岡山市が二〇〇九年四月一日に政令指定都市に移行することがほぼ確実となった。総務省を訪れた高谷茂男市長、石井正弘岡山県知事らに対し、増田寛也総務相が「作業を進めていく。良い政令市にしてほしい」と前向きの意向を示したからだ。政令市移行が内定したといえよう。十月下旬にも閣議決定される見通しだ。
政令市移行の要件は、国の市町村合併支援プランによって緩和され、人口七十万人が目安となった。岡山市の場合は〇七年に合併した旧建部町、旧瀬戸町合わせても〇五年国勢調査では七十万人に届いていない。ただ、岡山県の統計では〇七年八月に七十万人を突破し、増加傾向にある。人口要件だけでなく、岡山市の都市機能や行政能力なども総合的に評価しての内定であろう。
移行すれば、全国で十八番目の政令市となる。中四国地域では広島市に次ぎ二番目である。都市の格が上がり、岡山市の全国的な知名度は高まろう。
すでに、移行時に市域を分割して設ける「区」は四区とすることや、区名を「北・中・東・南」とする案などを決めている。政令市実現の足音がはっきりと聞こえだしたことで、市民は自分たちの住む地域の未来図をどのように描き、どうかかわっていくのか、より具体的に議論していく必要がある。
残念ながら、政令市へ向けての市民の盛り上がりはいまひとつといわれる。なぜ政令市でなければならないのか、政令市になって良い点、悪い点などに対する理解が十分ではないのだろう。岡山市は関心を高めるさらなる取り組みが重要だ。
市民も行政頼りの受け身から脱皮したい。政令市になれば、多くの権限が与えられ、主体的なまちづくりが可能になる。風土に根付き、暮らしやすい個性的なまちにすることも夢ではなくなる。権限は拡大しても、行政の押しつけであっては市民は納得や満足はできまい。市民自らの主体的な参画が欠かせない。せっかく手に入れる権限を使いこなさないのではもったいない。
住みやすいまちにしようと自らが動けば新たな課題が発見でき、解決に向けた行動につながろう。さまざまな団体と連携を強めるきっかけにもなる。市民の提案を政策に反映する制度の充実とともに、市民も新しい岡山市をつくるために一歩踏み出す勇気を持ちたい。
魅力あふれる政令市は、岡山県内だけでなく中四国地域に活力をもたらそう。この地域のリーダーとしての自覚も大切だ。
はしかの流行を予防するため、今年四月から全国で始まった十三歳と十八歳の全員を対象にしたワクチンの追加接種が低迷している。
厚生労働省の調べでは、積極的に接種を求める重点期間としていた六月末までの接種率は十三歳が38・8%、十八歳は29・6%にとどまった。はしかの流行を抑えるには、最低でも95%の接種率が必要とされる。対策の強化が急務だろう。
はしかは、免疫のない人が感染するとほぼ100%発病する。発熱や発疹(ほっしん)などに加え、重い合併症や死につながる恐れもあるとされる。軽い病気と侮るのは危険だ。
昨年、全国の学校で休校などが相次いだ大流行は記憶に新しい。かつては一回の接種が奨励されていたが、効果が薄れるなどの問題が指摘された。
このため二〇〇六年から就学前までに二回の接種を呼び掛けることになったが、昨年の大流行を受け、二回接種の機会から漏れた就学後の子どもたちへの対策として追加接種が始まった。個人が医療機関で接種を受けるが、費用は公費で賄い原則として無料である。
今回の接種率調査では、全国的に追加接種が進んでいない現状が明らかになったが、地域によって大きな開きがあることも分かった。都道府県別でみた十三歳の接種率は、最高の71・2%から最低の24・4%まで大差があった。十八歳でも同様の傾向だった。
さらに市町村の中で、接種率がゼロの所も少なくなかった。行政や学校などの取り組みの違いだろう。関係者は、はしかの危険性に対する認識を強めてもらいたい。未接種者を確認し接種呼び掛けを徹底すると同時に、集団接種の必要性なども議論を深める必要があろう。
(2008年9月5日掲載)