来年2月から始まる新しいテレビ国際放送を担うNHKの新会社に米マイクロソフトなど民間から13社が出資することが決まった。新しい国際放送は24時間、英語で情報を世界に発信する。欧米諸国や中国、韓国なども国際放送に力を入れており、新会社には日本の姿を正しく伝えていく役割を期待したい。
新会社の日本国際放送はNHKが今年4月に全額出資で設立。現在の資本金は2億円で、これに加え13社とNHKの子会社2社に1億9000万円の第三者割当増資を行う。出資企業には日本テレビ放送網やフジテレビジョンなど民放4社、伊藤忠商事など商社や金融機関も加わる。
国際放送の強化は小泉政権時代に日本の情報発信力が諸外国に比べ弱いという認識から議論が始まった。フランスや中国などは国営放送として国際放送を行っている。日本では国際放送が政府の政治的宣伝に使われるのは望ましくないとして、4月の放送法改正により、民間出資を仰ぐ形で会社をつくることになった。
新体制による国際放送は番組編成や報道は従来通り、NHKが行う。内容を在外邦人向けと外国人向けとで分け、外国人向け番組の一部制作や送信業務をNHKが新会社に委託する。さらに新会社が自主制作する番組もその中に加えていく。
問題は国民の受信料で成り立つ公共放送と民間放送とのバランスをどうとるかだ。新会社は自主制作する番組については広告を入れられるが、NHKの番組には広告は入れられない。またNHKが制作する国際放送番組には従来通り国費が投入されるが、新会社の運営や収支とはきちっと切り分ける必要がある。
さらに新会社への政府の関与は排除すべきだ。法改正で名称が「命令放送」から「要請放送」に変わり、国際放送には人命救助の必要など緊急時に限って政府が内容を要請できると定めている。だが、その場合もNHKが作る番組への要請に限り、新会社は制約を受けてはならない。
新しい国際放送は電波やCATVによる放送に加え、インターネットを使った映像配信も導入する。マイクロソフトやNTTコミュニケーションズが加わるのはこのためで、ネット配信でも遅延が起きない配信技術を開発する。高額な放送設備を使わず、多くの人に情報を伝達できるようにした点は評価できよう。
CATVやネットなど情報技術の発達は世界の情報格差を解消したが、日本の存在感は薄れてきている。新しい国際放送が等身大の日本を海外へ伝えてくれることを望む。