東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

自民総裁選 醜態の総括をまず語れ

2008年9月6日

 福田康夫首相の退陣を受けた自民党総裁選が候補者乱立の様相を見せている。派手な演出で総選挙へ、との思惑が透ける。政策論争は当然だが、この政治空白の総括はどうしたか。そこから始めよ。

 自民党が後継レースで活気づく。麻生太郎、与謝野馨、石原伸晃、小池百合子の四氏が名乗りを上げ、石破茂氏も続いた。推薦人を確保できるかはともかく、出馬に意欲を示す若手も複数出た。

 総裁選びの動向をメディアが盛んに取り上げることもあって、世論調査では党支持率がアップした。小沢一郎代表の無投票三選が固まった民主党はかすんでしまった。巧みな「局面転換」ではある。

 ただ、候補の乱立傾向は党の秩序が崩れていることや、求心力のある人材の枯渇を逆説的に物語っているのではないか。

 出馬表明したり意欲のある議員に聞きたいことがある。安倍晋三前首相、福田首相と、政権投げ出しが二年続けて起きた。国民には失態と映っている。そのこと自体をどう総括しているのか。

 首相が掲げる道路特定財源の一般財源化や消費者庁設置は退陣で中途半端になった。北朝鮮は拉致再調査の延期を通告してきた。

 自分たちの選んだトップが招いた政治の機能不全をどう考え、そこからどんな教訓を得ているか。世襲議員のひ弱さ、首相としての資質の欠如が指摘されている。自らを省みて臨んでほしい。

 総裁選は十日に告示され、全国十八カ所で街頭演説が予定されている。論争の柱として経済政策が挙がる。景気対策優先の麻生氏、財政再建の与謝野氏、小泉改革の継承を唱える石原、小池両氏に徹底した路線論争を望む。

 財政規律を堅持するとしながら福田内閣は公明党が求める定額減税をのんだ。「バラマキ批判」が出ている。政府・与党の責任者である麻生、与謝野両氏も、小池氏の後ろ盾とされる中川秀直氏も同調している。差は小さい。これでは争点から外れかねない。

 候補者たちの霞が関との距離感も聞きたい。民主党は官僚システムの抜本改革を主張する。次の総選挙の大きな争点だ。

 自民党の「賞味期限切れ」が取りざたされて久しい。演出過剰のお祭り騒ぎの空虚さは国民に見透かされるのではないか。

 二代続いた醜態に、ここできっちり区切りをつけておかなければ、いずれ「二度あることは三度」になってしまう。

 

この記事を印刷する