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映画:「新・あつい壁」 21・23日、さいたま・深谷で県内初上映 /埼玉

 ◇ハンセン病患者の冤罪事件テーマ 「差別のために命まで犠牲に」--入間在住の映画監督、中山節夫さん作品

 ハンセン病問題などの映画を撮り続ける入間市在住の映画監督、中山節夫さん(71)の映画「新・あつい壁」(07年作品)が、21、23の両日、さいたま市と深谷市で県内初上映される。ハンセン病患者の男性が、冤罪(えんざい)を訴えながら死刑執行された実際の事件をテーマにしており、中山監督は「差別のために命まで犠牲にした人がいると知ってほしい」と話している。【弘田恭子】

 テーマになった事件は、1950年代に熊本県で起きた。村役場の元職員が殺害され、ハンセン病患者の29歳の男性が逮捕された。男性は最高裁まで争ったが、「元職員が県に、男性がハンセン病患者と通報したことへの逆恨み」による犯行とされ、死刑判決が確定。3度目の再審請求が退けられた62年、40歳で死刑が執行された。ハンセン病患者を療養所に強制隔離する「無らい県運動」の象徴とされる事件で、現在も誤判の可能性が指摘されている。

 映画は、フリー記者の青年が、約50年前のこの事件の取材を進める中で、ハンセン病に対する差別や偏見に迫るストーリーで、左時枝さんらが出演している。

 中山監督は、国立ハンセン病療養所「菊池恵楓(けいふう)園」のある熊本県合志市出身。中学1年の時、同級生に誘われて園を訪ねた。園の医者が、マスクや手袋をしたまま入所者を診察すると聞き、「素手で診察して入所者を喜ばせたい。医者になろう」と思ったという。だが、その場で入所者から差し出されたまんじゅうは、食べられなかった。「自分にも無意識の差別や偏見が染みついていた」と振り返る。

 「隔離された入所者の声を伝えたい」と69年、入所者の子供が小学校への通学を拒否された事件をテーマに、映画「あつい壁」を製作。97年には元患者へインタビューしたドキュメンタリー映画「見えない壁を越えて」を製作した。

 中山監督は「まんじゅうが食べられなかった私にも、ハンセン病になるなら死んだ方がましと思った市民一人一人にも責任がある。映画を見て、自分の心にある差別や偏見について考えてほしい」と話している。

 上映は、埼玉会館(さいたま市浦和区高砂3)で、21日14時と18時半の2回。深谷市民文化会館(本住町)で23日14時半。当日一般1300円。問い合わせは埼玉映画文化協会(電話048・822・7428)。

毎日新聞 2008年8月21日 地方版

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