三菱商事は豚肉輸入の差額関税制度に違反して関税約42億円を免れたと東京税関から指摘され、加算税を含め納付するよう行政処分を受けた。同社は「処分に応じるか否かを含め検討中」というが、不正があったなら当然、問題である。
しかし養豚農家を保護するための豚肉の差額関税は妥当な制度だろうか。食料品が高騰していることもあり見直してもよいのではないか。
差額関税制度は、部分肉で1キログラム約64―524円の肉を輸入する場合には、基準輸入価格(同546円)との差額を関税として徴収する。輸入価格が同64円以下なら、肉の値段にかかわらず1キロ482円の関税をかける。
この制度により、例えば1キロ70円の肉を輸入しても、同520円のものでも、関税込みの仕入れ価格は約546円で同じになる。値段の安い外国産豚肉が大量に入るのを防ぐ狙いである。
1971年の豚肉輸入自由化に際して差額関税を始めた。ウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)を受けて基準価格を引き下げたが、2000年以降は今の水準である。
東京税関は三菱商事が輸入会社を通じ輸入した「1キロ約520円」の豚肉は、実際にはそれより安く、関税納付額が不十分と認定した。
同社に不正があったなら指弾されるべきだが、差額関税には再考の余地もあろう。農林水産省は「ロースやヒレなど上質の部位はともかく、ウデ肉、モモ肉など低価格の部位は国内産と外国産で品質に差がないので農家の保護が必要」という。
だが国内産は品種改良で質が改善し、今ほどの保護がなくても外国産と競争できるとみる向きもある。外国産はハムなどの加工用が多く、国内産は家庭で調理して食べるものが多いなど、おおまかながら用途が分かれているとの指摘もある。
そうであれば重い関税を課さなくても、国内産が極めて不利になる心配は薄いのではないか。関税による保護が続くと、農家の生産性向上意欲をそぐという問題も生じる。
食料品価格の値上がり続く昨今、消費者への配慮は重要である。輸入豚肉への重い関税制度を政治家、行政府は考え直すときではないか。