北京パラリンピックが六日に開幕する。競技色を強めた「五輪化」などが進む変革期の大会だ。ハンディを越えて志を貫く者たちの躍動を、障害者スポーツ全体の発展、充実へとつなげたい。
北京パラリンピックは六日から十七日まで、十二日間にわたって五輪と同じ施設で行われる。百四十を超える国と地域から約四千人の障害者アスリートが参加の予定で、参加国・地域数は史上最多の見通しだ。日本からは百六十二人の選手が出場する。
今回は新たにボートが加わり、競技数は二十となった。陸上、水泳などから、ボッチャ、ゴールボールといった障害者スポーツ独自の競技まで、その内容は幅広く、多彩だ。競技場はオリンピックと同様の熱気に包まれるだろう。
夏季大会はこれで十三回目となるが、近年は回を重ねるごとに規模や注目度が増している。ことに目立つのが、五輪と同様に競技性を向上させ、メダルの価値も高めていくという方向だ。そこで、障害の種類や程度によって細分化されているクラスを統合してメダル数を減らす傾向にもある。
これは、障害者スポーツ全体で本格的な競技を志向する流れが強まったのを反映してのことだ。スポンサーを得て練習に専念する選手、プロを目指す選手も増えてきている。競技者としての彼らの意識は健常者アスリートと同じように高く、先駆者、けん引車としての役割も果たしている。
ただ、全体としてみれば、壁が高いのは変わらないようだ。大半の選手は費用の工面や仕事との兼ね合い、練習場所の不足などに悩み、苦労を重ねつつ競技を続けている。もともと健康に不安を抱えている場合も多い。競技団体の整備も進んでいない。
パラリンピックが華やかに開かれ、健常者に劣らない競技の熱気に喝采(かっさい)が送られるのを機に、ぜひとも多くの目を障害者スポーツの現状へと向けたいものだ。
そうして、全体のすそ野を広げるとともに、スポーツを志す者たちの負担をできる限り軽くする歩みを進めていきたい。誰でもスポーツを楽しめて、競技者を目指す意欲も生かせる環境が徐々に整っていけば、それは障害者の社会進出そのものも加速していくだろう。
そのためにも、北京に集まったアスリートには大いに力を尽くしてほしい。世界中の選手たちが新たな可能性を示すたびに、障害者スポーツの未来も広がっていく。
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