「戦争を永久に放棄する」と明記した憲法9条を守りたい--。この思いを共有する人々でつくる「九条の会」の結成が、県内で相次いでいる。憲法の平和主義を大事にしようとする人の輪は、政治的立場の違いを超え、草の根的な広がりを見せている。【奥村隆】
04年6月、作家の大江健三郎さんや小田実さん(故人)ら9人が「平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法九条を激動する世界に輝かせたい」と、「九条の会」アピールを発表した。これに応え、05年9月に「九条の会・わかやま」が発足。よびかけ人には、農協組合長、元県教育長、首長の後援会長、牧師、僧侶といった多彩な顔ぶれがそろった。同年末には弁護士や市民運動関係者らの「9条ネットわかやま」も活発に活動し始めた。「9条を守ろう」という一点で手をつないでおり、メンバーの支持政党はバラバラ、無党派の人も多く参加した。
その後、地域ごと、職場ごとに毎月のようにグループが発足した。現在、県内では100以上の団体が講演会や映画上映会などの活動を繰り広げている。
今年7月5日には和歌山市内で「9条の会交流集会」が開かれ、56団体が参加。「排除の論理をとらず、交流を進めよう」と確認し合った。実行委の阪中重良・副委員長は「一つの会で人数が増えることより、各地に上下関係のない多くの団体ができて、それぞれ創意を凝らして活動していることに意味がある」と語る。
堅苦しい「学習」一辺倒の平和運動ではない点も特徴だ。和歌山市立雑賀小の校区住民らが05年1月に結成した「雑賀9条の会」は、来月19日午後1時半から、同校近くの高津公園で「雑賀9条まつり」を初めて開く。戦争写真展のほか、腹話術、輪投げ、骨密度測定、フリーマーケット、福引などと盛りだくさんの内容だ。
事務局の阪上佳子さん(58)は「9条は政治の問題ではない。私自身も、戦争に取られるために子どもを産んだのではない。楽しい祭りを企画して、子連れの若い人にも関心を持ってもらいたい」と話している。
毎日新聞 2008年9月5日 地方版