学校や教師に理不尽な要求を突きつける保護者を指すモンスターペアレント。その存在は教育現場だけに限った話ではなさそうです。
地場企業を取材している経済部の記者によると、企業版モンスターペアレントと呼べるような親もいるそう。例えば、新入社員でしょうか、残業で夜遅い帰宅が続けば「うちの子を遅くまで働かせないで」と会社へ要求する親がいるとか。
また「もっと優しく、子どもをしかってほしい」と言ってきた親もいるらしい。こっぴどく上司にしかられたのを家で報告した末の出来事でしょう。
先日、百貨店の玩具売り場で遭遇したのは、別の意味でモンスターぶりを発揮する親の姿でした。買う当てもないまま、おもちゃを触っていた幼子に向かって「○○(名前)! 触るな言ようろーがー」と、男のきつい口調でしかりつける母親の声が響きました。身なりはごく普通のお母さん。怒鳴り声の激しさと、おとなしそうな格好とのギャップは「本当にこの人の声?」と思うほど。
世の中にはさまざまな生態の親がいるようです。その家庭、家庭では、いずれも常識なのでしょう。厳しくしかった上司をただすのは、常識というより、むしろ正義でさえあるのかもしれません。公衆の場での大声の叱責(しっせき)も、しつけの一環との考えもあるでしょう。
個性や個人の主観が尊重される昨今。そんな親の姿を当然と思う人がこの社会でじわりと広がっていないとも限りません。ただ、少なくともわたしには、まゆをひそめたくなる類の怪物です。
(経済部・小松原竜司)