太陽が完全に月に隠れる皆既日食は、起こっても見られる地域が極めて限られる。来年七月二十二日に起きる皆既日食では種子島の南のトカラ列島が貴重な観測地になる。
岡山県近辺でも太陽が八割以上欠け、十分に見応えがあるはずだが、皆既日食の魅力は格別という。渡部潤一・国立天文台准教授は著書「星空を歩く」で、その雰囲気を「荘厳」と表現している。
実際に皆既日食を見ると、天の岩戸伝説はいかにもこの現象が下敷きと思えるそうだ。特に後半、天照大神(あまてらすおおみかみ)を苦労して引き出すあたりは、月の陰から徐々に太陽が姿を現す時と雰囲気が重なると言っている。
トカラ列島で最も条件のよい悪石島を含む鹿児島県十島村は、天文ファンの受け入れ準備に大わらわだそうだ。何しろ人口約六百四十人の村に来訪を希望する人数は海外組を含めて一万人とみられ、村では抽選によって千人に絞り込む。
小中学校の校庭を開放し、簡易トイレなども準備する予定だ。ごみやし尿の処理をどうするかが悩みという。知名度のアップや経済効果が、頑張りの原動力だろう。
政界では民主党代表選や自民党総裁選があり、総選挙も続きそうだ。選挙には経済を押し上げる力もある。これを機会に隠れた太陽が姿を現すように、景気が明るくならないものか。