東急東横線の渋谷駅に出没したサル=20日、東京都渋谷区、東急電鉄提供
ビルのベランダの手すりに座るサル=5日午前10時、東京都千代田区神田駿河台、石橋拓史さん提供
東京都心・神田のビル街にサルが連日のように出没し、騒ぎになっている。その度に警察官が網を片手に出動するが、逃げられるばかりだ。都内では8月中旬から東急電鉄渋谷駅など各地で目撃が相次いでおり、警視庁や都は同じサルの可能性が高いとみている。神田での「滞在」は6日で目撃から1週間を超えた。
「ビルとビルの間にサルがいます」。5日は午後1時40分ごろ、千代田区神田淡路町での目撃情報が神田署に寄せられた。交番の警察官は自転車を走らせ、署員はパトカーで現場に急行。カメラ付き携帯電話を持った住民らが見守る中、サルはビルとビルのすき間でじっとし、時折、毛繕いをしていたという。警察官7人が張り込み、都から捕獲用のかごを借り、餌を入れて誘い込む作戦だった。だが、約2時間後、かごが届く前に一瞬にして逃げ去った。
サルはこの日朝にも目撃されていた。「電線を伝わって、あれよあれよと逃げていった」と近くに住む主婦の福村成子さん(78)。「サーカスのように屋上からベランダ、電線を伝っていった」。1日朝、自宅前のビル屋上にサルを見つけた石原慶三さん(77)は、神田に住んで40年。「サルを見たのは初めてだよ」と驚く。
同署には最初に目撃情報があった8月30日以降、毎日のように寄せられる出没情報は5日までに計15件になった。人への危害を防ぐため、情報のたびに出動した署員は延べ約100人。しかし、屋上や路地に追い込んで網で捕獲しようとすると、するりとかわされ、あっという間に逃げられるという連続だった。
都によると、都内での目撃情報は8月12日、小金井市であったのが最初。以降、世田谷区、渋谷駅、新宿区、千代田区と西から東へと移動している。しっぽが短く、顔が赤いことからニホンザルとみられ、体長は約60センチ。いずれの目撃も1匹ずつで、同じサルとみられている。動物園からサルが逃げたという情報はなく、野生の可能性が高い。
1週間前に神田に出没したサルは、ここ数日は神田淡路町付近の狭い範囲にとどまっているようだ。神田署幹部は「なぜ神田なのか」と首をひねる。上野動物園教育普及係では「野生のサルは奥多摩などにおり、電車の線路に沿って来たのかもしれない。安心できる場所を求めているのだろうが、サルに聞いてみないと分かりません」。