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2008-07-16 大阪の精神科薬物(?)による死亡事故について

[]大阪の精神科薬物(?)による死亡事故について


報道

読売新聞および朝日新聞によると、

  • 14日午前6時頃、大阪市生野区の祖母宅で西宮市の少年(14)が死亡。
  • 少年の兄(17)が「弟が眠れないというので、午前1時頃、計5〜7錠の薬剤を弟に飲ませた」と供述。
  • その薬剤の内訳は、4〜5錠が「ベゲタミン」、残りが「デパス」だと供述。兄は無事。
  • 弟が飲んだ薬剤は、兄が大阪市中央区アメリカ村*1で購入したものと供述。
  • ちなみに、兄は同じ薬剤を普段から睡眠目的で使用しており、同日も服用したと供述。
  • 15日、大阪府警司法解剖の結果、死因は急性薬物中毒。量や成分は鑑定中。

ということである。


ベゲタミン」「デパス」とは何か?

ベゲタミン」は塩野義製薬が製造販売する医療用医薬品のブランド名である。成分の量の異なる「ベゲタミンA」と「ベゲタミンB」が存在する。ともに1957年に発売開始された歴史のある薬であり、不眠症の治療薬としてを今日まで使われている*2ベゲタミンAは、クロルプロマジン塩酸塩25mg、プロメタジン塩酸塩12.5mg、フェノバルビタール40mgの3種の薬物を成分としている。一方のベゲタミンBは、これより少ない量の、クロルプロマジン塩酸塩12.5mg、プロメタジン塩酸塩12.5mg、フェノバルビタール30mgを成分としている。規制区分はともに、劇薬、向精神薬、習慣性医薬品、指定医薬品処方せん医薬品である。

一方の「デパス」は、田辺三菱製薬が製造販売する医療用医薬品である。化学的にはベンゾジアゼピン類に分類され、催眠作用、抗不安作用、筋弛緩作用などを期待してさまざまに用いられる。具体的には、睡眠の導入、不安、抑うつ、頭痛、肩こりなどに使われる。劇薬にも向精神薬にも指定されておらず、ベゲタミンに比べると毒性は低い。悪性症候群などの原因となる可能性も否定できないが、数錠の服用で致死的な症状が出る可能性はたいへん低い。よって、亡くなった少年が実際にベゲタミンデパスを服用していた場合、今回の死亡事故ベゲタミンの過量摂取(乱用)によって引き起こされた可能性が高い。

なお、ベゲタミンデパスも、乱用が問題となった医療用医薬品リタリン」とは、構造上および効能上の関連性はまったくない


ベゲタミンの特徴について

ベゲタミンは、3種の医薬品成分を混ぜた塩野義オリジナルの合剤である。国外で使用されている例を私は知らない。催眠作用がとても強いので、嗜癖的に愛用する患者も多い。しかし、依存性が比較的強く、過量摂取時に重篤な副作用が現れることがあるため、現在では、他の催眠薬抗不安薬抗精神病薬などが効かない場合にのみ処方されるのが一般的である。個人的には「使い方の難しい薬」という印象を持っている。


睡眠薬のアンダーグランド取引について

睡眠薬アンダーグラウンドで取引されるケースは多い。とりわけ、レクリエーションドラッグと成りうるニメタゼパム、トリアゾラムゾルピデムフルニトラゼパムの流通に関する噂をよく耳にする。これらの睡眠薬は、医師や薬剤師から不正な目的で入手した正規の医薬品がほとんどと思われるが(安価であり犯罪上安全なため)、卸からの横流し(期限切れの医薬品など)があるという噂もある。また、ビニール袋などで販売されていた可能性もあるので本物のベゲタミンデパスであったかどうか分からない。大阪府警の調査で明らかになるだろう。

いずれにしても、不眠で悩んでいる方は、精神科・神経科・心療内科への受診をお勧めする。安全で安価である。たとえば、2週間分の処方に対して医院・薬局に払う金額は2000円程度である(3割負担の場合)。精神科等は予約制の医院が多く、また敷居が高いと感じる人もいるので、そういう場合は、内科の受診をお勧めする。実際に内科で睡眠薬を処方されている患者は多い(特に老人)。ちなみに、法的には、泌尿器科医でも産婦人科医でも睡眠薬の処方は可能である。


今回の報道が与える社会的影響について

死亡事故であるから報道する意義は十分にあるが、果たして具体的な薬物分類名や薬物名を公表する必要があったのだろうか。アンダーグラウンドで医療用医薬品が取引されている実情に警鐘を鳴らす意味では必要な報道であっただろう。しかし、「精神安定剤」「向精神薬」という表現を用いることによって、精神科の薬に対する誤解偏見を助長したおそれがある。これにより不眠症で悩んでいる人が睡眠薬を飲むことをためらい、心身の健康が損なわれたとしたら極めて残念である。また、具体的な薬剤名を公表することは、現在該当する薬剤を服用している患者に大きな不安を与え、コンプライアンス*3の低下につながる。ちなみに、埼玉県本庄市で起きた一般用医薬品による殺人・保険金詐欺事件*4では、具体的な薬剤名が報道されなかった(成分名は公表された)。


補足:規制区分について

  • 劇薬:「毒薬」の次に危険とされる特別な医薬品であり、薬事法第44条で「劇性の強いものとして大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品」と定められている。厳重な取り扱いが求められるため、「白地に赤い枠を書き、赤字で品名と『劇』の文字」を表示する義務がある。規制204条−別表3によれば、劇薬のおおよその基準は(ア)急性毒性が強いもの(イ)慢性毒性が強いもの(ウ)安全域の狭いもの(エ)中毒量と薬用量の極めて接近しているもの(オ)副作用の発生率が高いもの(カ)蓄積作用の強いもの(キ)薬用量において激しい薬理作用を呈するもの、とされている。ここでいう急性毒性は、LD50mg/kg*5を基準としており、劇薬の経口薬では300となっている。
  • 向精神薬:広義の「向精神薬」は精神に作用する薬といった程度の意味であるが、ここでは、麻薬及び向精神薬取締法によって定義された狭義の「向精神薬」を指している。同法に基づき、約80種の薬物が向精神薬の指定を受けている。意外に思われるかもしれないが、エチゾラムデパスの成分)、パロキセチンパキシルの成分)、カルバマゼピン(テグレトールの成分)、オランザピン(ジプレキサの成分)などは向精神薬の指定を受けていない。マル向の表示をする義務がある。薬局等では、鍵をかけた設備内で保管しなければならない。
  • 習慣性医薬品:習慣性があるものとして厚生労働大臣が指定する医薬品
  • 指定医薬品厚生労働大臣が指定する医薬品。高度な薬学的知識を求められるため、薬剤師は取り扱うことができるが、薬種商は取り扱うことができない。
  • 処方せん医薬品薬事法第49条で定められ、医師、歯科医師等の処方せんの交付を受けたものでないと購入できない医薬品のこと。ほとんどの医療用医薬品処方せん医薬品に該当する(例外:PL顆粒、ケナログ口腔用軟膏、医療用漢方製剤など)。


大阪五条通信ウェブラジオ版

ウェブラジオ版を作ってみました。興味のある方はお聴きください。

http://jp.youtube.com/watch?v=W6tdmWSxJBY

*1:五条註。大阪ミナミの繁華街。若者の街である。覚せい剤大麻、麻薬、合法ドラッグなどの違法な売買が行われており、一部は事件化している。

*2:鎮静を目的として投与されることもあるが現在では稀である。

*3コンプライアンスとは、患者が処方どおりに服薬できていることを指す

*4:余談であるが、17日、最高裁が上告棄却し、埼玉保険金殺人の首謀者である八木被告死刑が確定した。

*5:LD50は50% Lethal Doseの略であり、致死量の目安として用いられる。

2008-06-20 大阪サミットと西成暴動についての報道(まとめ)

大阪サミット西成暴動

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[][][][]大阪サミット西成暴動についての報道についての感想

厳しい報道規制が行われている一方で、新聞による報道は一部が許されているらしい。各社把握していると思うが、それぞれ報道できない事情があるのだろう。私はいわゆる既成左翼でもいわゆる新左翼でも何でもないが、私の住むこの都市で300人規模の暴動が起こっていることを知る機会が限られていることを残念に思う

*1:主にマスコミによる報道をベースに記述している。活動家側からの情報は各活動家のブログ等を参照のこと。

*2新左翼日本労働党」傘下

2008-05-20 助けてください

[]上山和樹さんとのトラブル

みなさんには隠していましたが、ここ数年、上山和樹さん(id:ueyamakzk)とのトラブルに巻き込まれ、彼から執拗な誹謗中傷を受けています。私が行っていない言動をあたかも事実かのように語り、その件に関して各種会合や議論グループのMLで非難しているのです。具体的には、「上山さんは活動をやめろ」という命令、会合時の敵対的な態度、電話における悪意のある発言、などを中心とした嫌がらせを私が行ったと彼は主張しています。しかしながら、いずれも事実無根であり、周囲の友人らも私を支持してくれています。

私は今、怖くてたまりません。たびたび彼から送られてくるメールの内容が高圧的なものになり、私が行った嫌がらせをウェブで公開すると脅迫をしてくるのです。幸い、公開はやめてくれたみたいなのですが、事態は流動的です。実のところ2005年に、彼から殺意を抱いている旨のメールを受け取りました。この件に関して彼は非常にしつこいのです。現在のところ私は無事ですが怖くてたまりません。何かあったらどうか助けてください。

[]現在の私について

現在、私は大学を卒業し、大阪府茨木市で単身生活をしています。生活はわずかなアルバイト代と両親からの援助に依存しています。ここ10年ほど精神疾患(うつ状態、不安障害)を抱えており、炊事・洗濯・掃除などの家事もままならない状態です。2月には自殺企図により入院をいたしました。幸いに、親切な友人、優秀な精神科医、そして理解ある両親に支えられており、比較的平穏に過ごしています。今後は資格(狭い業界なので何の資格かは非公開にさせてください)を取得し、それを生かした仕事に就くつもりです。なお、過去には、社会的ひきこもりについての情報サイトを運営しておりましたが、諸事情により現在は活動しておりません。

薬物療法(パキシル、エビリファイ、レキソタン、サイレース)による治療を試みていますが、経過は思わしくありません。アルバイトをこれ以上増やさないように精神科医に指導されていますが、経済的には厳しい状態で常に悩みの種です。精神疾患も10年を超えると、一体いつになったら治るのかと不安になります。認知療法も試みましたがうまくいきませんでした。上記のトラブルに関しても私が怖がりすぎなのかもしれませんが、このエントリーを書く手も震えています。もし私の状態を改善するためのアドバイスがあればコメント欄に書いてください。誰をどう頼っていいのかわかりません。

[]追記

  • id:ueyamakzk:20080522で上山さんが井出草平さんを批判していますが、ほとんどが根拠のない批判です。『論点ひきこもり』が閉鎖したのは、ほぼ100%上山さんの責任です。
  • 杉田俊介さんがid:sugitasyunsuke:20080525で、上山さんのトラブルに触れた上で、当事者として生きることの難しさについて書いています。興味深い文章でした。このエントリー(id:font-da:20080519#1211193844)も参考になります。
  • id:ueyamakzk:20080601で上山さんが「私の経験した私的なトラブルの対象者本人が、あからさまな虚偽の証言を公開で行なっている。」と書いていますが、おそらく対象者本人は私を指すと思われます。しかし、私は虚偽の証言を行っておりません。事実のみを述べています。