世界の身体障害者がスポーツの力と技を競う北京パラリンピックが6日開幕する。五輪の感動が今も残る同じ競技施設を舞台に陸上や競泳、車いすバスケットなど20競技に148の国と地域から選手ら約6700人が参加、日本からも17競技に162人の選手が出場する。各国選手や開催国・中国のボランティアの人たちとの交流を通じて友好の輪を広げてもらいたい。
五輪とパラリンピックの連携は大会ごとに強まっている。今回の北京大会は一つの組織委員会が両大会を運営する。この傾向は今後も強まりそうだ。
その結果、五輪選手とパラリンピック選手の待遇面の「格差」など、これまで見逃されてきたさまざまな問題点も浮き彫りにされるようになった。
障害を持つ選手は、当然のことながら競技を続けていく上で五輪選手よりも多くの問題を抱えている。
パラリンピック出場経験者らで組織する日本パラリンピアンズ協会がこのほど北京大会の出場者と2年後の冬季大会の強化指定選手を対象にアンケートを実施した。それによると、競技を続けていく上で「困っていること」は(1)費用がかかる(82・9%)(2)練習場所がない(42・8%)(3)仕事に支障が出る(38・8%)--が上位を占めた。
(1)の費用に関しては、81・6%の選手が遠征費を、76・3%が合宿費をほぼ全額自己負担し、1年間で競技にかかる費用は平均110万円だった。(2)の練習場所では縦割り行政の弊害も影を落としている。
日本の競技力向上の拠点は今年1月、東京都北区西が丘にオープンしたナショナルトレーニングセンターと、隣接するスポーツ科学センター(01年完成)だ。文部科学省所管の独立行政法人が運営しており、五輪選手の強化が目的だ。厚生労働省が所管するパラリンピックの選手の使用は原則として認めていない。
北京五輪期間中、パラリンピックの競泳日本代表選手がスポーツ科学センターのプールで初めて合宿を行った。画期的なことだったが、同センターによると「あくまでテストケース」(笠原一也センター長)で、今後の使用については関係機関と調整するという。障害者が使用するための諸設備が整っていないことなどの理由もあるが、考え直す必要がありそうだ。
8年後の16年夏季五輪には東京が立候補している。招致に成功すればパラリンピックも同時に行われる。五輪とパラリンピックを切り離した旧来の発想では国際オリンピック委員会の支持を得ることはできまい。
パラリンピックに参加する選手一人一人が乗り越えてきたハードルを思うとき、「日本代表」の重みは五輪をしのぐものがある。北京での感動のドラマの続編を楽しみにしたい。
毎日新聞 2008年9月6日 東京朝刊