70年代に国の指導で地下に埋められた有害農薬の最終処理が頓挫している。国は国際条約を批准して来春までに処理を終える計画だったが、財政難から10道県で2083トンが地下に眠ったまま。地震で地中に漏れ出る危険もある。国は「税源は移譲した」との立場で、解決のめどが立っていない。
有害農薬が地下に埋設されることになったのは1971年、旧農林省が農作物に残留して体内に蓄積して健康被害を引き起こすとして、アルドリン、エンドリン、ディルドリン、BHC、DDTの5種類の有機塩素系農薬の使用を禁止。最終的には無害化処理が必要だが、当時は高温焼却などの技術はなかったため、地下に埋めるよう都道府県に指導した。30道県が計約4660トンを、プラスチックのコンテナに入れた上で、県有地や農薬メーカーの敷地などの地下にコンクリートの箱に密閉するなどして埋めた。
政府は02年、有害化学物質を規制する「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」を批准したことから、地中に埋めた農薬の最終処理を検討。条約に期限はないが、国は04年度から5年で処理する計画をたて、04、05両年度は国が費用の半分を負担する補助事業(各約4億円)を組んだ。しかし、国から地方に税源を移譲する三位一体改革で、06年に補助金は廃止になった。
農林水産省の4月時点の調査を基に朝日新聞社が調べた結果、30道県のうち20県で最終処理が完了していたが、10道県の120カ所で未処理だった。同省は犯罪予防や安全維持を理由に埋設場所は非公表としている。
05年の朝日新聞社の都道府県への調査で12道府県で周辺土壌や地下水への汚染が確認された。うち5府県では環境基準を上回っていた。その後、土壌の除去などが進められている。専門家からは地震などの災害時に地盤がゆるんで農薬が地中に漏れ出る危険性も指摘されている。