20:27 IP:218.220.59.236 削除依頼
ここで合っている。そう分かってはいるものの
何度も表札を確認した。
チャイムに手を伸ばす。
ピンポーン
『あ、蓮! はやかったね。今行く!』
インターホン越しに言ったのは梓ちゃんだった。
「おじゃましまーす」
中澤君の家は、すごく綺麗で、大きかった。
「ここが徹の部屋だよ」
そう言って、梓ちゃんはノブを掴んだ。
「おじゃまします」
中に入ると、中澤君がとてもしんどそうな顔でベットに横になっていた。
「おう蓮。 来たな」
そう相川君は笑って言ったから、わたしも笑ったけど
内心、とても焦っていた。
中澤君、すごくしんどそう。
「ねぇ、相川君」
「ん? 何?」
「中澤君、ご飯食べた?」
すると相川君は満面の苦笑いで言った。
「あ〜…。 実はまだ」
「「ええっ!?」」
梓ちゃんも驚いていた。
てっきり食べてるものだと思ったのだろう。
「ちょっと、なにか食べ物買ってくる」
わたしはそう言うと、鞄を取り部屋を出た。
NO.52 沙希
07/05(土) 20:45 IP:218.220.59.236 削除依頼
もしものために、お金を多めに持ってきていてよかった。
わたしは歩きながら、スーパーを探した。
コンビニだと、置いているものが少ないからだ。
五分ほど歩いた先に大型のスーパーがあった。
なかで、果物やアイス、スポーツ飲料などを買い込み
わたしはスーパーを後にした。
帰り道、親に送るメールを打っていた。
『今日、友達が熱あって 今、その子の家に居る。 帰るの遅くなると思う』
ちょっと素っ気ない上に、文章がすこし下手だったが送った。
すると、すぐに返事が来た。
『そう。わかった。 ちゃんと看病してあげなさいよ』
親も、素っ気なかった。
中澤君の家につくと、わたしはすぐにお粥をつくり、
果物を剥いた。
中澤君は、少しだが食べてくれ、嬉しかった。
自分がつくったものを食べてくれるのは嬉しい。
あとは、とにかくスポーツ飲料を飲ませた。
2、3時間程経ったとき、再度熱をはかると
38度台になっており、少し安心した。
38度台でも十分高いのだけれど、そのころには食欲も少し戻ってきていた。
果物やアイスなどを、ゆっくりだが食べていた。
そんな姿を見て、すごくほっとした。
もうすぐで7時になろうとしている時だった。
どこからか、綺麗なオルゴールの音が聴こえた。
それは、梓ちゃんの携帯から出ていた。
「ちょっとごめん。たぶん親からだと思う」
そう言って、部屋の外に出て行った
NO.53 沙希
07/05(土) 21:05 IP:218.220.59.236 削除依頼
数分後、梓ちゃんが部屋に戻ってきた。
「ごめん、わたし帰らなきゃ」
それを聞いたとき、わたしも帰ろうかと迷った。
「ちょっとごめん、わたし、親に電話してみる」
そう言って、部屋の外に出た。
電話帳から、親の携帯番号を探す。
プルルルル プルルルル
『もしもし』
「お母さん? あのさ、何時までに帰ったらいい?」
少しの間、沈黙があった。
『9時までなら許すわ』
そう言うと、あっさり切られてしまった。
部屋に入ると、梓ちゃんは帰り支度を終えていた。
「蓮も帰るの?」
そう相川君に聞かれた。梓も気になるようだ。
「…ううん。もうちょっと、ここに居る」
「そっか」
梓ちゃんは呟き、中澤君に
「お大事にね」
そう言って帰っていった。
NO.54 沙希
07/05(土) 21:16 IP:218.220.59.236 削除依頼
気がつくと、8時を過ぎていた。
9時までとは言っていたけど、そろそろ帰るか。
そう思い、帰る事を伝えた。
すると、相川君が言った。
「そっか。じゃあ、俺も帰る。送っていくよ」
わたしたちは、中澤君に別れを告げ、家を出た。
帰り道。
そういえばわたしと相川君は家が近いことを思い出した。
長い沈黙。
それを先に破ったのは相川君だった。
「ねぇ、蓮」
「なに? 相川君」
「今度、今度さぁ。絵のお礼させてよ」
突然で、最初は何の事か分からなかった。
「お礼って?」
「んー…。なんかおごる!」
相川君は、笑ってそう言った。
NO.55 沙希
07/05(土) 22:09 IP:218.220.59.236 削除依頼
「明日、あいてる?」
「うん。あいてるよ」
すこし嬉しかった。
休みの日に、相川君と会えるということが。
「じゃあさ、明日の10時に時計広場で」
「時計広場ね、わかった」
そして、二人で笑った。
「じゃーな」
「うん、送ってくれてありがとう!」
相川君は、足早に帰っていった。
…明日が、楽しみだ。
ジリリリリリリ
目覚まし時計の音が部屋に響く。
昨日は、なかなか寝付けなかった。
目覚まし時計のスイッチを切ると、わたしはベットから飛び出た。
NO.56 沙希
07/06(日) 21:09 IP:218.220.59.236 削除依頼
書く時間がないので、自あげさせていただきます(´・ω・`)
NO.57 沙希
07/07(月) 22:38 IP:218.220.59.236 削除依頼
服を選ぶのに時間を掛けたことは今まであっただろうか。
今、わたしは服選びに時間を掛けすぎている。
これでは、待ち合わせの時間に遅れてしまうかもしれない。
急がなければと思うほど考えられない。
ふと時計を見ると、9時30分を指していた。
もう出なければ間に合わない。
服よりも、時間に間に合うほうが大切だ!
そう思い、家を飛び出た。
わたしは結局、チュニックに七分丈のズボン、
足元には綺麗な緑色のサンダルという格好で待ち合わせ場所にむかった。
間に合うかな…
わたしはこの時、かなり焦っていたんだと思う。
しだいに足が速くなっていた。
結果的に、わたしは5分の遅刻となった。
相川君は、とっくに来ていたようだった。
「遅くなってごめんね」
「いいよいいよ。じゃあ行こっか」
そう言って、相川君は歩き出した。
わたしは、そのあとを追いながらふと思った。
そういえば、今日はどこへ行くのだろう。
NO.58 沙希
07/07(月) 22:49 IP:218.220.59.236 削除依頼
「ねぇ相川君」
言い終わった後、人にぶつかった。
気づくと、辺りは人であふれ返っていた。
「ん? どしたの?」
わたしは、どこへ行くのか聞こうと思っていたのだが、
今はそれより言いたい事があった。
「人が多すぎて、はぐれそう!」
この時、相川君とはけっこう距離があったから、
わたしは大声で言った。
相川君はその声に気づくと、はじめて振り向いた。
わたしが、とにかく前へ進もうとしていたとき、
目の前に相川君が居た。
すると突然、誰かに手をつかまれた。
手の主を追っていくと、それは相川君だった。
「嫌かもしれないけど、我慢して」
そう言うと相川君は、再び歩き出した。
「嫌じゃないよ!」
わたしはそう言って、相川君の手を強く握った。
相川君の頬が、少しあかいような気がした。
NO.59 沙希
07/07(月) 23:15 IP:218.220.59.236 削除依頼
少し、人が減ってきたので、わたしは相川君に聞いてみた。
「ねぇ、どこに行くの?」
相変わらず、手はつないだままだった。
「んー、秘密」
笑いながら相川君はそう言った。
それから10分ほど歩いたとき、相川君は立ち止まった。
「ここだよ」
顔を上げ、辺りを見回すと
そこは最近、話題になっていたお店が立ち並んでいた。
「蓮はさー」
「んー?」
「欲しいものとかってある?」
わたしは考え込んだ。
欲しいものなんて、わたしは滅多にない。
「んー、そうだなぁ」
考えながら近くのお店に目を向けてみた。
ふと目に入ったお店は、すごく綺麗だった。
「あっ! あそこ」
わたしはそのお店を指差した。
相川君も、わたしが指差した方向を見る。
「あそこか。じゃあ行こう」
お店の名前は、どこかの外国語から付けられているようで
わたしには読めなかった。
店内は、すごく落ち着ける雰囲気があった。
NO.60 りね
07/08(火) 15:22 IP:58.91.3.41 削除依頼 - 不陰気が好きです(^ω^*)
NO.61 りね
07/08(火) 15:23 IP:58.91.3.41 削除依頼 - あう間違えて;
すみません>< 雰囲気が好きですって書こうとしたんですが;;
ネクストです!
NO.62 沙希
07/08(火) 19:58 IP:218.220.59.236 削除依頼 *りね様
雰囲気が好きですか! そう言っていただけて嬉しいです^^ ありがとうございます
NO.63 沙希
07/08(火) 20:50 IP:218.220.59.236 削除依頼
「うーん、どれにしよう」
わたしは、すごく迷っていた。
店内のものはすべてがわたしの好みで
どれか一つ、なんて選べなかった。
「決まった?」
棚を真剣に見ていたわたしの横で、相川君が言った。
わたしはこの時、いいことを思いついた。
「ねぇ相川君」
「ん? どうした?」
「相川君が選んで」
わたしは笑顔でそう言った。
相川君は、まかせろと言って、棚とにらめっこしていた。
相川君なら、わたしに似合うものを見立ててくれるだろう。
NO.64 沙希
07/08(火) 21:03 IP:218.220.59.236 削除依頼
五分ほど迷っていた末、相川君は
「よしっ! 決めた」
そういって、一つのネックレスをわたしに差し出した。
それには、綺麗な大小異なる透明なストーンが二つと、
葉っぱのモチーフが一つついていた。
ストーンは、チェーンで位置がずらされており、
縦長で綺麗なデザインだった。
「かわいい!」
相川君は、やっぱりセンスがいい、と
改めてそう思った。
「じゃあ、買ってくる」
そう言うと相川君は、レジへ向かった。
値段は高くないだろうか、と少しどきどきしていたが、
レジのほうから
「1500円です」
という声が聞こえてきたので、ほっとした。
相川君は走ってレジから戻ってきて、
「はい、これどうぞ」
そういって、綺麗に包装された箱を差し出した。
「ありがとう」
わたしは、その場であけるのはもったいない気がしたので
今さっきもらった箱を、鞄の中にそっとしまった。
NO.65 沙希
07/08(火) 21:10 IP:218.220.59.236 削除依頼
帰り道、わたし達は寄り道をして大通りを歩いていた。
大通りを歩いたのはいつぶりだろう。
「相川君」
「どうしたー、蓮?」
「わたしにも、お礼させて」
相川君は迷った末、じゃあ…、と口にした。
「じゃあ、レモンティーおごって」
そうか、相川君はレモンティーが好きなのか。
わたし達は、カフェを探して歩いていた。
「あっ! あそこにカフェあるよ!」
わたしは目で場所を知らせた。
相川君も、わたしの視線をたどって見つけたようだ。
「さっ、入ろう」
そう言って、わたし達はそのお店に入った。
NO.66 沙希
07/08(火) 22:48 IP:218.220.59.236 削除依頼
「いらっしゃいませー」
若い店員さんが笑顔で言う。
案内されたテーブルで、わたしは
レモンティーと特製ブレントというものを頼んだ。
特製ブレンドとは、店長さんが独自にブレンドした紅茶なのだそうだ。
「お待たせしましたー」
注文後、すぐに頼んだものがきた。
「どう? おいしい?」
わたしは、レモンティーを飲んでいる相川君に向かって聞いてみた。
「すっげぇ美味い」
満面の笑みで相川君は答えてくれた。よほど美味しいのだろう。
わたしが頼んだ紅茶も、それは美味しかった。
「相川君って、レモンティー好きなの?」
なんとなく、答えは解っていたが聞いてみた。
「うん。大好き」
飲み終え外に出ると、わたし達はもう帰ることにした。
だけどわたしは、相川君に悪い気がしていた。
お礼に、ともらったネックレスは1500円したのに、
わたしはというと350円のレモンティー。
そこで、相川君に言ってみた。
「ねぇ相川君」
そういえば、今は手は繋いでいなかった。
「ん?」
「なにか、欲しいものとかない? レモンティーだけじゃ悪いし…」
相川君は、少し迷った後
「じゃあ、ひとつお願い聞いてくれる?」
と、子供のような笑顔でいった。
「うん、いいよ。何?」
NO.67 きろ
07/09(水) 22:21 IP:210.188.67.110 削除依頼 - また、ネクストーっ´ω`
NO.68 沙希
07/09(水) 22:35 IP:218.220.59.236 削除依頼 *きろ様
またまたネクストありがとうございます! がんばりますねーっ^^!
NO.69 沙希
07/09(水) 22:43 IP:218.220.59.236 削除依頼
「手、つないで」
そう言った相川君のことを、わたしは見続けていた。
変わったことを言うなぁ
「うん、いいよ」
そういって、手をさしだした。
相川君は手をとり、前へと歩き出した。
なんだか、少しゆっくり歩いてくれているような気がした。
わたしたちは、なんとなく黙り込んでいた。
緊張してるとか、そんなのではなく、ただ単に話す事がなかった。
少なくても、わたしはそうだ。
いつもなら、沈黙になるとどちらかがあせって話を切り出すのに
今日は、まったくそんな様子はなかった。
むしろ相川君は、沈黙を楽しんでいるようにも見えた。
やっぱり変わってる。
相川君は、家の前まで送ってくれ、わたしたちは
「また、学校でね」
そう言い合って別れた。
NO.70 沙希
07/09(水) 22:45 IP:218.220.59.236 削除依頼 69
× 少なくても ○ 少なくとも
です(´・ω・`) すいません。
NO.71 沙希
07/09(水) 23:00 IP:218.220.59.236 削除依頼
わたしは玄関のドアを開け中に入ると、
走って自分の部屋へと向かった。
鞄をすばやく開け、中から箱を取り出した。
わたしは箱にまいているリボンをそっとはずし
包装紙も丁寧にはがした。
中身は知っているはずなのに、なぜか、すごくどきどきしていた。
そっと箱のふたをあけ、なかを覗き込んだ。
わたしは、その状態から動けなかった。
箱の中に、見慣れないものが入っていたのである。
それは、綺麗な綺麗な、ピンキーリングだった。
いつの間に、相川君はこんな物も一緒に買っていたのだろう。
レジの横にあったのだろうか。
わたしは、それを付けてみた。
よく見ると、ネックレスにとてもよく合うデザインだった。
そこまで、考えていてくれたのだろうか。
すごく、嬉しかった。
お礼に、またレモンティーでもおごろうか。
NO.72 沙希
07/11(金) 16:25 IP:218.220.59.236 削除依頼 - 月曜日の朝。
わたしは、相川君にもらったネックレスとピンキーリングをつけて家を出た。
うちの高校の校則は結構ゆるい。
ラッキーだな、なんて思いながら歩いた。
教室につくと、相川君は一人で席に座って居た。
どうやら、空を見ているようだった。
わたしも、教室から見る空は好きだ。
「おはよう、相川君」
「おー。おはよう、蓮」
「これ、ありがとね」
そう言って、左手の小指にはまっている指輪を見せた。
相川君は、子供のように笑って
「どういたしまして」
そう言った。
相川君の笑顔は、いつ見ても綺麗だ。
「今度、またあのカフェに行こうよ」
わたしはそう言い、相川君の顔を見た。
「また、レモンティーおごるよ」
「まじで!」
そう言った相川君は、本当に嬉しそうだった。
「じゃあ、約束」
NO.73 姫愛梨
07/11(金) 18:44 IP:211.19.104.251 削除依頼 - 早く続き読みたいです。
そーいえば 香絵です。 姫愛梨(きあり) になまえかえました。
NO.74 沙希
07/12(土) 11:07 IP:218.220.59.236 削除依頼 -
*姫愛梨さま
ありがとうございます。
NO.75 沙希
07/12(土) 11:13 IP:218.220.59.236 削除依頼
わたしは、この時にはもう相川君の事が
たぶんだけど、好きだった。
何せ、いままで恋なんてした事がなかったので
自分でも、よく解っていない。
だけど、手を繋いだとき、安心したし、嬉しかったのは確かだった。
わたしは、相川君が好きだ。
いつか、この思いを伝えたい。
相川君は、わたしの事をどう思っているだろう。
だれかに好意を持たれたこともなかったから、
わたしは何も解らなかった。
NO.76 沙希
07/12(土) 11:43 IP:218.220.59.236 削除依頼
HRの真っ最中なんてことをすっかり忘れて
わたしは考えに耽っていた。
だけど、遠くから小さく、だけどはっきり聞こえた。
「日直も全員まわったし、席替えするかー」
わたしは、びっくりして立ち上がりそうになった。
なんとか落ち着いて、相川君の方を見た。
―なんとも思ってないのかな。
わたしにはその事がすごく悲しくて、つい窓の外に目を向けた。
先生が、くじを持ってまわってくる。
できることなら永遠に、ここまでまわってこないでくれ。
その願いも天には届かず、とうとう先生がまわってきた。
適当にとった紙をひらけ、番号を見る。
紙に書いていた番号は、17。
わたしは、この番号に縁があるのだろうか。
席の場所を確認してみると、やっぱり今と同じ場所だった。
「相川君、何番?」
「俺? 俺は5番だった。蓮は?」
「わたしは、17番」
相川君が前の黒板を見たので、わたしも見た。
5番の席は前のほうで、わたしの席とかなり離れていた。
相川君もそれに気づいたようだ。
NO.77 姫愛梨
07/12(土) 13:35 IP:211.19.104.251 削除依頼 - あぁぁぁぁ(泣)
NO.78 郁
07/13(日) 12:01 IP:218.220.59.236 削除依頼 *姫愛梨さま
(^ω^)ふふ
***
作者です。 実は、名前を郁と改めました。 よろしくおねがいします。 郁
NO.79 郁
07/13(日) 21:30 IP:218.220.59.236 削除依頼
少しの間の沈黙が続く。
先にそれを破ったのは、やはり相川君だった。
「あちゃー。離れちゃったな」
それだけ?
そう出そうになった言葉を飲み込んで、かわりに
「うん。離れちゃったね」
そう吐き出した。
―やっぱり、彼はわたしの事をどう思っているのか解らない。
席に座って、みんなが移動し終えるのを待っていた。
「森見ー」
後ろから転がってきたその声に、わたしは懐かしいような感じがした。
中澤君だ。
彼はあの後、無事に熱が下がり、次の日に
何とも無かったかのような顔で学校にやってきた。
「あ、中澤君ー。」
「森見、またそこの席なの?」
「うん、そうなんだ。中澤君は?」
中澤君はへへ、と笑い
「森見の前」
と短く答えた。
少しだけど、楽しくなりそうな気がした。
NO.80 郁
07/13(日) 21:42 IP:218.220.59.236 削除依頼
席替えしてから数日経った放課後の事。
わたしが帰ろうとして立ち上がった時だった。
「あ、森見。ちょっと待って」
そう中澤君に引き止められた。
「ん? どうしたの?」
そう言いつつ、自分の席につく。
「いやぁ、あのさ、」
中澤君が一呼吸入れて言った。
「森見さ、奏汰の事どう思ってるの?」
いったい、中澤君は何をいきなり聞いてくるのだろう。
NO.81 郁
07/13(日) 23:08 IP:218.220.59.236 削除依頼
わたしは返事に困った。
どう答えれば伝わるだろう。
わたしには、まだ好きとは言い切れなかった。
あくまで“たぶん”好きという様な曖昧なものだ。
「たぶん、好き、なのかなぁ?」
質問に質問で返してしまい、しまったと思ったが
中澤君は、そんな事気にしている様子ではなかった。
「ふうん」
その後の長い沈黙がどれほど辛かったか。
今の沈黙は、辛い。
空気が重いのだ。
耐え切れなくて、口を開いた。
「あ、あのさ」
「ん?」
「どうして、そんな事…?」
中澤君は、ああと小さく呟き答えた。
「森見と奏汰の関係、よくわかんなかったから」
そう言った中澤君を見て、確かにそうかもしれないと思った。
「奏汰もさ、相談とか絶対しない奴なんだよ」
そう中澤君は話した。
以外、そう思いつつ呟いた。
「じゃあ、何かあったら相談させて」
中澤君は笑顔でわかったと言い
「引き止めて悪かったな」
そう言い残して先に帰っていった。
NO.82 郁
07/15(火) 14:55 IP:218.220.59.236 削除依頼
一人の帰り道でふと思う。
いつの間に、わたしは一人に慣れたのだろう。
中学までは、とにかく一人が怖くて、苦手な友達とも一緒に居たりした。
そこまでしてでも一人が嫌だった。
それが、今ではこうだ。
わたしは、変わったのかもしれないな。
そんな事を考えると、自然と笑みがあふれた。
わたしは、写真屋さんの前で足をとめた。
そこのお店は、いつも使わせてもらっている。
店員さんとも仲がよかった。
「あっ……」
この間の写真をまだ受け取っていない。
わたしは、中澤君の家に行く途中に撮った写真を現像に出していた。
わたしが写真のことを忘れていたことなんて、今まで一度もなかった。
写真を受け取り、足早に家に帰ると
さっそく写真を取り出した。
「うまく撮れた」
時々そんな事を呟きながら、わたしはアルバムを作っていった。
アルバム作りも、ささやかな楽しみの一つだ。
NO.83 郁
07/19(土) 16:15 IP:218.220.59.236 削除依頼 ***
どうも。作者です。 見てくれている方が居るのかどうかもよく分かっておりませんが 更新できていなくてすみません。 最近、色々と用事が多く、私自身、精一杯なのです。
もし、見てくれている方がいらっしゃるのでしたら しばし、お待ちくださいませ。 出来る限り早く更新するよう、努力します。
郁
***
NO.84 きろ
07/19(土) 19:03 IP:218.46.182.152 削除依頼 - 見ています読んでいます!
無理はしないで下さいね:)応援しています。
NO.85 姫愛梨
07/19(土) 21:51 IP:211.19.104.251 削除依頼 - 無理せず主さんのペースで書き続けてください。
あげつづけますら!
NO.86 郁
07/21(月) 14:24 IP:218.220.59.236 削除依頼 *** あああ! お二人とも、暖かい言葉をありがとうございます。
*きろ様
見てくださっていましたか! 応援してくださりありがとうございます。
*姫愛梨さま
ありがとうございます。 あげ続けてくださると助かります!
お二人とも、本当にありがとうございます。 ちょっと元気もらいましたw 郁
***
NO.87 郁
07/21(月) 14:45 IP:218.220.59.236 削除依頼
あと少しで完成する、という時だった。
携帯の着信音が鳴った。
「はいはい、どちら様ー?」
そんなことを言いながら、わたしは携帯をあけた。
『受信メール 1件』
そう表示されている携帯を操りながら、
「誰からだろ」
そう呟いた。
「あっ…、」
中澤君からだった。
わたしはさらに携帯を操り、本文を見た。
『森見さ、奏汰と何かあった?』
たったそれだけの短い文面。
わたしは少し驚いた。
驚きで少し震えている指先で、返事を打った。
『どうして?』
返事はすぐだった。
『なんとなく、そう思った。』
『そんなことないよ』
そう送り、わたしはベットに腰掛けた。
―中澤君、どうしたんだろう?
そう思ったとき、また着信音が鳴った。
少し覗くと、けっこう長い文だった。
『そう? それより今日、森見は奏汰のこと “好きかもしれない”っていうふうに言ってたけど それ、俺が思うに好きって認めるのが怖いだけだと思う。』
中澤君は、何が言いたいんだ。
わたしは、もう返事をしなかった。
NO.88 郁
07/23(水) 19:11 IP:218.220.59.236 削除依頼 -
あげさせてもらいます(´・ω・`)
NO.89 なお
07/24(木) 11:15 IP:122.20.186.189 削除依頼 - ふんわりした空気が
すごーく素敵です☆
NO.90 ろ-ら
07/24(木) 16:15 IP:89.143.90.238 削除依頼 すごく面白いです!! 雰囲気が素敵で(^ω^) 絶対また来ますね!! ねくすとヾ( ^ω^)ノ
NO.91 郁
07/25(金) 16:02 IP:218.220.59.236 削除依頼 *なお様
ありがとうございます! そう言っていただけると嬉しいです。
*ろ-ら様
ねくすと、ありがとうございます! ぜひ、また来てくださいw
NO.92 郁
07/25(金) 16:11 IP:218.220.59.236 削除依頼
次の日、わたしは少し重い足取りで学校に向かった。
―また、中澤君になにか言われるのだろうか。
席が近いと知ったときは嬉しかったけど、今は違う。
確かにわたしは、別に相川君となにかあった訳ではないのに
最近、話さない。
はたから見れば、何かあったようにも見えるだろう。
そりゃあ教室に入ったとき目が合えば挨拶ぐらいはする。
だけど、それ以上は話さなかった。
少し重い教室のドアをあける。
相川君と目が合った。わたしは言った。
「おはよう」
「おー、おはよう」
一日に、たったそれだけしか話さなくなったのはいつからだろう。
答えはもう、わかっていた。
―席が離れたあの日から。
相川君は、わたしと居ても楽しくなかったのだろうか。
だけど、今までの笑顔を思い出すと、
そんなことは無いとしか思えなかった。
NO.93 郁
07/25(金) 16:19 IP:218.220.59.236 削除依頼
席につく。中澤君はまだ来ていなかった。
「おはよう、蓮」
そう言ったのは、梓ちゃんだった。
「おはよう」
そうわたしが言い終わったとき、遠くから
梓ちゃんを呼ぶ声が聞こえた。
「ごめんね」
そう言うと、声がした方へ走っていってしまった。
たぶん、梓ちゃんもわかっている。
わたしと、相川君との事。
一度だけ、
「何かあった?」
そう聞かれたけど、わたしが答えなかったら
梓ちゃんも深追いするような事はしなかった。
それからは、その事については一度も触れなかった。
たぶん、梓ちゃんなりの優しさだ。
わたしは、その事に深く感謝した。
NO.94 郁
07/25(金) 16:28 IP:218.220.59.236 削除依頼
「森見、おはよう」
声の主が誰かはわかっていたが、一応確かめた。
やっぱり。
―やっぱり、中澤君だ。
「お、おはよう」
自分でも、声が小さいのがわかった。
中澤君は、机の上にどかっと鞄を置き
どこかへ行ってしまった。
あれ?
そう言いそうになったのを、必死でこらえた。
―何も、言われなかった。
わたしは、何ともいえない気持ちで
あれっきり相川君と話さないままに、放課後を迎えてしまった。
わたしは、一人で自習室に向かっていた。
もうすぐ、テストがある。
「なんでこんなにテストが多いんだろう」
そう呟きながら足を進めていくと、自習室についた。
少しの騒音が聞こえる。
どうやら、中は騒がしい。
NO.95 郁
07/25(金) 16:51 IP:218.220.59.236 削除依頼
一呼吸おいてドアをあけた。
けっこう人が多い。
そして、騒がしい。
あー、みんな勉強する気ないんだなー。
なんてのんきな事を考えながら、わたしは窓際の席に座った。
ほかに席は空いていなかった。
「よしっ」
小声でそう言い、教科書とノートを広げ
わたしは勉強に取り組んだ。
今回のテストは、そんなに大きなテストではなかった。
部活をやっている人たちなんかは、時間がないからって
勉強しないくらいだ。
そんな様なテストなのに、わたしが今
勉強しているのは、帰宅部で暇だからだ。
―本当は、写真部に入りたかった。
だけど、わたしの学年からは誰も入らないと聞いて
やめてしまった。
NO.96 郁
07/29(火) 18:30 IP:218.220.58.246 削除依頼
***
長い間、更新できなくてすいませんでした!!
今から書きます!
…と言いたいんですが、今日もこの後用事がありまして
とりあえず、自あげという事で
郁
***
NO.97 郁
07/30(水) 13:41 IP:218.220.58.246 削除依頼
「あーあ」
―写真部に、入ればよかった。
今ならまだ1年だし、大丈夫かもしれない。
何度そう思っただろう。
だけど、思うたびに別の思いにかき消されていた。
“今から入ったら、逆に迷惑なのではないか”
このために、わたしは踏ん切りが付かなくなった。
「よしっ」
この事は忘れよう。そう思って勉強を再開した。
30分くらい経って、わたしはトイレに行くために席を立った。
廊下は静かだ。
気づくと教室の中も静かだったので、わたしは
足音を立てないように慎重に足を進めた。
そのとき、彼とすれ違った。
レモンティーを飲みながら歩いている彼だ。
『相川君』
その一言が喉から出ない。
NO.98 郁
07/30(水) 14:39 IP:218.220.58.246 削除依頼
彼も、すれ違いざまにわたしの事を一瞬、
ほんの一瞬だけ見た。
わたしは、言いたい事が一杯あったのにまだ声が喉から出なかった。
どうか話かけてくれ。
ずっとそう願っていた。通り過ぎた後も足をとめて願っていた。
耐え切れなくて振り向いた。
―彼は、もう行ってしまったのだろうか。
その事を、確かめるためだった。
わたしは振り向いた。
彼は、足を止めこちらを見ていた。
「あ…」
やっと声が出たので、何か言おうと思ったが
言いたい事がありすぎて言葉が詰まる。
黙り込んだわたしに、相川君は言った。
「いつ、あのカフェに行く?」
思い出した。
そういえば約束した。また、あのカフェに行こうって。
わたしがおごるからって。
なぜかは分からなかったけど、涙がこぼれた。
NO.99 郁
07/30(水) 14:50 IP:218.220.58.246 削除依頼
わたしが泣き出したのに気づいた相川君は
それまで優しく笑っていたのに、表情が一変した。
「蓮? どうした?」
ああ、相川君あせっているんだな
そんな事を思いながら、わたしはあふれて来る涙を
必死で止めようとしていた。
だけど、頭の中は疑問でいっぱいだった。
色々と不思議に思うことは多かったけど、一つ、
嬉しく思ったことがあった。
“わたしの事、嫌いじゃなかったんだ”
それだけで、すべてが救われた気がした。
数分経つと、自然と涙も出なくなっていた。
変わりに、わたしの顔には笑顔が満ちている。
相川君も笑顔だ。
「もしかして、約束の事、忘れてた?」
わたしは正直に言う。
「忘れてた」
「そっかー。じゃあ、行くのやめる?」
相川君は、自分からそう言ったのに
すごく寂しそうな目をしていた。
わたしは答えた。
「いやだ。絶対に行く」
NO.100 日南崎 翡翠
07/30(水) 15:37 IP:125.13.2.23 削除依頼 文章がすごい綺麗で読みやすいですっ 話も面白いですし。 ネク希望しますっっ!
NO.101 沙希
07/30(水) 15:52 IP:218.220.58.246 削除依頼 - *日南崎 翡翠
あなたは雑ロの! ありがとうございます。頑張ります!
NO.102 沙希
07/30(水) 15:54 IP:218.220.58.246 削除依頼 - ごめんなさい。
101レス目、様抜けました(´・ω・`)すいません
あと、100おめでとうございます!
NO.103 aiko
07/30(水) 16:37 IP:219.196.146.227 削除依頼 のほほんした雰囲気がすきです(^ω^)
これからも頑張ってください⌒★
また見に行きます!゜+..*
NO.104 沙希
07/30(水) 20:54 IP:218.220.59.174 削除依頼 *aiko様
ありがとうございます! 嬉しいですv
NO.105 郁
07/30(水) 20:56 IP:218.220.59.174 削除依頼 - ***
そういえば、名前ぐちゃぐちゃになってますね(´・ω・`) 沙希と同一人物です郁です|ω・`) 次からは、郁に統一します。
***
NO.106 郁
07/30(水) 21:05 IP:218.220.59.174 削除依頼
自分で言っておいて、自分で驚いてしまった。
わたしは、いつからこんなにはっきりと言うようになったのだろう。
―これも、きっと皆と居たからだろうな。
前から、相川君の笑い声が聴こえた。
「わかった。いつ行こう?」
まだ少し微笑んでいる彼に向かって言った。
「うーん。相川君が決めて」
満面の笑みでそう言ったのを聞くと、少し考えてから、
「じゃあ、一週間後。」
「わかった。じゃあね」
そう言って手を振り、わたし達はわかれた。
―心が軽いなぁ。
そう思って歩いていると、不思議と足取りも軽くなった。
「そうだ! トイレ行く途中だった…」
何故かこのときに実感した。
今なら、胸を張って堂々と言える。
わたしは、相川君のことが好きだ。
NO.107 郁
07/31(木) 14:51 IP:218.220.59.174 削除依頼
わたしは、このことを中澤君に伝えなければと思った。
出来れば、今すぐ伝えたい。
だけど、それは出来ない事だった。
彼はサッカー部で、今は部活中だ。
「あー、もう」
どうしていいか分からず、わたしは呟いた。
少し落ち着いてからもう一度考えた。
―今すぐに伝えたかったけど我慢だ。
その考えしか頭に浮かばず、明日、学校で伝える事にし、
わたしは自習室に戻った。
朝、教室の重いドアをあけ中に入る。
「おはよー」
声がしたほうにわたしは振り返った。
―振り返らなくても、声で分かったけど。
「おはよう、相川君」
わたしが笑顔でそう返すと、
彼も笑って、他の人たちとの会話を再開した。
―今までと違って笑顔があったかかった。
やっと中澤君が来た。
「あ、中澤君。おはよう」
「おはよう。」
中澤君は、少しの間わたしを見つめ、こう言った。
「何かあった?」
「どうして?」
「いつもより表情が柔らかい。気がする」
中澤君はするどいなぁ。なぜ分かるんだろう。
そんな事を思いつつ、わたしは笑って答える。
「そうだよ。何かあった」
一呼吸おいて、わたしは一気に言った。
「わたし相川君のこと好きって認めれた」
中澤君は少し驚いた顔をしたけど、すぐに優しい笑顔で言った。
「よかったな」
NO.108 郁
07/31(木) 21:27 IP:218.220.59.174 削除依頼
相川君と話せた日から、もう何日か経ったけど、
それきり話していなかった。
でも、わたしは大丈夫だった。前のように不安にはならない。
“約束”があるから。
「おはよう! 蓮、徹!」
梓ちゃんだった。朝から元気だな、といつも思う。
「おはよう」
「おはよう、梓ちゃん!」
わたしは、彼女に私の気持ちを伝えるべきか迷っていた。
―だけど、言っても何もかわらないよな。
その気持ちが勝っていたと思う。
だから、わたしは梓ちゃんには伝えていない。
気づくと梓ちゃんはもう居なかった。
わたしが辺りを見回していたからだろうか、中澤君が言った。
「おい、梓ならとっくにどっか行ったぞ」
顔が、少し温度を上げるのがわかった。
紅い頬と苦笑いの顔でわたしは答えた。
「あ、そう?」
その後、二人で声を出して笑った。
NO.109 郁
07/31(木) 21:30 IP:218.220.59.174 削除依頼 108
○ 私の気持ちを × わたしの相川君に対する気持ちを
です。ごめんなさい(´・ω・`)
NO.110 郁
07/31(木) 22:15 IP:218.220.59.174 削除依頼
わたしは、興味と冷やかしをこめて中澤君に一つ聞いてみた。
「ねぇ。中澤君は、もう梓ちゃんとデートした?」
わたしは、少し意地悪な笑顔になった。
「えっ? 何、いきなり…」
中澤君は相当驚いたようで、すこし悪かったかなと思った。
『やっぱり、答えなくていいよ』
そう言おうとしたら、中澤君が口を開いた。
「まだだよ。ってか、…」
そう口ごもると、彼は黙り込んだ。
少しの沈黙があった。この空間とは逆に教室の中は騒がしい。
中澤君が、再び口を開いた。
「いや、まだ行ってないんだ」
そう中澤君は苦笑いで言ったけど、どこか寂しそうだった。
「誘ったりしないの?」
「え? あ、うん。まぁ…」
今日の中澤君は、少し変だ。何かあったのだろうか。
「いつでも、相談のるよ?」
わたしがそう言うと、嬉しそうに、だけどやっぱり寂しそうに
「ありがとう」
と言うだけなのだった。
NO.111 郁
08/01(金) 12:42 IP:218.220.59.174 削除依頼
わたしは、もう少し問いただしてみたかったが、
彼は前を向いてしまった。
『これ以上、聞くな』
そう言われている様な気がして、わたしは忘れる事にした。
―だけど、引っかかるなぁ。
それからは、普段の中澤君に戻っていた。
わたしも、あの話題には触れなかった。
…いや、触れる事ができなかった、という方が正しいだろう。
今度、約束の日に相川君に聞いてみようか。
そんな事を思っていると、机に影ができていた。
誰か、隣に立っている。
隣に振り返ると、そこには相川君が立っていた。
驚きで少し震えている声で聞いてみる。
「あ、どうしたの?」
彼は、表情を変えずに言った。
「これ」
そう言うと、ノートの切れ端のようなものをわたしに渡し、行ってしまった。
―体調でも悪いのかな。
いつもなら、笑顔をむけてくれるのに。
思いながら、渡された紙を開け、なかを見る。
すこしバランスの悪い字で何か書いてある。
相川君の字だ。
『10時に時計広場』
それだけしか書かれていなかったのに、わたしはすぐに何の事か分かった。
約束の日、だ。
それは、もう明日に控えていた。
とても楽しみだったけど、さっきの相川君の態度が気になった。
NO.112 郁
08/02(土) 22:40 IP:218.220.59.174 削除依頼
明日、どうなるんだろう。
そんな不安ばかり抱きながら、今日を過ごした。
朝になっていた。
時間が近づくにつれ不安が増していく。
「ああ、どうしよう」
そう小声で呟きながら、
だけどきっちり時間に間に合うように家を出た。
自分で自分が分からない。
今日は、余裕で間に合った。
相川君はまだ来ていない。
辺りを見回すと、ふと人影が目に入った。
「相川君」
心の中で呟いたつもりだったのに、声となって外に出ていた。
彼も、こちらに気づいて走ってきてくれた。
NO.113 郁
08/02(土) 22:45 IP:218.220.59.174 削除依頼
相川君の走っている姿を見ながら、わたしは思っていた。
会えてよかった。
やっぱり、会いたかったんだと実感する。
「ごめん!」
目の前でとまり、息を切らしている彼が言った。
「ううん! 全然」
わたしは笑顔で言う。
つられて、彼も笑顔になっていた。
「そう? よかった」
ああ、あったかい笑顔だ。
「行こっか」
わたしがそう切り出し、先に歩き出した。
NO.114 1
[MAIL]
08/03(日) 15:07 IP:220.213.100.127 削除依頼 - あげ
NO.115 郁
08/04(月) 16:52 IP:218.220.59.174 削除依頼 *1様
あげ、ありがとうございます!
NO.116 郁
08/04(月) 20:26 IP:218.220.59.174 削除依頼
カフェまでの道のりを、わたし達は他愛の無い会話で埋めていた。
あのカフェは遠くてだんだん話すことがなくなって来た。
だけど、相川君との沈黙なら大丈夫。
なんてことの無い沈黙だからだ。
***
沈黙になってから、十数分たったであろうとき。
相川君は、のんきに鼻歌なんて歌っている。
聴いたことのある歌に耳を傾けながら、考えていた。
『どうして席替えのあとから話さなくなったの』
この一言が出そうで出ない。
言ったとしても後が怖い。
―もし、相川君が気分を悪くしたら。
隣で歌ってた歌も終わったようで、本当の沈黙になった。
この沈黙は大丈夫。
だけど、沈黙は嫌いだ。
NO.117 郁
08/04(月) 20:41 IP:218.220.59.174 削除依頼
とうとう切り出してしまった。
「相川君、聞いてもいい?」
相川君は、私の声に嬉しそうに反応し、
「ん、何?」
と笑顔で言った。
一呼吸入れ、自分を落ち着かせる。
そして、言い切る。
「どうして席替えのあとから話さなくなったの」
相川君の表情が、固まるのが分かった。
気まずい空気が流れる。
そういえば、今は電車に乗っていた。
揺れが心地いい。
相川君が言った。
「なんとなく、話せなかった」
「えっ、」
わたしがよく分からないという顔でもしていたのだろうか。
相川君は説明してくれた。
「話したいことは一杯あったよ。
…だけど、話せなかった。
話に行けなかったんだ、ごめん」
相川君も、わたしと同じだったんだ。
そう思うと、すこし心が軽くなった。
「謝ることじゃないよ、」
わたしはそういうと、相川君に向き直って言った。
「わたしも同じ」
NO.118 郁
08/04(月) 20:53 IP:218.220.59.174 削除依頼
そう、わたしも同じ。
同じだった。
自分からは話しかけることができなかった。
そりゃあ相川君のまわりには男の子がいっぱい居たから、っていうのもある。
だけど、本当に話したかったらそんなの関係ないだろう。
―たぶん、わたしは怖かったんだ。
冷たい態度をとられるのが。
そこで疑問にぶつかったので聞いてみた。
「ね、じゃあ挨拶するとき素っ気なかったのはどうして?」
“冷たかった”なんて言い方をしたら傷つくだろうと思い、
言い方を少し変えてみた。
相川君は頭をくしゃっと掻いて、照れくさそうに言う。
「それはね、ただ照れてただけ」
そう言い終わったのとほとんど同時に駅についた。
「あ、ついた」
そう言って先を歩いていった彼を見る。
―あ、顔が紅い。
からかってやろうか、と思ったけどやめた。
NO.119 姫愛梨
08/05(火) 14:15 IP:211.19.104.251 削除依頼 - あげ♪
NO.120 郁
08/06(水) 20:27 IP:218.220.59.174 削除依頼 *姫愛梨さま
あげ、ありがとうございます!
NO.121 郁
08/06(水) 20:44 IP:218.220.59.174 削除依頼
駅からまだ少し歩いたところにカフェはあった。
わたしは歩調のはやい相川君についていくのに必死で
まわりの景色を見てなかったから、
彼の言葉に少しあせった。
「ここ、綺麗だね」
言われて初めて景色を目にする。
「あ、ほんと、綺麗」
そこはちょっと都心に近かったのに、とても綺麗だった。
本当に綺麗で、わたしはそこが気に入った。
―この間来た時も、この道を通ればよかった。
そう思いながら歩いていた。
相川君が急に止まったので、何ごとかと思ったら
あのカフェについていた。
「あ、ついたね」
「意外とはやかったな」
入ろうか、と促されたので店内に入る。
NO.122 郁
08/08(金) 10:40 IP:218.220.59.174 削除依頼
「いらっしゃいませー」
店員の声が店の中に広がる。
わたしたちは、二人がけの席に座った。
「ちょっと早いけどお昼にする?」
わたしが問いかけると相川君はうなずいて、
「うん、そうしようか」
といった。
「ご注文お聞きいたします」
ちょうど店員がきた。
「じゃあ、わたしはAランチ下さい。
あと、食後にレモンティーを」
「かしこまりました」
どこか機械的な店員だなぁと思う。
「俺も同じのを」
店員が注文を繰り返した。
「Aランチがお二つ、食後にレモンティーがお二つ。
以上でよろしいですか?」
そう聞かれ、わたしはうなずいた。
NO.123 郁
08/08(金) 12:14 IP:218.220.59.174 削除依頼
店員が居なくなったのを見計らって、相川君に言ってみた。
「なんか中澤君、変だよね」
相川君は少し考え、こう言った。
「言われてみれば、そうかもしれない」
「だよね。この前さ、わたし聞いたんだよ。
中澤君に、梓ちゃんとデートした?って」
その後の事を、わたしはすべて話した。
なぜか口ごもった事、
さびしそうだった事、
そして、次の日からはいつもどうりだった事。
すべてを聞いて、相川君は答えた。
「正直、俺もよくわかんねぇ」
「え、」
以外だった。なんとなく、相川君なら分かっていると思っていた。
「一つ言えるのは、最近冷たい」
「あ、それはわたしも思った」
あの後から、わたしと中澤君はあまり話していなかった。
どこか気まずかったし、
あからさまに、ではなかったけどなんとなく、
話すなって言われてるような気がしてた。
勇気を出して話しかけても、冷たかった。
素っ気ない返事しか返ってこなかった。
―まさか、相川君もそうだったなんて。
NO.124 郁
08/10(日) 22:01 IP:218.220.59.174 削除依頼 ***
こんにちは。郁です。 ここで皆さんに言っておきたいのですが、 次から無駄な改行をやめようと思います。 それでは、引き続きお楽しみいただけたら幸いです。
郁 ***
NO.125 郁
08/10(日) 22:12 IP:218.220.59.174 削除依頼
そこで店員が来たので、話は中断となった。 わたしは中断のつもりだったのだけど、相川君は 終わりと捕らえたらしく、話題が変わった。
彼も、さっきのわたしと同じように 店員が戻ったのを見送ってから話し出した。
「なぁ、蓮」 「なに?」 わたしがそう返すと、彼は一口水を飲み、言った。 「俺さ、」 そう言ったあと、すこしの静寂があった。 わたしは、何故か急かすようなことはしなかった。 深呼吸をして、彼は口を開いた。 「蓮って、徹のこと好きなんだと思ってた」 思わず、飲んでいた水を吹きそうになる。 頑張ってこらえて、わたしは「え?」と言った。
彼は少し驚いた顔で聞いた。 「え、もしかして徹のこと好き、なの?」 そう言ってる相川君は、どこかあせってる様にも見えた。 わたしは笑顔で返す。 「ううん。中澤君は、ただの友達」
NO.126 郁
08/10(日) 22:22 IP:218.220.59.174 削除依頼
聞いた途端に、彼の顔がみるみる笑顔になっていく。 つられて、わたしもずっと笑顔だった。
「食べよっか」 そう彼が言ったので、「うん」と返した。 料理に目をやってみると、とても美味しそうだった。 そっと一口食べてみる。
「ん!」 その料理は、見た目どうりとても美味しかった。 相川君も、美味しい、と言いながら 黙々と食べ進めていた。
―ああ、ほんとうに美味しいなぁ…。 そんな事を思いながら食べていると、 気づくと食べ終えていた。 相川君は少し前に食べ終えていたようだった。
店員が来て、皿を下げる。 戻ったかと思うと、すぐに戻ってきた。
「レモンティーです」 そういいつつ、わたし達の前に一つずつコップを置いていく。 「ごゆっくりどうぞ」 そう言うと、店員はそそくさと戻っていった。
NO.127 朱雀
08/10(日) 22:29 IP:121.58.183.208 削除依頼 - 初めまして、朱雀といいます。
題名に惹かれてクリックしてみると とても素敵なお話でした。 ほのぼのとした雰囲気がよくて読んでいて和みます。 蓮ちゃんの性格も個人的に好きです。 無駄な改行をしないようにするのはすっごく いいことだと思います。 短編は改行をたくさんする方が多いので。 大変かとは思いますが更新頑張ってください。
郁さまの文才に憧れつつnextです。
NO.128 郁
08/10(日) 23:22 IP:218.220.59.174 削除依頼 *朱雀さま
はじめまして。そしてコメントありがとうございます。 感想をたくさん言ってくれて嬉しいです。 改行のことは前から悩んでいたので、 そう言って頂けると、やめてよかったと思います。
ネクストありがとうございます!
NO.129 郁
08/10(日) 23:35 IP:218.220.59.174 削除依頼
「蓮、飲んでみなよ」 いきなり相川君がそう言うものだから驚いた。 だけど、どんな味なのか気になる。 「うん」 わたしは無意識に返事をしていた。
飲むとは言ったものの、この状態では飲みづらかった。 相川君が、ずっとわたしの事を見ているのだ。 少し、頬が熱を持つのがわかった。 ばれてなきゃいいけどなぁ。
相川君はいつまで経ってもわたしの事を見ているので とうとう、わたしは飲んだ。 相川君が笑顔になった。
「どう? おいしいでしょ?」 そう聞いてくる彼が、とても愛らしく思えた。 わたしは答える。 「うん。すっごくおいしい」 今まで、こんなにおいしいの飲んだ事ないよ、と付け足した。
それを聞いた相川君は、満足そうに 「そうだよね」 とうなずき、レモンティーを飲み始めた。 この時の彼は、小さな子供のように思えた。
NO.130 郁
08/11(月) 15:04 IP:218.220.59.174 削除依頼
レモンティーも飲み終え、勘定を頼んだ。 わたしは全部払おうと思ったんだけど、相川君が 「レモンティーだけでいいよ」 なんて言うものだから、甘えさせてもらった。
店を出る。人がすこし増えていた。 「どこか行く?」 わたしたちは、もう目的を果たしていた。 相川君が口を開く。 「うーん。とりあえず、どっか座れる所探す?」 わたしは、その誘いに乗ることにした。
少し歩いた先にみつけたのは大きな公園だった。 ちょうどベンチが空いていたので、そこに座る。 「ふー。暑いね」 「うん。暑すぎる」 そう言ったきり、どちらも口を開かなくなった。
10分ほど経っても、まだ黙り込んでいた。 相川君が口を開く。 「ねぇ、蓮。今日はもう無理だけどさ、」 「んー?」 「今度、プール行こうよ」 少し、本当に少しだけ間をおいて答える。
「うん、行こう!」
NO.131 郁
08/12(火) 19:55 IP:218.220.59.174 削除依頼
この暑さはまだまだ続く。 夏も、ついさっき始まったばかりだ。 今年の夏は、いつもと違う気がする。 どこまで楽しめるだろう。 わたしは、もう暑さの事は忘れていた。
プールへ何度も行こう できることなら海へ行こう みんなで花火をしよう 一緒に星を見よう 夏が始まったばかりでよかった。
「相川君」 わたしが呼びかけると、彼は少し考えて 「ちょっとストップ」 わたしをとめた。 「“相川君”はもうやめない?」 その言葉を聞いたとき、ちょっと期待した。 そして、彼はわたしの期待通りに言ってくれた。 「名前で呼んでよ」
NO.132 郁
08/12(火) 20:36 IP:218.220.59.174 削除依頼
少し前から、名前で呼びたいと思っていた。 だけど、なんだか今更な感じがして言い出せなかった。 ああ、嬉しい嬉しい嬉しい! わたしはその気持ちを隠さずに言う。 「わかったよ、奏汰!」 この時、奏汰の頬が少し紅くなっていたような気がする。
「ねぇ、プール行くのはいいんだけどさ、」 わたしは、そこで一度言葉を切った。 「いいんだけど?」 奏汰は言葉を繰り返して聞いてきた。 「いやね、言いにくいんだけど、わたし水着持ってない」 少し考えたそぶりを見せて、奏汰は言った。 「よし、買いに行こう!」 そう言って立った彼が手を差し出してくれたので、 わたしはその手を迷いもなくとった。
NO.133 郁
08/13(水) 18:55 IP:218.220.59.174 削除依頼
彼について歩いていたわたしは、見たことのある景色にぶつかった。 「あ…、ここって、」 ―アクセサリーを買ってもらったお店がある所だ。 「ここならあると思って」 そう言った彼の笑顔は、とても綺麗だった。
辺りを見回して好みの店を探す。 ちょうど目に入った店は、わたしの好みだった。 「あ、あそこ見てもいい?」 「うん、行こう」
入ったその店は、値段も手ごろだった。 水着は少ししか置いてなかったが、いいものがあった。 「あ、これかわいい!」 思わず声を上げたわたしの横で、彼が言う。 「ほんとだ。蓮に似合いそう」 子供っぽく笑う奏汰につられて、わたしも笑顔になった。
NO.134 郁
08/15(金) 22:51 IP:218.220.59.174 削除依頼
レジをすませ、店を出た。 太陽は少し傾いていて、だけどまだまだ暑かった。 数歩進んだだけでも汗が出てくる。 「暑いねー…」 「うん。この後どうする?」 わたしは暑さで少しボーっとしてる頭で考えた。
しばらく無言で歩き続けた。 わたしはついて歩いてただけだけど、 きっと彼も行き先は考えていないだろう。 「ねぇ」 そう言いつつ、彼は足をとめ振り向いた。
下に向けていた顔をあげ、精一杯元気そうな顔で返事をする。 「うん? どしたの」 わたしが暑さで疲れているのに気づいたのか、彼は言う。 「疲れてきたし、そうだなぁ…、映画館でもどう?」 おごるよ、そう付け足した彼は全然疲れてなさそうに見えた。 汗すら、そんなにかいていない。 ―タフだなぁ。 そう思いつつ返事をし、わたし達は映画館に行く事になった。
NO.135 aiko
08/16(土) 11:43 IP:219.196.146.227 削除依頼 こののほほんした空気が ホントたまらないです(ノω`*)← 更新頑張ってください..* ねくすと!
NO.136 郁
08/16(土) 20:48 IP:218.220.13.195 削除依頼 *aiko様
また来てくださってありがとうございます! なんとかこの空気を保っております← ネクストありがとうございます!
NO.137 郁
08/16(土) 22:28 IP:218.220.13.195 削除依頼
やっとの事で映画館についた。 やっぱり奏汰はタフだ。 見るからに疲れていないのがわかる。 一方、わたしはと言うと 「ごめんね、疲れた?」 と言われるほどに疲れていた。
わたしは、夏の暑さに弱く、さらには貧血ぎみだった。 だけど、そんな弱いところは見せたくなかったので、 「ううん、平気」 と笑顔で言った。
「どの映画みたい?」 「うーん…。あ、これがいい!」 わたしが選んだのは、とても話題になっていた 感動系の映画だった。 彼は優しい笑顔で、じゃあこれにしようと言った。
奏汰におごってもらい、わたしたちは中に入る。 「ポップコーン食べる?」 そう聞かれたが、わたしは正直に答えた。 「ううん、いい。ポップコーン苦手なの」 奏汰は、へへっと笑いながら言った。 「あ、そうなんだ。実は俺も食べれないんだ」 なんだか、嬉しかった。
NO.138 郁
08/17(日) 20:20 IP:218.220.1.32 削除依頼 主です。 時間がないのであげます(´・ω・`)
NO.139 郁
08/18(月) 16:43 IP:218.220.6.207 削除依頼
二時間弱、わたしたちは映画に熱中していた。 そして、とても感動した。 外に出ると太陽は傾いていて、 暑さも少しはましになっていた。
感動ものの映画だったせいで、わたしはまだ少し 泣いていたが、隣で奏汰も泣いていたので 恥ずかしさはなかった。
涙声で奏汰は言った。 「公園探そうか」 わたしは笑顔をつくって答えた。 「うん」
そして、わたしたちは公園を探していた。 十数分歩いたであろうとき、広場を見つけた。 「ここでいい?」 「いいよ」 その広場に、人影はほとんどなかった。
ベンチに腰かけると、彼が話しかけてきた。 目の前に、少しの距離を置いて噴水があった。 「面白かったね、あの映画」 「うん。とっても」 もう涙は引っ込んでいた。 「特に、主題歌が好きなんだよね。わたし」 そうわたしが言うと、彼が面白がるような顔で言った。
「じゃあ歌って」
NO.140 姫愛梨
08/22(金) 11:09 IP:211.19.104.251 削除依頼 - ねく!
NO.141 郁
08/22(金) 12:19 IP:218.220.12.37 削除依頼 *姫愛梨さま
ネクストありがとうございます!
NO.142 郁
08/22(金) 12:26 IP:218.220.12.37 削除依頼 *みなさま
色々ありましたが、小説が消えなくてよかったです。 消えてたら、もう書かないつもりでした← それでは、ひきつづきお楽しみください。
***
「…え?」 思わず聞き返してしまう言葉だった。 奏汰はもう一度言う。 「歌ってよ、主題歌」
わたしは焦っていたが、奏汰はそんなこと気にも留めない様子で話す。 「俺さ、蓮の声好きなんだ」 そう言った中の、“好き”という言葉にどきっとする。 「あ、ありがとう」
そして、思い切って言った。 「でも、こんなところで歌うのは嫌かな」 すると彼も納得したようで、 「ま、そうだよな」 とだけ言って黙りこんだ。
夕日をあびた噴水の水がきらきら光る。
NO.143 郁
08/22(金) 12:47 IP:218.220.12.37 削除依頼 綺麗だな、と思いながら見つめていた。 奏汰が話し始める。 「ねぇ、蓮」 わたしは前を見たまま答えた。 「なーに?」
奏汰は何かを言いかけてやめ、すこし間をおいて言った。 「また遊ぼう」 たったそれだけの言葉にどきっとする自分が嫌だ。 だけど、それを止める事はできない。 「うん」 やはりわたしは前を見たまま答えた。
「よし、帰ろう」 奏汰は立ち上がる。 そっか。もうお別れだ。 今更気づいたわたしは、とつぜん悲しくなった。 「どうした?」 座ったままのわたしに、奏汰が不思議そうに聞いた。 「ううん、なにも」 そう言って、わたしも立ち上がる。 ―奏汰の手をとって。
NO.144 郁
08/22(金) 13:14 IP:218.220.12.37 削除依頼 わたしたちは帰り道を歩いていた。 奏汰もわたしに速さをあわせて歩いてくれている。 だけど、どちらも口を開かずに歩いていた。 なにを話していいのか分からなかった。
「蓮」 名前を呼んだその声が、なぜか遠くに聞こえた。 とても澄んでいて綺麗な声。 ―わたしも、奏汰の声が好きだ。 「なに?」
奏汰のほうに振り向くと、目が合った。 『ずっと見てたの?』 そう心のなかで問いかける。口には出せなかった。 奏汰は黙りっぱなしだ。 「どうしたの?」 わたしが言い終えたのと、ほとんど同時の事だった。
不意に抱きしめられた。 「そ、奏汰? どうしたの」 辺りに人が居なかったので、奏汰を振り払うような事はしなかった。 奏汰はずっと、ずっと黙っている。 「ねぇ、奏汰?」
「好き」
NO.145 郁
08/22(金) 13:23 IP:218.220.12.37 削除依頼 頭の上からそう聞こえた気がした。 「え…、」 「好き」 頬が紅くなっているのが自分でもわかる。 わたしが黙っていると、奏汰は離れた。
「ごめん、嫌だよな」
そう言った奏汰はとても悲しそうな笑顔だった。 「気にしないで」
―気にしないでいられるわけないじゃない。 そんな…、今にも泣きそうな笑顔で、 告白されて。
「嫌だ」 そう言ったわたしは、すこし涙声になっていた。 「気にする」 奏汰は驚いてわたしを見ている。
「だって、…わたしも好きだから」
奏汰は、まだ驚いているようで、固まっていた。 今度はわたしから奏汰に抱きつく。
「好き」
その言葉を聞いて、奏汰は笑顔になった。
「好きだよ!」
NO.146 kiki
08/22(金) 13:26 IP:219.16.69.252 削除依頼 - なんかほのぼのしてすごいいいです(^ω^)
次も期待してますw
NO.147 郁
08/22(金) 13:36 IP:218.220.12.37 削除依頼 - *kikiさま
ありがとうございます(*・ω・*)
NO.148 郁
08/22(金) 14:01 IP:218.220.12.37 削除依頼 わたしたちは、帰り道を歩いていた。 さっきまでとほとんど同じ。 違うところといえば、
かわっていく景色と 消えていく飛行機雲と それと、繋いだ手ぐらいだろうか。
この暑さはまだまだ続く 夏も、ついさっき始まったばかりだ 今年の夏は、いつもと違う気がする どこまで楽しめるだろう
プールへ何度も行こう できることなら海へ行こう みんなで花火をしよう 一緒に星を見よう すべて、あなたと一緒に。
夏が始まったばかりでよかった。
end
NO.149 郁
08/22(金) 14:07 IP:218.220.12.37 削除依頼 *みなさま
どうも、郁です。 少し短くなってしまいましたが、どうでしたでしょうか? 楽しんでいただけたのなら幸いです。
この、* レモンティーとわたしの絵 は わたしの初の作品で、最後まで書けたのでよかったと思っています。 ログもとりたかったのですが、とれずじまい(´・ω・`) もしも、とってあげる! とか言ってくださる人が居るのでしたら お願いします(*・ω・*)居ないと思いますが…。
2作目は、まだ考えておりません!← ですが必ず書きますので、そのときはチラッとのぞいてやってください。
それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました!
郁
NO.150 姫愛梨
08/22(金) 14:27 IP:211.19.104.251 削除依頼 - あー面白かったです。
こんな素敵な小説にめぐり合えて私は幸せです。 お疲れ様でした。 第二作目はこれの続編だといいなぁ〜 とか一人で思ってます。
NO.151 郁
08/22(金) 14:33 IP:218.220.12.37 削除依頼 - *姫愛梨さま
ありがとうございます。 そんなにほめて頂いて、ほんとにありがとうございます!
続編いいですね(*・ω・*)
NO.152 郁
08/22(金) 15:05 IP:218.220.12.37 削除依頼 続編、いいなと思ったんですが、やっぱりやめる事にします。 ログとっていないので、 これを見てない人にはわかりづらいし…と思いまして。 ほんとすいません(´・ω・`)
次は、軽音楽部の女の子の恋愛話を書こうと思います。 タイトルは、
* きみへ贈るわたしの音
とさせてもらう予定です(*・ω・*) 姫愛梨さん、ごめんなさい(´・ω・`)
NO.153 aiko
08/23(土) 11:48 IP:219.196.146.227 削除依頼 完結おめでとうございます!!(∀)..* 最後までのほほんしてて すごい心が和む作品で良かったです★ 締めくくり方も最高でした(´`* 蓮ちゃんと奏汰くんの想いが通じあって 本当によかった…。+ 郁さま、こんな素敵な作品に出会わせてくれて 本当にありがとうございました!
NO.154 姫愛梨
08/23(土) 18:44 IP:211.19.104.251 削除依頼 - そうですかorz
がんばってください
NO.155 郁
08/23(土) 23:08 IP:218.220.12.225 削除依頼 - *aiko様
こちらこそ、最後まで付き合ってくださり 本当にありがとうございました! 締めくくりは一番迷ったんで、そう思っていただけたならよかったです。
*姫愛梨さま
本当にごめんなさい(´・ω・`) ログとってないと、やっぱり分かりづらいなぁと思いまして…。 ですが、続編と言って頂いて嬉しかったです! ありがとうございました。
このタイトルには現在155件の投稿があります。最大500件まで投稿できます。 |