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心臓移植、患者は待てない

 拡張型心筋症患者の千代窪洋輝(ちよくぼ・ひろき)さん(27)。今年5月に米国での心臓移植を決めたが、費用は9500万円で、募金が頼りだ。国内では2006年から心臓移植に保険が適用されるようになったが、国内での移植には平均で2年以上待つ必要がある。

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 「家族との当たり前の生活をさせてあげてください!」。8月下旬、小雨が降る中、埼玉県東部の春日部駅前で、心臓移植費用を集めようと「洋輝さんを救う会」が募金を呼び掛けた。救う会は、今年6月下旬に洋輝さん夫婦の友人が立ち上げ、10人のメンバーを中心に、支援者の力を借りながら、毎週末は朝から街頭募金を行っている。

 洋輝さんの息子、楓(かえで)君(4つ)と颯(はやて)君(2つ)も募金活動に参加しているが、遊びたい2人はおとなしくできない。妻の陽子さん(27)は2人の相手と募金に大忙しだ。

 同県吉川市に住んでいた洋輝さんは、06年6月に仕事帰りに心室細動を起こし、救急救命センターに搬送された。意識不明の状態が3週間続いた後、意識が戻り、拡張型心筋症と診断された。

 拡張型心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が変性し、心臓の内腔が拡大する病気で、原因は不明だ。洋輝さんはこれまで大きな病気をすることもなく、小学生から始めたバスケットボールを社会人になっても仲間と続けていた。発症の予兆もなかったという。

 ICD(植え込み型除細動器)の植え込み手術を行い自宅療養していたが、昨年2月に重症心不全となり、再び入院。この時心臓移植の選択肢があることを告げられた。

 10月に東京女子医科大東医療センター(東京都荒川区)に転院。今年5月に心臓移植の希望を伝え、米国のユタ大病院での受け入れが決まっている。
 だが、移植には医療費をはじめ、渡航費用や現地滞在費なども含め総額9500万円が必要だという。

■年2125人が移植を受ける米
 日本移植学会によると、心臓移植は06年4月から保険適用となり、心臓移植手術費104万1000円、心臓採取術費49万3000円、脳死臓器提供管理料14万2000円と決まった。自己負担分は患者の身体障害等級や収入で変わるが、多くの場合、発生しないという。また、心臓摘出を行う医療チームの交通費と臓器搬送費(チャーター機で100−400万円)は療養費払いで、自己負担分は約3割になるという。

 だが、移植を待てることができればの話だ。
 国内で心臓移植を受けた人の待機期間は、医学的緊急度の高い「status 1」で平均741日だった。米国の「status 1」患者の平均が49−76日なのと比べ、格段の差がある。
 1997年の臓器移植法施行後、国内で心臓移植手術を受けたのは10年間で49人だが、米国では2005年に2125人が移植を受けている。

■移植医療は日本の医療の試金石
 担当医である東京女子医科大学東医療センター内科の布田伸一医師は、洋輝さんの現在の病状を「極めて重症。ほかの臓器にも影響を及ぼしている。一日も早く移植が必要な状態」と説明する。

 布田医師は「あす死ぬかもしれない人を2年以上待たせることは、明らかにおかしい」と語る。
 移植医療では重症患者の集中治療を行う力量が問われ、迅速な搬送の仕組みも整える必要があるため、「日本の医療の試金石で、今後の方向性を示す良いモデル」と指摘する一方、「救急車をタクシー代わりにしているようでは、移植医療が進むのか疑問だ」という。

 「日本の医療は重症患者を診る点では一定の水準にあると思うが、それも大都市に限られている。高度先進医療を根付かせていくならば、移植医療は普通に行われていて当然。併せて遠隔地もカバーできる仕組みも整えていくべきだ」と訴えている。

 「洋輝さんを救う会」では募金を呼び掛けている。振込先は、ゆうちょ銀行 記号10320、番号52775961。口座名は「ヒロキサンヲスクウカイ」。問い合わせは、事務局048(981)9311、Eメールmain@fight-hiroki.jp
詳しくはホームページ


更新:2008/09/05 16:29   キャリアブレイン


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